化学 / 電気化学
ファラデーの法則
要点整理
電気量とファラデー定数
電気分解でどれだけの物質が析出・発生するかを計算するには、まず「どれだけの電子が流れたか」を求める必要があります。そのための橋渡しをするのが、電気量とファラデー定数です。
電気量は、電流が運んだ電荷の総量のことで、記号 $Q$、単位はC(クーロン)です。電流の大きさを $I$[A]、流した時間を $t$[s]とすると、
$Q = It$
で計算できます(1Aの電流を1秒間流したときに運ばれる電気量が1Cです)。
一方、電子1個がもつ電気量の大きさ(電気素量)はきわめて小さい値ですが、電子がアボガドロ定数個、つまり1mol集まると、ある決まった大きさの電気量になります。この、電子1molがもつ電気量の大きさをファラデー定数といい、記号 $F$ で表します。
$F = 9.65\times 10^{4}\ \mathrm{C/mol}\quad(=96500\ \mathrm{C/mol})$
(ファラデー定数がこの値になる理由—電気素量とアボガドロ定数から計算できること—については、証明のページ「ファラデーの法則と電気分解の量的関係の導出」で詳しく確認します。)
電子の物質量を求める
電気量 $Q=It$ が、電子何mol分の電気量に相当するかは、$Q$ をファラデー定数 $F$ で割ることで求められます。
$n_e = \frac{Q}{F} = \frac{It}{F}$
析出・発生する物質の物質量を求める
電極での反応式(半反応式)を見ると、物質1molが変化するのに何molの電子が必要か(電子の係数)がわかります。たとえば、
$\ce{Cu^2+ + 2e- -> Cu}$
では、$\ce{Cu}$ が1mol析出するのに、電子が2mol必要です。この「物質1molあたりに必要な電子の数」を $z$ とすると、流れた電子の物質量 $n_e$ に対して、実際に変化する物質の物質量 $n$ は、
$n = \frac{n_e}{z} = \frac{It}{zF}$
で求められます。
計算の手順まとめ
- $Q=It$ で、流れた電気量を求める。
- $n_e=\dfrac{Q}{F}$ で、流れた電子の物質量を求める。
- 電極反応式を見て、対象の物質1molあたりに必要な電子の数 $z$ を確認する。
- $n=\dfrac{n_e}{z}$ で、目的の物質の物質量を求める。
- 必要に応じて、物質量にモル質量や気体のモル体積($22.4\ \mathrm{L/mol}$、標準状態)をかけて、質量や体積に変換する。
直列につないだ電気分解槽
複数の電気分解槽を導線で直列につなぐと、回路の中を流れる電流(と時間)はどの電気分解槽でも共通なので、それぞれの槽を流れる電気量、つまり流れる電子の物質量は、すべての槽で等しくなります。析出する物質の種類によって $z$(電子の係数)が異なる場合、析出する物質量はその分だけ異なることになります。
例題
例題1(基本)
問題
硝酸銀 $\ce{AgNO3}$ 水溶液を、$1.00\ \mathrm{A}$ の電流で $9650\ \mathrm{s}$ 間電気分解した。陰極に析出する銀 $\ce{Ag}$ は何gか。ファラデー定数 $F=9.65\times10^4\ \mathrm{C/mol}$、$\ce{Ag}$ の原子量を $108$ とする。
解答・解説を見る
まず、流れた電気量を求めます。
$Q = It = 1.00\times 9650 = 9650\ \mathrm{C}$
これをファラデー定数で割って、流れた電子の物質量を求めます。
$n_e = \frac{Q}{F} = \frac{9650}{9.65\times 10^4} = 0.100\ \mathrm{mol}$
陰極の反応は $\ce{Ag+ + e- -> Ag}$ であり、$\ce{Ag}$ 1molあたり電子1mol($z=1$)が必要なので、析出する $\ce{Ag}$ の物質量は電子の物質量と等しくなります。
$n(\ce{Ag}) = \frac{n_e}{1} = 0.100\ \mathrm{mol}$
質量に直すと、
$0.100\times 108 = 10.8\ \mathrm{g}$
答え:$10.8\ \mathrm{g}$
例題2(標準)
問題
硫酸銅(II) $\ce{CuSO4}$ 水溶液を白金電極で電気分解して、陰極に $3.20\ \mathrm{g}$ の銅 $\ce{Cu}$ を析出させたい。$2.00\ \mathrm{A}$ の電流を流すとき、何秒間電気分解を行えばよいか。ファラデー定数 $F=9.65\times10^4\ \mathrm{C/mol}$、$\ce{Cu}$ の原子量を $64$ とする。
解答・解説を見る
まず、析出させたい銅の物質量を求めます。
$n(\ce{Cu}) = \frac{3.20}{64} = 0.0500\ \mathrm{mol}$
陰極の反応は $\ce{Cu^2+ + 2e- -> Cu}$ であり、$\ce{Cu}$ 1molあたり電子2mol($z=2$)が必要なので、必要な電子の物質量は、
$n_e = 2\times 0.0500 = 0.100\ \mathrm{mol}$
これに対応する電気量は、
$Q = n_e F = 0.100\times 9.65\times 10^4 = 9650\ \mathrm{C}$
$Q=It$ を $t$ について解くと $t=\dfrac{Q}{I}$ なので、
$t = \frac{9650}{2.00} = 4825\ \mathrm{s}$
答え:$4825\ \mathrm{s}$(約80.4分)
例題3(応用)
問題
硝酸銀 $\ce{AgNO3}$ 水溶液の入った電気分解槽Aと、硫酸銅(II) $\ce{CuSO4}$ 水溶液の入った電気分解槽Bを直列につなぎ、同じ時間だけ電流を流した。槽Aの陰極に銀 $\ce{Ag}$ が $5.40\ \mathrm{g}$ 析出したとき、槽Bの陰極に析出する銅 $\ce{Cu}$ は何gか。$\ce{Ag}$ の原子量を $108$、$\ce{Cu}$ の原子量を $64$ とする。
解答・解説を見る
槽Aで流れた電子の物質量
$\ce{Ag+ + e- -> Ag}$ より $z=1$ なので、析出した $\ce{Ag}$ の物質量がそのまま電子の物質量になります。
$n(\ce{Ag}) = \frac{5.40}{108} = 0.0500\ \mathrm{mol} = n_e$
直列回路のポイント
槽Aと槽Bは直列につながれているため、同じ時間に流れる電気量(=電子の物質量)は、どちらの槽でも等しくなります。したがって、槽Bにも $n_e=0.0500\ \mathrm{mol}$ の電子が流れています。
槽Bで析出する銅の物質量
$\ce{Cu^2+ + 2e- -> Cu}$ より $z=2$ なので、
$n(\ce{Cu}) = \frac{n_e}{2} = \frac{0.0500}{2} = 0.0250\ \mathrm{mol}$
質量に直すと、
$0.0250\times 64 = 1.60\ \mathrm{g}$
答え:$1.60\ \mathrm{g}$
練習問題
問題
希硫酸を白金電極で電気分解したところ、陰極から水素 $\ce{H2}$ が発生した。$0.0200\ \mathrm{mol}$ の電子が流れたとき、発生する $\ce{H2}$ の標準状態(0℃、1atm)での体積は何mLか。気体のモル体積を $22400\ \mathrm{mL/mol}$ とする。
答え
陰極の反応 $\ce{2H+ + 2e- -> H2}$ より $z=2$ なので、$n(\ce{H2})=0.0200/2=0.0100\ \mathrm{mol}$。体積は $0.0100\times 22400=224\ \mathrm{mL}$。