無機化学 / 典型金属元素
アルカリ金属
要点整理
アルカリ金属の反応性
リチウム Li、ナトリウム Na、カリウム K などのアルカリ金属は、いずれも最外殻電子を1個だけ持っています。化学基礎で学んだイオン化エネルギーの周期的傾向を思い出すと、同族元素では原子番号が大きいほど原子半径が大きくなり、最外殻電子と原子核の間の距離が離れるため、イオン化エネルギーは小さくなります。つまり、電子を1個放出して陽イオンになりやすさは
$\mathrm{Li < Na < K}$
の順に強くなります。この傾向は、化学基礎の金属のイオン化傾向の学習内容とも一致しており、アルカリ金属はすべて反応性の非常に高い金属です。そのため空気中の酸素や水分と反応してしまうのを防ぐため、単体は石油(灯油)の中に保存します。
水との反応
アルカリ金属の単体を水に入れると、いずれも水と激しく反応して水酸化物と水素を生じます。
$\ce{2Li + 2H2O -> 2LiOH + H2 ^}$
$\ce{2Na + 2H2O -> 2NaOH + H2 ^}$
$\ce{2K + 2H2O -> 2KOH + H2 ^}$
これらはいずれも、金属の酸化数が $0 \to +1$(酸化)、水分子中の水素の酸化数が $+1 \to 0$(還元)へと変化する酸化還元反応です。反応の激しさは $\mathrm{Li < Na < K}$ の順に増していき、カリウムでは反応の際に発生した水素が反応熱で発火することもあります。これは先ほど確認したイオン化エネルギーの傾向(電子を放出しやすいほど反応性が高い)とちょうど対応しています。
炎色反応
アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物を炎の中に入れると、元素ごとに特有の色の光を発します。これは、炎の熱エネルギーによって原子内の電子が一時的に高いエネルギー準位に上がり(励起)、もとの安定な準位に戻るときに、そのエネルギー差に対応する特定の波長の光を放出するために起こります。金属の種類によって電子配置が異なるため、放出される光の波長(=色)も元素ごとに決まっています。
| 元素 | 炎色 |
|---|---|
| Li(リチウム) | 赤色 |
| Na(ナトリウム) | 黄色 |
| K(カリウム) | 赤紫色 |
| Ca(カルシウム) | 橙赤色 |
| Sr(ストロンチウム) | 紅色(深赤色) |
| Ba(バリウム) | 黄緑色 |
| Cu(銅) | 青緑色 |
炎色反応は、花火の色付けや、未知の水溶液に含まれる金属イオンを推定する定性分析にも利用されます。
水酸化ナトリウムの性質
水酸化ナトリウムは代表的な強塩基で、白色の固体です。空気中の水分を吸収して自然に溶けてしまう潮解性があり、さらに空気中の二酸化炭素も吸収して炭酸ナトリウムに変化してしまいます。
$\ce{2NaOH + CO2 -> Na2CO3 + H2O}$
この反応があるため、水酸化ナトリウムの固体は密閉した容器に保存する必要があり、二酸化炭素の乾燥剤としては使えません(酸性の気体である二酸化炭素と反応してしまうため)。
炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウム
炭酸ナトリウム $\mathrm{Na_2CO_3}$ はガラスや洗剤の原料になる工業的に重要な物質です。その水溶液は加水分解によって塩基性を示します。
炭酸水素ナトリウム $\mathrm{NaHCO_3}$(重曹)は、加熱すると分解して炭酸ナトリウムに変化します。
$\ce{2NaHCO3 -> Na2CO3 + H2O + CO2 ^}$
この性質は、ベーキングパウダー(発泡剤)として重曹が使われる理由にもなっています。
アンモニアソーダ法(ソルベー法)による炭酸ナトリウムの製法
炭酸ナトリウムは、塩化ナトリウム(海水)と石灰石を原料として、アンモニアソーダ法によって工業的に製造されます。全体としては次の反応の組み合わせで進みます。
- 濃い塩化ナトリウム水溶液にアンモニアと二酸化炭素を通じると、溶解度の小さい炭酸水素ナトリウムが沈殿する。
$\ce{NaCl + NH3 + CO2 + H2O -> NaHCO3 v + NH4Cl}$
- 得られた炭酸水素ナトリウムを加熱して、目的の炭酸ナトリウムを得る(発生した二酸化炭素は工程1に戻して再利用する)。
$\ce{2NaHCO3 -> Na2CO3 + H2O + CO2 ^}$
- 一方で石灰石を強熱して酸化カルシウムと二酸化炭素を得て、二酸化炭素は工程1で再利用する。
$\ce{CaCO3 -> CaO + CO2 ^}$
- 酸化カルシウムに水を加えて水酸化カルシウムとし、工程1の副生成物である塩化アンモニウムと反応させることで、消費されたアンモニアを回収し再利用する。
$\ce{CaO + H2O -> Ca(OH)2}$
$\ce{Ca(OH)2 + 2NH4Cl -> CaCl2 + 2NH3 ^ + 2H2O}$
これらをまとめると、実質的な原料と生成物の関係は次のようになります。
$\ce{2NaCl + CaCO3 -> Na2CO3 + CaCl2}$
この一連の反応には酸化数の変化がなく、酸化還元反応ではありません。むしろ、弱酸である炭酸の塩の溶解度の違いと、弱塩基であるアンモニアの遊離・回収を組み合わせた、酸・塩基と溶解度平衡の考え方に基づく巧みな分離操作であるといえます。アンモニアが工程1で使われ工程4で回収されて再利用される、循環構造になっている点が この製法の工業的な効率のよさの理由です。
例題
例題1(基本)
問題
ナトリウムを水に入れると、気体を発生しながら激しく反応した。(1) 化学反応式を書け。(2) ナトリウムと水素それぞれの酸化数の変化を答えよ。
解答・解説を見る
(1)
$\ce{2Na + 2H2O -> 2NaOH + H2}$
(2)
ナトリウムの酸化数は $0 \to +1$(酸化)、水分子中の水素の酸化数は $+1 \to 0$(還元)に変化する。
答え:(1) 2Na + 2H2O → 2NaOH + H2 (2) Naは0→+1(酸化)、Hは+1→0(還元)
例題2(標準)
問題
リチウム、ナトリウム、カリウムを比べたとき、水との反応の激しさはどのような順序になるか。また、その理由をイオン化エネルギーの周期的傾向から説明せよ。
解答・解説を見る
反応の激しさは $\mathrm{Li < Na < K}$ の順になる。同族元素では原子番号が大きいほど原子半径が大きくなり、最外殻電子が原子核から受ける引力が弱まるため、イオン化エネルギーは小さくなる。イオン化エネルギーが小さいほど電子を放出して陽イオンになりやすく反応性が高いため、原子番号の大きいカリウムが最も激しく水と反応する。
答え:Li<Na<Kの順に激しくなる。原子番号が大きいほど原子半径が大きくイオン化エネルギーが小さくなり、電子を放出しやすく反応性が高くなるため。
例題3(応用)
問題
アンモニアソーダ法において、工程の途中で発生するアンモニアが最終的に系内で再利用される仕組みを、関係する反応式を用いて説明せよ。
解答・解説を見る
工程1で、塩化ナトリウム水溶液にアンモニアと二酸化炭素を通じて炭酸水素ナトリウムを沈殿させる際、$\ce{NaCl + NH3 + CO2 + H2O -> NaHCO3 + NH4Cl}$ の反応でアンモニアは塩化アンモニウムの形に変わって消費される。しかし、副生成物である石灰石由来の酸化カルシウムを水と反応させて得た水酸化カルシウムを、この塩化アンモニウムに作用させることで、$\ce{Ca(OH)2 + 2NH4Cl -> CaCl2 + 2NH3 + 2H2O}$ のようにアンモニアが再び気体として回収され、工程1に戻して再利用することができる。
答え:Ca(OH)2 + 2NH4Cl → CaCl2 + 2NH3 + 2H2O の反応でアンモニアが回収され、工程1(NaCl+NH3+CO2+H2O→NaHCO3+NH4Cl)に再投入されて循環利用される。
練習問題
問題
次の(1)〜(3)に答えよ。
(1) ナトリウムの単体を石油(灯油)中に保存する理由を述べよ。
(2) 水酸化ナトリウムの固体を長期間空気中に放置すると、白色の粉末状の物質に覆われることがある。この変化を化学反応式で示せ。
(3) 炭酸水素ナトリウムを加熱したときに起こる反応を化学反応式で示せ。
答え
(1) ナトリウムは反応性が非常に高く、空気中の酸素や水分と反応してしまうのを防ぐため。
(2) $\ce{2NaOH + CO2 -> Na2CO3 + H2O}$
(3) $\ce{2NaHCO3 -> Na2CO3 + H2O + CO2}$