有機化学 / 芳香族化合物
章末問題
章末問題
問題1
問題
ベンゼンに濃硝酸と濃硫酸の混合物(混酸)を作用させると、置換反応によってニトロベンゼンが生成する。この反応の反応式を書き、濃硫酸がどのような役割を果たしているかを説明せよ。
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ベンゼン環の水素原子1個がニトロ基に置き換わる置換反応(ニトロ化)が起こる。
$\ce{C6H6 + HNO3 ->[\text{濃硫酸}] C6H5NO2 + H2O}$
濃硫酸は、濃硝酸からニトロニウムイオン($\ce{NO2+}$)を生じさせる触媒(脱水剤)としてはたらき、ベンゼン環への置換反応を進みやすくしている。
答え:$\ce{C6H6 + HNO3 -> C6H5NO2 + H2O}$(濃硫酸を触媒として使用)。濃硫酸はニトロ化を進みやすくする触媒(脱水剤)としてはたらく。
問題2
問題
ベンゼン環が付加反応よりも置換反応を起こしやすい理由を、共鳴による安定化という観点から60字程度で説明せよ。
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ベンゼン環は、$\pi$ 電子が環全体に非局在化することで共鳴による安定化を受けている。付加反応が起こると、この非局在化した電子配置が崩れて安定化が失われるため、エネルギー的に起こりにくい。一方、置換反応では反応後も非局在化した電子配置(芳香族性)が保たれるため、こちらのほうが起こりやすい。
答え:ベンゼン環は共鳴による非局在化で安定化されており、付加反応は安定化を壊すため起こりにくく、置換反応は安定化を保てるため起こりやすいから。
問題3
問題
フェノールと酢酸のそれぞれに炭酸水素ナトリウム水溶液を加えたとき、気体が発生するのはどちらか。理由とともに答えよ。
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炭酸水素ナトリウムと反応して二酸化炭素を発生するのは、炭酸よりも強い酸の場合だけである。酢酸はカルボン酸であり炭酸より強い酸なので、炭酸水素ナトリウムと反応して二酸化炭素を発生する。
$\ce{CH3COOH + NaHCO3 -> CH3COONa + H2O + CO2 ^}$
フェノールは炭酸よりも弱い酸であるため、炭酸水素ナトリウムとは反応せず、気体は発生しない。
答え:酢酸で気体(二酸化炭素)が発生する。酢酸は炭酸より強い酸だが、フェノールは炭酸より弱い酸のため反応しない。
問題4
問題
無色の水溶液A、B、Cがあり、それぞれフェノール、サリチル酸、安息香酸のいずれかである。塩化鉄(III)水溶液を加えたところ、AとBは呈色し、Cは呈色しなかった。この結果からわかることを述べ、A、B、Cを特定するにはさらにどのような実験が必要かを答えよ。
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塩化鉄(III)水溶液による呈色は、フェノール性ヒドロキシ基の有無を示す。フェノールとサリチル酸はどちらもフェノール性ヒドロキシ基をもつため呈色するが、安息香酸はフェノール性ヒドロキシ基をもたないため呈色しない。したがって、呈色しなかったCが安息香酸であるとわかる。
AとBがフェノールかサリチル酸かを区別するには、炭酸水素ナトリウム水溶液を加える実験を追加すればよい。サリチル酸はカルボキシ基をもち炭酸より強い酸なので気体(二酸化炭素)を発生するが、フェノールは炭酸より弱い酸なので反応しない。
答え:Cは安息香酸(フェノール性ヒドロキシ基をもたないため呈色しない)。AとBの区別には炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、気体が発生する方をサリチル酸、発生しない方をフェノールと判定する。
問題5
問題
トルエンを過マンガン酸カリウムで酸化すると安息香酸が得られる。この反応で、ベンゼン環ではなく側鎖のメチル基が酸化される理由を述べよ。
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ベンゼン環は、$\pi$ 電子が非局在化した共鳴構造によって安定化されており、強い酸化剤に対しても壊れにくい。一方、側鎖のメチル基には、そのような共鳴による安定化がはたらかないため、酸化剤の影響を受けやすい。そのため、酸化はベンゼン環ではなく側鎖に対して起こる。
答え:ベンゼン環は共鳴により安定化され酸化されにくいが、側鎖のメチル基にはそのような安定化がなく酸化されやすいため。
問題6
問題
サリチル酸に(a)無水酢酸、(b)少量の濃硫酸を触媒としたメタノール、をそれぞれ反応させて得られる生成物の名称を答え、それぞれの生成物が塩化鉄(III)水溶液で呈色するかどうかを答えよ。
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(a) 無水酢酸はヒドロキシ基をアセチル化するので、生成物はアセチルサリチル酸(アスピリン)である。ヒドロキシ基が反応してなくなっているため、呈色しない。
(b) 濃硫酸を触媒としたアルコールとの反応はカルボキシ基のエステル化なので、生成物はサリチル酸メチルである。ヒドロキシ基はそのまま残っているため、呈色する。
答え:(a) アセチルサリチル酸(アスピリン)、呈色しない。(b) サリチル酸メチル、呈色する。
問題7
問題
ニトロベンゼンをスズと塩酸で還元してアニリンを得た。この反応の反応式を書き、続いて遊離のアニリンを取り出すために行う操作とその反応式を書け。
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還元反応
$\ce{2C6H5NO2 + 3Sn + 14HCl -> 2C6H5NH3Cl + 3SnCl4 + 4H2O}$
還元後は強酸性の溶液中にあるため、アニリンはアニリン塩酸塩(塩化フェニルアンモニウム)の形で存在している。
アニリンの遊離
水酸化ナトリウムのような強塩基を加えると、弱塩基であるアニリンが遊離する。
$\ce{C6H5NH3Cl + NaOH -> C6H5NH2 + NaCl + H2O}$
答え:還元反応 $\ce{2C6H5NO2 + 3Sn + 14HCl -> 2C6H5NH3Cl + 3SnCl4 + 4H2O}$。遊離操作 $\ce{C6H5NH3Cl + NaOH -> C6H5NH2 + NaCl + H2O}$。
問題8
問題
安息香酸、アニリン、トルエンの3種類がジエチルエーテルに溶けた混合物がある。この3種類を1種類ずつ分離するための操作の順序を説明せよ。
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3種類の化合物は、塩基性(アニリン)、酸性(安息香酸)、中性(トルエン)にそれぞれ分類できる。
- 希塩酸を加える:塩基性のアニリンだけが反応してアニリン塩酸塩となり水層へ移る。安息香酸とトルエンはエーテル層に残る。
- 炭酸水素ナトリウム水溶液(または水酸化ナトリウム水溶液)を加える:酸性の安息香酸が反応して安息香酸ナトリウムとなり水層へ移る。中性のトルエンはエーテル層に残る。
- 分離した各水層に希塩酸(アニリン塩酸塩の水層には水酸化ナトリウム)を加えて、それぞれの化合物を遊離させて回収する。残ったエーテル層からはトルエンを回収する。
答え:希塩酸でアニリンを、炭酸水素ナトリウム水溶液(または水酸化ナトリウム水溶液)で安息香酸を、それぞれ塩に変えて水層へ移して分離し、最後にエーテル層に残ったトルエンを回収する。