有機化学 / 炭化水素

よくある間違い

間違い1: 分子式が同じなら同じ物質だと思い込む

よくある誤答例

分子式 $\ce{C4H10}$ の化合物は1種類しかないと思い込み、構造異性体の存在に気づかない。

なぜ間違いなのか

分子式は原子の種類と数を表すだけで、原子どうしのつながり方までは表していません。同じ分子式でも、炭素骨格の組み方が違えば、融点・沸点などの性質が異なる別の物質(構造異性体)になります。

正しい考え方

分子式を見たら、「この分子式で表される構造は本当に1通りしかないか」を常に疑う習慣をつけましょう。$\ce{C4H10}$ にはブタンと2-メチルプロパンの2種類の構造異性体が存在します。

間違い2: アルカンの一般式とシクロアルカンの一般式を混同する

よくある誤答例

シクロアルカンの一般式もアルカンと同じ $\mathrm{C_nH_{2n+2}}$ だと思い込んでしまう。

なぜ間違いなのか

シクロアルカンは、鎖式のアルカンに比べて環を作るために炭素原子どうしがもう1組結合しており、その分だけ水素原子が2個少なくなっています。アルカンの一般式をそのまま当てはめると、水素の数を2個多く数えてしまいます。

正しい考え方

アルカンは $\mathrm{C_nH_{2n+2}}$、シクロアルカンは $\mathrm{C_nH_{2n}}$ と、別の一般式であることをセットで覚えましょう。「環を1つ作ると水素が2個減る」という理屈で覚えると混同しにくくなります。

間違い3: アルカンの置換反応と、アルケンの付加反応を混同する

よくある誤答例

アルカンに塩素を反応させる実験と、アルケンに臭素水を加える実験を同じ「付加反応」として説明してしまう。

なぜ間違いなのか

アルカンは単結合しか持たないため、原子が新たに付け加わる余地(反応性の高いπ結合)がなく、代わりに水素原子が別の原子に置き換わる「置換反応」が起こります。アルケン・アルキンは二重結合・三重結合(π結合)を持つため、そこに原子が直接付け加わる「付加反応」が起こります。

正しい考え方

「単結合しかない(アルカン)→置換反応」「不飽和結合がある(アルケン・アルキン)→付加反応」と、構造と反応の種類をセットで整理しましょう。

間違い4: アルカンでも臭素水が脱色すると思い込む

よくある誤答例

臭素水にどんな炭化水素を加えても、色が消えると思い込んでしまう。

なぜ間違いなのか

臭素水の脱色(付加反応)が起こるのは、二重結合・三重結合を持つ不飽和炭化水素(アルケン・アルキン)だけです。アルカンには不飽和結合がないため、常温・暗所では臭素水と反応せず、色は消えません。

正しい考え方

臭素水の脱色は「不飽和結合の検出反応」であることを意識しましょう。脱色すれば不飽和(アルケン・アルキンなど)、脱色しなければ飽和(アルカンなど)と判断できます。

間違い5: シス・トランス異性体の判定条件を忘れる

よくある誤答例

二重結合を持つ化合物には、必ずシス形・トランス形の2種類が存在すると思い込んでしまう。

なぜ間違いなのか

シス・トランス異性体が存在するのは、二重結合をつくる両方の炭素原子に、それぞれ異なる2種類の原子(団)が結合している場合だけです。どちらか一方の炭素に同じ原子(団)が2つ結合していれば、シス・トランス異性体は存在しません。

正しい考え方

二重結合の両側の炭素それぞれについて、「結合している2つのものが異なるかどうか」を必ず確認しましょう。1-ブテン($\ce{CH2=CH-CH2-CH3}$)のように、一方の炭素に水素原子が2個ついている場合は、シス・トランス異性体は存在しません。

間違い6: 三重結合には水素が1molしか付加しないと思い込む

よくある誤答例

アセチレン $1\ \mathrm{mol}$ に水素を完全に付加させるとき、必要な水素も $1\ \mathrm{mol}$ だと考えてしまう。

なぜ間違いなのか

三重結合は、σ結合1本とπ結合2本からできています。二重結合(π結合1本)には1分子分の水素しか付加しませんが、三重結合には2分子分の水素が段階的に付加してようやくすべて単結合(アルカン)になります。

正しい考え方

「二重結合=π結合1本=試薬1分子分の付加」「三重結合=π結合2本=試薬2分子分の付加」と、π結合の本数と付加する試薬の物質量を対応させて覚えましょう。

間違い7: 構造異性体を数えるときに重複・見落としが起こる

よくある誤答例

アルカンの構造異性体を数え上げるとき、番号のつけ方を変えただけの同じ構造を、別の異性体として2回数えてしまう。あるいは、枝分かれのパターンを一部見落としてしまう。

なぜ間違いなのか

主鎖のどちらの端から番号をつけても同じ分子であり、また、描いた構造の「本当の主鎖」が、最初に想定した主鎖と違う(実はもっと長い鎖が主鎖になる)場合、それは新しい異性体ではなく、すでに数えた構造と同じものであることがあります。

正しい考え方

構造を1つ描くたびに、「この構造の中でもっとも長い炭素鎖はどこか」をあらためて数え直し、すでに描いた構造と同じものになっていないかを確認しましょう。特にヘキサン以上になると、慣れないうちは実際に構造式を紙に書き出して照合するのが確実です。

間違い8: 完全燃焼の反応式で、酸素原子の数を数え間違える

よくある誤答例

炭化水素の完全燃焼の反応式の係数を、炭素と水素の数だけ合わせて満足し、酸素原子の数を最後に確認しない。

なぜ間違いなのか

炭化水素 $\mathrm{C_xH_y}$ が完全燃焼すると、炭素はすべて $\ce{CO2}$ に、水素はすべて $\ce{H2O}$ になります。$\ce{CO2}$ の係数と $\ce{H2O}$ の係数をそれぞれ先に決めたあと、両辺の酸素原子の数を最後に必ず確認しないと、$\ce{O2}$ の係数(ときに分数)を書き間違えます。

正しい考え方

まず炭素原子の数から $\ce{CO2}$ の係数を、水素原子の数から $\ce{H2O}$ の係数を決め、最後に両辺の酸素原子の合計数をそろえるように $\ce{O2}$ の係数を決める、という順番を徹底しましょう。係数が分数になる場合は、反応式全体を整数倍して整えます。

間違い9: 命名で主鎖を最長の炭素鎖に選ばない

よくある誤答例

構造式の中に見えている「一直線に描かれた炭素の並び」をそのまま主鎖だと思い込み、実際にはもっと長くつながっている炭素鎖を見落として、間違った名前をつけてしまう。

なぜ間違いなのか

構造式の描き方(紙の上でどちらの方向に折れ曲がっているか)は、実際の分子の骨格の長さとは関係ありません。図の見た目にとらわれず、原子のつながりだけをたどって、もっとも長く連続した炭素鎖を探す必要があります。

正しい考え方

命名の前に、必ず構造式のすべての炭素をたどり、「両端からもっとも長くつながっている経路」を探しましょう。折れ曲がって描かれていても、つながっている炭素の数さえ数えれば、正しい主鎖が見つかります。