化学基礎 / 酸と塩基
中和反応
要点整理
中和反応とは
酸の水溶液と塩基の水溶液を混ぜると、酸から生じた $\ce{H+}$ と塩基から生じた $\ce{OH-}$ が結びついて水になります。
$\ce{H+ + OH- -> H2O}$
これが中和反応の本質です。同時に、酸の陰イオンと塩基の陽イオンが結びついて塩ができます。例えば塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和は、
$\ce{HCl + NaOH -> NaCl + H2O}$
と表され、$\ce{Cl-}$ と $\ce{Na+}$ が結びついた塩化ナトリウム $\ce{NaCl}$ が塩として生じます。
酸・塩基の価数
中和の量的関係を考えるには、酸・塩基それぞれの価数という考え方が必要です。
- 酸の価数:酸1分子が電離して放出できる $\ce{H+}$ の最大数
- 塩基の価数:塩基1分子が電離して放出できる $\ce{OH-}$ の最大数(または受け取れる $\ce{H+}$ の最大数)
| 酸 | 価数 | 塩基 | 価数 |
|---|---|---|---|
| $\ce{HCl}$ | 1価 | $\ce{NaOH}$ | 1価 |
| $\ce{HNO3}$ | 1価 | $\ce{KOH}$ | 1価 |
| $\ce{CH3COOH}$ | 1価 | $\ce{Ca(OH)2}$ | 2価 |
| $\ce{H2SO4}$ | 2価 | $\ce{Ba(OH)2}$ | 2価 |
| $\ce{H2CO3}$ | 2価 | $\ce{NH3}$ | 1価 |
| $\ce{H3PO4}$ | 3価 | $\ce{Al(OH)3}$ | 3価 |
注意したいのは酢酸 $\ce{CH3COOH}$ です。分子中には水素原子が4個ありますが、電離して $\ce{H+}$ として放出できるのはカルボキシ基(-COOH)の1個だけなので、酢酸は1価の酸です。価数は「分子中の水素原子の数」ではなく、「電離してイオンとして放出できる $\ce{H+}$ の数」で決まることに注意しましょう。また $\ce{NH3}$ は化学式に $\ce{OH}$ を持ちませんが、$\ce{H+}$ を1個受け取ることができるので1価の塩基として扱います。
中和の量的関係
酸と塩基が過不足なくちょうど反応するとき、酸が放出する $\ce{H+}$ の総量(物質量)と、塩基が受け取る(または放出する $\ce{OH-}$ の)総量は、必ず等しくなります。酸の物質量を $n_{酸}$、価数を $a$、塩基の物質量を $n_{塩基}$、価数を $b$ とすると、
$n_{酸}\times a = n_{塩基}\times b$
が成り立ちます。この関係は、酸・塩基が強酸・強塩基であっても、弱酸・弱塩基であっても、価数と物質量だけで決まるという点が重要です。弱酸・弱塩基は電離度が小さく、ある瞬間の $[\ce{H+}]$ は少ないですが、反応が進んで $\ce{H+}$ が消費されると、電離平衡が右に移動してさらに電離が進みます。最終的には、酸の分子に含まれる $\ce{H+}$ をすべて出し切るところまで反応が進むため、強弱によらずこの式が使えるのです。
濃度 $c\ \mathrm{mol/L}$、体積 $V\ \mathrm{L}$ の溶液に含まれる物質量は $n=cV$ なので、上の式は次のようにも書けます。
$c_1V_1a = c_2V_2b$
この形は、次の単元で学ぶ中和滴定の計算でそのまま使うことになります。
例題
例題1(基本)
問題
$0.20\ \mathrm{mol}$ の塩酸と過不足なく中和する水酸化カルシウム $\ce{Ca(OH)2}$ は何molか。
解答・解説を見る
塩酸 $\ce{HCl}$ は1価の酸、$\ce{Ca(OH)2}$ は2価の塩基です。$n_{酸}\times a = n_{塩基}\times b$ に、$n_{酸}=0.20$、$a=1$、$b=2$ を代入します。
$0.20\times1 = n_{塩基}\times2$
$n_{塩基} = \frac{0.20}{2} = 0.10\ \mathrm{mol}$
答え:$0.10\ \mathrm{mol}$
例題2(標準)
問題
$0.050\ \mathrm{mol/L}$ の硫酸水溶液 $20\ \mathrm{mL}$ を過不足なく中和するには、$0.10\ \mathrm{mol/L}$ の水酸化ナトリウム水溶液が何mL必要か。
解答・解説を見る
硫酸 $\ce{H2SO4}$ は2価の酸、水酸化ナトリウムは1価の塩基です。求める体積を $V\ \mathrm{mL}$ とすると、$c_1V_1a=c_2V_2b$ より、
$0.050\times20\times2 = 0.10\times V\times1$
左辺を計算すると、
$0.050\times20\times2 = 2.0$
したがって、
$0.10\times V = 2.0$
$V = \frac{2.0}{0.10} = 20\ \mathrm{mL}$
答え:$20\ \mathrm{mL}$
例題3(応用)
問題
$0.10\ \mathrm{mol/L}$ の塩酸 $10\ \mathrm{mL}$ と、$0.10\ \mathrm{mol/L}$ の酢酸 $5.0\ \mathrm{mL}$ を混合した水溶液がある。この混合水溶液をちょうど中和するのに必要な $0.20\ \mathrm{mol/L}$ の水酸化ナトリウム水溶液は何mLか。
解答・解説を見る
塩酸も酢酸も1価の酸です。強酸・弱酸によらず、中和に必要な塩基の量は「酸が出せる $\ce{H+}$ の総物質量」だけで決まるので、まずそれぞれの酸が出せる $\ce{H+}$ の物質量を求め、合計します。
$\ce{HCl}が出す\ce{H+} = 0.10\times\frac{10}{1000}\times1 = 1.0\times10^{-3}\ \mathrm{mol}$
$\ce{CH3COOH}が出す\ce{H+} = 0.10\times\frac{5.0}{1000}\times1 = 5.0\times10^{-4}\ \mathrm{mol}$
$\ce{H+}の総物質量 = 1.0\times10^{-3}+5.0\times10^{-4} = 1.5\times10^{-3}\ \mathrm{mol}$
この総物質量と、水酸化ナトリウムが受け取る $\ce{OH-}$(1価)の物質量が等しくなればよいので、必要な体積を $V\ \mathrm{mL}$ とすると、
$0.20\times\frac{V}{1000}\times1 = 1.5\times10^{-3}$
$V = \frac{1.5\times10^{-3}\times1000}{0.20} = \frac{1.5}{0.20} = 7.5\ \mathrm{mL}$
答え:$7.5\ \mathrm{mL}$
このように、2種類以上の酸(または塩基)が混ざっていても、強弱によらず価数と物質量の総和で中和の計算ができます。
練習問題
問題
$0.15\ \mathrm{mol}$ の水酸化ナトリウムと過不足なく中和するのに必要な硫酸は何molか。
答え
硫酸(2価)を $n\ \mathrm{mol}$ とすると $n\times2 = 0.15\times1$ より $n=0.075\ \mathrm{mol}$