無機化学 / 遷移元素

頻出解法パターン

パターン1: 色の変化から酸化数の変化を読み取る

こんな問題で使う

「溶液の色が○○色から△△色に変わった」という記述から、反応の内容や酸化数の変化を答えさせる問題。

解法の手順

  1. 変化前・変化後の色から、それぞれどのイオン・化合物かを特定する(Fe2+淡緑色⇔Fe3+黄褐色、CrO4^2−黄色⇔Cr2O7^2−赤橙色、MnO4−赤紫色⇒Mn2+ほぼ無色、など)。
  2. 特定した2つの化学種の間で、中心となる原子の酸化数を比較する。
  3. 酸化数が上がっていれば酸化、下がっていれば還元と判定する。
  4. 反応式を書き、電子の授受のつじつまが合っているか確認する。

具体例

「Fe2+水溶液(淡緑色)に酸化剤を加えたら黄褐色になった」と言われたら、まずFe3+ができたと判断し、Feの酸化数が+2→+3(酸化)と読み取ってから、反応式 $\ce{Fe^2+ -> Fe^3+ + e-}$ を組み立てる。

パターン2: 金属が酸に溶けるかどうかをイオン化傾向で判定する

こんな問題で使う

「この金属は塩酸に溶けるか」「銅・銀を溶かすにはどんな酸が必要か」といった、金属と酸の反応の可否を問う問題。

解法の手順

  1. 問題の金属のイオン化傾向を、水素と比較する。
  2. 水素よりイオン化傾向が大きい金属(Fe、Znなど)なら、希塩酸・希硫酸のような酸化力のない酸でも水素を発生して溶ける。
  3. 水素よりイオン化傾向が小さい金属(Cu、Agなど)なら、希塩酸・希硫酸には溶けない。溶かすには希硝酸・濃硝酸・熱濃硫酸のような酸化力のある酸が必要。
  4. 酸化力のある酸との反応では、水素ではなく、酸の陰イオンが還元されてできる別の気体(NO、NO2、SO2など)が発生することを確認する。

具体例

銅が希塩酸に溶けるかと問われたら、まずCuは水素よりイオン化傾向が小さいことを確認し、「希塩酸には溶けない。溶かすには希硝酸・濃硝酸・熱濃硫酸が必要」と判断する。

パターン3: 沈殿が過剰の試薬で溶けるかどうかを錯イオン形成で判定する

こんな問題で使う

「この水酸化物(または塩化物)の沈殿は、過剰のアンモニア水(または過剰のNaOH水溶液)に溶けるか」を問う問題。

解法の手順

  1. 沈殿をつくっている金属イオンが何かを確認する。
  2. その金属イオンが、加えた試薬の配位子(NH3ならアンミン、OH−ならヒドロキシド)と安定な錯イオンをつくれるかどうかを判断する(Cu2+・Ag+・Zn2+はNH3と、Al3+・Zn2+はOH−と安定な錯イオンをつくる。Fe3+はどちらともつくりにくい)。
  3. 錯イオンをつくれるなら「溶ける」、つくれないなら「沈殿のまま残る」と判定する。
  4. 溶ける場合は、錯イオン形成の反応式を書く。

具体例

Fe(OH)3とCu(OH)2の混合沈殿に過剰のアンモニア水を加えた場合、Cu(OH)2は$\ce{[Cu(NH3)4]^2+}$をつくって溶けるが、Fe(OH)3は安定なアンミン錯イオンをつくらないため沈殿のまま残る、と判断する。

パターン4: 酸化還元滴定の計算を電子の物質量でそろえる

こんな問題で使う

KMnO4やK2Cr2O7を使った酸化還元滴定で、未知の水溶液の濃度を求める計算問題。

解法の手順

  1. 酸化剤・還元剤それぞれの半反応式を書き、1molあたり何molの電子をやり取りするか確認する。
  2. 滴定に使った酸化剤(または還元剤)の物質量を、モル濃度×体積(L)で求める。
  3. 「酸化剤が受け取る電子の物質量」=「還元剤が失う電子の物質量」という関係式を立てる。
  4. 求めたい物質の物質量、さらにモル濃度を計算する。

具体例

0.0200 mol/LのKMnO4水溶液16.0 mLで、濃度不明の過酸化水素水20.0 mLをちょうど酸化できたとき、KMnO4は1molあたり電子5mol、H2O2は1molあたり電子2molをやり取りするので、$n(\ce{H2O2})\times 2 = n(\ce{KMnO4})\times 5$ の関係式から$n(\ce{H2O2})$を求め、濃度を計算する。

パターン5: クロム酸・二クロム酸の色の変化を平衡移動で説明する

こんな問題で使う

酸性・塩基性の条件を変えたときに、クロム酸イオンと二クロム酸イオンの色がどう変わるかを説明させる問題。

解法の手順

  1. 平衡式 $\ce{2CrO4^2- + 2H+ <=> Cr2O7^2- + H2O}$ を書く。
  2. 問題文の条件(酸性にする、塩基性にする)から、H+が増えるのか減るのかを判断する。
  3. ルシャトリエの原理を使い、H+が増えれば右へ、減れば左へ平衡が移動すると判定する。
  4. 移動先の化学種(クロム酸イオンか二クロム酸イオンか)とその色を答える。

具体例

「二クロム酸カリウム水溶液(赤橙色)に水酸化ナトリウム水溶液を加えるとどうなるか」と問われたら、OH−がH+を中和して減らすため平衡は左(クロム酸イオン側)に移動し、色は黄色に変わると説明する。

パターン6: 錯イオンの化学式から名称を、名称から化学式を組み立てる

こんな問題で使う

錯イオンの化学式を見て名称を答えさせる、あるいは名称から化学式を書かせる問題。

解法の手順

  1. 化学式から答える場合:かっこの中の配位子の種類と数(配位数)、中心金属とその酸化数、イオン全体の電荷を順番に読み取る。
  2. 名称から答える場合:数詞(モノ・ジ・トリ・テトラ…)から配位子の数を、配位子名(アンミン・アクア・シアニドなど)から配位子の種類を、金属名とローマ数字から中心金属とその酸化数を読み取り、化学式に組み立てる。
  3. 全体が陰イオンになる場合は、金属名のあとに「酸」が入ることを見落とさない。
  4. 組み立てた化学式・名称の電荷のつじつまが合っているか、最後に確認する。

具体例

「ヘキサシアニド鉄(II)酸イオン」という名称から、ヘキサ=6個のシアニド(CN−)が、酸化数+2の鉄(II)に配位していると読み取り、配位子の電荷$6\times(-1)=-6$と中心金属の$+2$を合計して、全体の電荷が$-4$の$\ce{[Fe(CN)6]^4-}$を組み立てる。