化学基礎 / 酸と塩基

中和滴定と計算

要点整理

中和滴定とは

中和滴定とは、濃度がわかっている酸(または塩基)の水溶液を使って、濃度がわからない塩基(または酸)の水溶液の濃度を求める実験操作です。濃度が正確にわかっている水溶液を標準溶液と呼びます。

使用する器具と操作

器具 役割
ホールピペット 濃度不明の溶液を、正確に一定体積だけはかり取る
コニカルビーカー(三角フラスコ) はかり取った溶液を入れ、指示薬を加えて滴定を行う容器
ビュレット 標準溶液を少しずつ滴下し、加えた体積を目盛りで正確に読み取る
メスフラスコ 決まった濃度の標準溶液を、正確に調製する

操作の手順は、①ホールピペットで濃度不明の溶液を正確にコニカルビーカーに移す、②指示薬を数滴加える、③ビュレットから標準溶液を少しずつ滴下し、指示薬の色が変化した瞬間(中和点)までの滴下量を読み取る、という流れになります。ビュレットの目盛りは、液面の中央がへこんだ部分(メニスカス)の底を、目の高さに合わせて読み取ります。

ここで器具の洗い方に関する重要な注意点があります。ホールピペットとビュレットは、これから入れる溶液そのもので共洗い(器具の内部を少量の溶液ですすぐこと)をしてから使う必要があります。器具が蒸留水でぬれたままだと、はかり取る溶液が薄まってしまい、正確な物質量をはかれなくなるからです。

一方、コニカルビーカー(反応容器)は、共洗いしてはいけません。蒸留水でぬれたまま使ってよいのです。なぜなら、ホールピペットで正確にはかり取った溶液に含まれる溶質の物質量は、あとから蒸留水を加えて薄めても変化しないからです。中和滴定で意味を持つのは「溶質の物質量」であって「濃度」そのものではないため、コニカルビーカーの中が多少薄まっていても、必要な標準溶液の体積(中和点までの滴下量)には影響しません。

指示薬の選び方

中和点(酸と塩基がちょうど反応し終わる点)のpHは、もとの酸・塩基の強弱によって変わります。指示薬は、その変色域(色が変化するpHの範囲)が中和点付近に含まれるものを選ぶ必要があります。

指示薬 変色域(pH) 色の変化
メチルオレンジ $3.1\sim4.4$ 酸性側で赤、塩基性側で黄
フェノールフタレイン $8.0\sim9.8$ 酸性・中性で無色、塩基性側で赤(桃色)
  • 強酸と強塩基の滴定(例:塩酸とNaOH):生成する塩(NaClなど)は中性なので、中和点はpH $\approx 7$ 付近。pHの変化が非常に急激なので、メチルオレンジ・フェノールフタレインのどちらでも判定できます。
  • 弱酸と強塩基の滴定(例:酢酸とNaOH):生成する塩(CH3COONaなど)は塩基性を示すので、中和点はpH $7$ より大きい側にずれます。塩基性側で変色するフェノールフタレインを使います。酸性側でしか変色しないメチルオレンジでは、中和点よりずっと手前で変色してしまい使えません。
  • 強酸と弱塩基の滴定(例:塩酸とアンモニア水):生成する塩(NH4Clなど)は酸性を示すので、中和点はpH $7$ より小さい側にずれます。酸性側で変色するメチルオレンジを使います。フェノールフタレインでは変色域に届かず使えません。

なお、弱酸と弱塩基の滴定は、中和点付近でのpHの変化がなだらかで急激な変化が起こらないため、指示薬による正確な判定には適していません。

滴定の計算

中和滴定の計算には、中和反応の量的関係の式をそのまま使います。酸の濃度 $c_1$、体積 $V_1$、価数 $a$、塩基の濃度 $c_2$、体積 $V_2$、価数 $b$ とすると、

$c_1V_1a = c_2V_2b$

このうち3つがわかれば、残り1つを求めることができます。

例題

例題1(基本)

問題

濃度不明の酢酸水溶液 $10.0\ \mathrm{mL}$ をホールピペットでコニカルビーカーに取り、$0.100\ \mathrm{mol/L}$ の水酸化ナトリウム水溶液で滴定したところ、$12.5\ \mathrm{mL}$ 加えたところで中和点に達した。この酢酸水溶液の濃度を求めよ。

解答・解説を見る

酢酸もNaOHも1価なので、$a=b=1$ です。求める濃度を $c\ \mathrm{mol/L}$ として、$c_1V_1a=c_2V_2b$ に代入します。

$c\times10.0\times1 = 0.100\times12.5\times1$

右辺を計算すると、

$0.100\times12.5 = 1.25$

したがって、

$c\times10.0 = 1.25$

$c = \frac{1.25}{10.0} = 0.125\ \mathrm{mol/L}$

答え:$0.125\ \mathrm{mol/L}$

例題2(標準)

問題

次の(1)、(2)の中和滴定で用いるべき指示薬を、フェノールフタレインとメチルオレンジから選び、理由を述べよ。

(1) 酢酸水溶液を、水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。

(2) アンモニア水を、塩酸で滴定する。

解答・解説を見る

(1)

酢酸(弱酸)と水酸化ナトリウム(強塩基)の中和で生じる塩は $\ce{CH3COONa}$ で、水溶液は塩基性を示します。したがって中和点のpHは7より大きく、塩基性側で変色するフェノールフタレインを使う必要があります。

(2)

アンモニア(弱塩基)と塩酸(強酸)の中和で生じる塩は $\ce{NH4Cl}$ で、水溶液は酸性を示します。したがって中和点のpHは7より小さく、酸性側で変色するメチルオレンジを使う必要があります。

答え:(1) フェノールフタレイン (2) メチルオレンジ

例題3(応用)

問題

$0.050\ \mathrm{mol/L}$ の硫酸水溶液 $20.0\ \mathrm{mL}$ を、$0.10\ \mathrm{mol/L}$ の水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定する。

(1) 中和に必要な水酸化ナトリウム水溶液の体積を求めよ。

(2) この滴定に適した指示薬を選び、理由を述べよ。

解答・解説を見る

(1)

硫酸は2価の酸($a=2$)、水酸化ナトリウムは1価の塩基($b=1$)です。求める体積を $V\ \mathrm{mL}$ として、$c_1V_1a=c_2V_2b$ に代入します。

$0.050\times20.0\times2 = 0.10\times V\times1$

左辺を計算すると、

$0.050\times20.0\times2 = 2.0$

したがって、

$0.10\times V = 2.0$

$V = \frac{2.0}{0.10} = 20.0\ \mathrm{mL}$

(2)

硫酸は強酸、水酸化ナトリウムは強塩基なので、生成する塩 $\ce{Na2SO4}$ は中性であり、中和点付近ではpHが急激に(酸性側から塩基性側まで一気に)変化します。この範囲にはメチルオレンジ・フェノールフタレインの変色域がどちらも含まれるため、どちらの指示薬を使っても正確に判定できます(通常はフェノールフタレインが使われることが多いです)。

答え:(1) $20.0\ \mathrm{mL}$ (2) フェノールフタレイン(メチルオレンジでも可)。強酸と強塩基の中和点付近ではpHが急激に変化し、両方の変色域を通過するため。

練習問題

問題

$0.20\ \mathrm{mol/L}$ の塩酸 $15.0\ \mathrm{mL}$ を中和するのに、水酸化バリウム $\ce{Ba(OH)2}$ 水溶液が $10.0\ \mathrm{mL}$ 必要だった。この水酸化バリウム水溶液の濃度を求めよ。

答え

$c\times10.0\times2 = 0.20\times15.0\times1$ より $c=\dfrac{3.0}{20.0}=0.15\ \mathrm{mol/L}$