化学基礎 / 物質の構成
分子と共有結合、電子式・構造式
要点整理
電子式の書き方
原子が共有結合をつくるときに使われるのは、最外殻の電子(価電子)です。元素記号のまわりに、価電子を点(・)で書き表した式を電子式といいます。
電子式を書くときは、元素記号の上下左右の4か所に、まず1個ずつ電子を配置し、価電子が5個以上になったら、すでに点がある場所に2個目を追加してペア(電子対)をつくっていきます。
| 原子 | 価電子数 | 電子式 |
|---|---|---|
| H | 1 | H に点1個 |
| C | 4 | Cのまわり4か所に点1個ずつ |
| N | 5 | Nのまわり4か所のうち1か所だけ点2個、残り3か所に点1個ずつ |
| O | 6 | Oのまわり4か所のうち2か所に点2個ずつ、残り2か所に点1個ずつ |
| F | 7 | Fのまわり4か所のうち3か所に点2個ずつ、残り1か所に点1個 |
| Ne | 8 | Neのまわり4か所すべてに点2個ずつ(閉殻) |
共有結合と電子式
2つの原子が、それぞれ対になっていない電子(不対電子)を1個ずつ出し合ってペアをつくると、そのペアの電子は両方の原子に共有されます。これを共有電子対と呼びます。共有結合は、この共有電子対によって2つの原子が結びついたものです。
たとえば水素分子 $\ce{H2}$ は、水素原子2個がそれぞれ持つ1個の電子を出し合って共有電子対をつくることで結合しています。塩化水素 $\ce{HCl}$ では、水素の電子1個と、塩素の対になっていない電子1個が共有電子対をつくります。
一方、原子の最外殻の電子対のうち、共有結合に使われず、その原子だけに残っている電子対を非共有電子対(または孤立電子対)と呼びます。たとえば水分子 $\ce{H2O}$ の酸素原子は、2組の共有電子対(それぞれの水素原子との結合)と、2組の非共有電子対を持っています。
構造式と結合の種類
電子式で共有電子対をいちいち点で書くのは煩雑なので、共有電子対1組を1本の線(価標)で置き換えて表した式を構造式といいます。
原子どうしが共有電子対を1組共有する結合を単結合、2組共有する結合を二重結合、3組共有する結合を三重結合といい、それぞれ構造式では線1本・2本・3本で表します。
| 分子 | 分子式 | 構造式 | 結合の種類 |
|---|---|---|---|
| 水素 | $\ce{H2}$ | H-H | 単結合 |
| 水 | $\ce{H2O}$ | H-O-H | 単結合×2 |
| アンモニア | $\ce{NH3}$ | Hが3つNに単結合 | 単結合×3 |
| 二酸化炭素 | $\ce{CO2}$ | O=C=O | 二重結合×2 |
| 窒素 | $\ce{N2}$ | N≡N | 三重結合 |
| メタン | $\ce{CH4}$ | Hが4つCに単結合 | 単結合×4 |
多くの分子では、それぞれの原子が持つ価標の数(結合の本数の合計)は決まっています。たとえば水素は1本、酸素は2本、窒素は3本、炭素は4本の価標を持つのが基本です。分子の構造式を考えるときは、それぞれの原子の価標の数がちょうど過不足なく満たされるように、原子を線でつないでいきます。
配位結合
共有結合は通常、2つの原子が電子を1個ずつ出し合ってできますが、一方の原子だけが非共有電子対をまるごと提供し、それをもう一方の原子(空の軌道を持つ原子やイオン)と共有してできる結合もあります。これを配位結合と呼びます。
配位結合の代表例が、アンモニア $\ce{NH3}$ と水素イオン $\ce{H+}$ からアンモニウムイオン $\ce{NH4+}$ ができる反応です。
$\ce{NH3 + H+ -> NH4+}$
アンモニア分子の窒素原子が持つ非共有電子対を、電子を持たない水素イオン $\ce{H+}$ に提供することで、新しいN-H結合ができます。重要なのは、いったんアンモニウムイオンができてしまうと、この配位結合による4本目のN-H結合と、もともとあった3本のN-H結合(ふつうの共有結合)を、あとから区別することはできない、という点です。4本のN-H結合はすべて同等になります。同様に、水分子 $\ce{H2O}$ と水素イオン $\ce{H+}$ からオキソニウムイオン $\ce{H3O+}$ ができる反応も配位結合の例です。
例題
例題1(基本)
問題
塩化水素 $\ce{HCl}$ の電子式を、共有電子対と非共有電子対の数がわかるように説明せよ。また、構造式を書け。
解答・解説を見る
水素原子Hは価電子を1個持ち、そのすべてが不対電子です。塩素原子Clは価電子を7個持ち、そのうち1個が不対電子、残り6個(3組)が非共有電子対です。
水素の不対電子1個と、塩素の不対電子1個が、共有電子対を1組つくることで結合します。したがって、$\ce{HCl}$ の電子式では、水素と塩素の間に共有電子対が1組、塩素のまわりに非共有電子対が3組存在します。
共有電子対が1組なので、構造式では線1本で結合を表します。
答え:H-Cl(単結合1本)。共有電子対1組、塩素上の非共有電子対3組。
例題2(標準)
問題
二酸化炭素 $\ce{CO2}$ の構造式を、炭素の価標が4本、酸素の価標が2本になるように書け。また、炭素原子と酸素原子の間の結合は、それぞれ単結合・二重結合・三重結合のどれか答えよ。
解答・解説を見る
二酸化炭素は、中心に炭素原子1個、その両側に酸素原子が1個ずつ結合した構造をしています。
炭素の価標は4本、酸素の価標は2本という条件を満たすように結合を決めます。もし炭素と酸素をそれぞれ単結合(線1本)でつなぐと、炭素側の価標は2本しか使われず(左右で合計2本)、条件の4本に届きません。また、酸素側もそれぞれ単結合1本だけでは、酸素の価標2本のうち1本しか使われず、電子式のつじつまが合いません。
そこで、炭素と左右それぞれの酸素原子を、二重結合(線2本)でつなぐと、炭素側の価標は左右合わせて $2+2=4$ 本となり、ちょうど条件を満たします。また、それぞれの酸素側も、価標2本をちょうど二重結合に使いきることになり、条件を満たします。
答え:構造式は O=C=O。炭素原子と酸素原子はいずれも二重結合で結ばれている。
例題3(応用)
問題
アンモニア $\ce{NH3}$ に塩化水素 $\ce{HCl}$ の気体を近づけると、白煙が生じて塩化アンモニウム $\ce{NH4Cl}$ の固体ができる。
$\ce{NH3 + HCl -> NH4Cl}$
この反応で、アンモニウムイオン $\ce{NH4+}$ ができる過程において、どのような結合が新たに生じるか、電子の由来に注目して説明せよ。また、できあがった $\ce{NH4+}$ に含まれる4本のN-H結合をあとから区別することができない理由を説明せよ。
解答・解説を見る
塩化水素は、水中や反応の過程で水素イオン $\ce{H+}$(電子を持たない陽子そのもの)を生じます。アンモニア分子の窒素原子は、非共有電子対を1組持っています。この非共有電子対を、電子を持たない $\ce{H+}$ に丸ごと提供して共有することで、新しいN-H結合ができます。これは、両方の原子が電子を1個ずつ出し合う通常の共有結合とは異なり、片方の原子(窒素)だけが電子対を提供する配位結合です。
いったんこの配位結合ができてアンモニウムイオン $\ce{NH4+}$ になると、新しくできた配位結合によるN-H結合と、もともとアンモニアに存在していた3本の(通常の共有結合による)N-H結合とは、電子の由来こそ異なりますが、結合ができたあとの構造・強さ・性質にはまったく違いがなく、4本とも完全に同等な結合になります。そのため、あとから見分けることはできません。
答え:窒素原子の非共有電子対が $\ce{H+}$ に提供されて配位結合ができ、$\ce{NH4+}$ が生成する。配位結合はできた後は通常の共有結合と全く同じ性質を持つため、もとの3本の共有結合による結合と区別できない。
練習問題
問題
窒素分子 $\ce{N2}$ について、構造式を書け。また、窒素原子1個が持つ非共有電子対の数を答えよ(窒素原子の価電子は5個で、価標は3本とする)。
答え
構造式:N≡N(三重結合)。非共有電子対の数:各窒素原子に1組ずつ。