無機化学 / 典型金属元素

亜鉛・スズ・鉛

要点整理

亜鉛も両性金属

亜鉛 $\mathrm{Zn}$ は、前の単元で学んだアルミニウムと同じく、酸にも強塩基にも溶けて水素を発生する両性金属です。

$\ce{Zn + 2HCl -> ZnCl2 + H2 ^}$

$\ce{Zn + 2NaOH + 2H2O -> Na2[Zn(OH)4] + H2 ^}$

2つ目の式で生じる $\mathrm{Na_2[Zn(OH)_4]}$ はテトラヒドロキシド亜鉛(II)酸ナトリウムと呼ばれる錯塩です。いずれの反応でも亜鉛の酸化数は $0 \to +2$ に酸化されており、酸・強塩基どちらと反応する場合も、亜鉛が電子を失って酸化されるという酸化還元の本質は変わりません。

酸化亜鉛(亜鉛華) $\mathrm{ZnO}$ と水酸化亜鉛 $\mathrm{Zn(OH)_2}$ も、それぞれ両性酸化物・両性水酸化物として同様の反応を示します。

$\ce{ZnO + 2HCl -> ZnCl2 + H2O}$

$\ce{ZnO + 2NaOH + H2O -> Na2[Zn(OH)4]}$

$\ce{Zn(OH)2 + 2HCl -> ZnCl2 + 2H2O}$

$\ce{Zn(OH)2 + 2NaOH -> Na2[Zn(OH)4]}$

また、水酸化亜鉛はアンモニア水を過剰に加えても、錯イオンを作って溶解します。

$\ce{Zn(OH)2 + 4NH3 -> [Zn(NH3)4](OH)2}$

「強塩基には $\mathrm{[Zn(OH)_4]^{2-}}$、アンモニア水には $\mathrm{[Zn(NH_3)_4]^{2+}}$」というように、水酸化亜鉛は加える試薬によって異なる種類の配位子を持つ錯イオンをつくって溶解する点が特徴です。酸化亜鉛は白色顔料や医薬品(亜鉛華軟膏)としても利用されています。

スズと鉛の代表的な化合物

スズ $\mathrm{Sn}$ と鉛 $\mathrm{Pb}$ は、周期表14族に属する金属です。いずれも重金属特有の代表的な沈殿・化合物を持ちます。

イオン・化合物 備考
$\mathrm{PbSO_4}$ 白色沈殿 水にも酸にも溶けにくい。鉛蓄電池の放電生成物でもある
$\mathrm{PbCrO_4}$ 黄色沈殿 クロム酸鉛。古くから黄色の顔料(黄鉛)に利用
$\mathrm{PbS}$ 黒色沈殿 硫化水素との反応で生じる
$\mathrm{PbI_2}$ 黄色沈殿 硝酸鉛(II)水溶液にヨウ化カリウム水溶液を加えると生じる、金色に輝く美しい沈殿として知られる

$\ce{Pb(NO3)2 + 2KI -> PbI2 v + 2KNO3}$

スズの化合物では、$\mathrm{Sn^{2+}}$(スズ(II)イオン)が電子を放出して $\mathrm{Sn^{4+}}$(スズ(IV)イオン)になりやすく、還元剤として利用されることがあります。

めっきによる鉄の防食:トタンとブリキ

鉄は湿った空気中で酸化されやすく(いわゆる「さび」)、これを防ぐために他の金属で表面をめっきする方法が広く使われています。代表的なのが、亜鉛めっき鋼板(トタン)とスズめっき鋼板(ブリキ)ですが、この2つは傷がついたときの振る舞いが正反対になります。

  • トタン(亜鉛めっき):亜鉛は鉄よりもイオン化傾向が大きい(酸化されやすい)金属です。めっきに傷がついて鉄が露出しても、鉄よりも先に亜鉛が酸化されるため、鉄はさびから守られ続けます。このように、より反応性の高い金属を「身代わり」にして内部の金属を守るしくみを犠牲防食と呼びます。

  • ブリキ(スズめっき):スズは鉄よりもイオン化傾向が小さい(酸化されにくい)金属です。めっきが傷ついていない間は鉄を空気や水から遮断してよく保護しますが、いったん傷がついて鉄が露出すると、逆に鉄の方が優先的に酸化されてしまい、さびの進行がかえって速くなります。

同じ「めっき」でも、めっきする金属が鉄よりイオン化傾向が大きいか小さいかによって、傷がついたときの結果が正反対になる点が、化学基礎で学んだイオン化傾向の理解を試す良い例になっています。

例題

例題1(基本)

問題

亜鉛に水酸化ナトリウム水溶液を加えると、気体を発生しながら溶解した。(1) この反応の化学反応式を書け。(2) 亜鉛の酸化数の変化を答えよ。

解答・解説を見る

(1)

$\ce{Zn + 2NaOH + 2H2O -> Na2[Zn(OH)4] + H2}$

(2)

亜鉛の酸化数は $0$ から $+2$ へと増加しており、酸化されている。

答え:(1) Zn + 2NaOH + 2H2O → Na2[Zn(OH)4] + H2 (2) 0→+2に酸化される。

例題2(標準)

問題

鉄板に亜鉛めっきを施したトタンと、スズめっきを施したブリキは、どちらもめっきに傷がついていない間は鉄を保護する。しかし、いったん傷がついて鉄が露出すると、その後の振る舞いは正反対になる。この違いを、亜鉛・スズと鉄のイオン化傾向の大小から説明せよ。

解答・解説を見る

亜鉛は鉄よりもイオン化傾向が大きいため、トタンでは傷がついて鉄が露出しても、鉄よりも先に亜鉛が酸化される。そのため鉄は保護され続ける(犠牲防食)。一方、スズは鉄よりもイオン化傾向が小さいため、ブリキで傷がついて鉄が露出すると、逆に鉄の方が優先的に酸化されてしまい、さびの進行がかえって速くなる。

答え:亜鉛は鉄よりイオン化傾向が大きいため傷がついても亜鉛が先に酸化され鉄を守るが、スズは鉄よりイオン化傾向が小さいため傷がつくと鉄が先に酸化されさびやすくなる。

例題3(応用)

問題

硝酸鉛(II)水溶液にヨウ化カリウム水溶液を加えると、金色に輝く沈殿が生じた。(1) この反応の化学反応式を書け。(2) この沈殿の名称と色を答えよ。

解答・解説を見る

(1)

$\ce{Pb(NO3)2 + 2KI -> PbI2 v + 2KNO3}$

(2)

ヨウ化鉛(II)($\mathrm{PbI_2}$)の黄色沈殿である。

答え:(1) Pb(NO3)2 + 2KI → PbI2↓ + 2KNO3 (2) ヨウ化鉛(II)、黄色

練習問題

問題

次の(1)〜(3)に答えよ。

(1) 水酸化亜鉛が塩酸、水酸化ナトリウム水溶液、過剰のアンモニア水のいずれにも溶ける性質を持つことを、それぞれの反応式で示せ。

(2) 硫化水素を鉛(II)イオンを含む水溶液に通じたときに生じる沈殿の色を答えよ。

(3) ブリキがトタンと異なり、傷がついた場合に鉄のさびを促進してしまう理由を一文で述べよ。

答え

(1) $\ce{Zn(OH)2 + 2HCl -> ZnCl2 + 2H2O}$、$\ce{Zn(OH)2 + 2NaOH -> Na2[Zn(OH)4]}$、$\ce{Zn(OH)2 + 4NH3 -> [Zn(NH3)4](OH)2}$

(2) 黒色(PbS)

(3) スズは鉄よりイオン化傾向が小さいため、傷がついて鉄が露出すると鉄の方が優先的に酸化されてしまうため。