化学基礎 / 物質の構成
イオンの生成とイオン式
要点整理
イオンの生成
原子は、電気的に中性な状態(陽子の数=電子の数)にありますが、電子を失ったり受け取ったりすることで、電荷を帯びた粒子になることがあります。これをイオンと呼びます。
- 原子が電子を失うと、電子の数が陽子の数より少なくなり、全体として正(+)の電荷を帯びます。これを陽イオンと呼びます。
- 原子が電子を受け取ると、電子の数が陽子の数より多くなり、全体として負(-)の電荷を帯びます。これを陰イオンと呼びます。
多くの原子は、電子を失ったり受け取ったりして、貴ガス(希ガス)と同じ安定な閉殻の電子配置になろうとする傾向があります。たとえば、ナトリウム原子(電子配置K2 L8 M1)は、最外殻の電子を1個失うことで、ネオン原子と同じK2 L8の安定な電子配置を持つ $\ce{Na+}$ になります。逆に、塩素原子(電子配置K2 L8 M7)は、電子を1個受け取ることで、アルゴン原子と同じK2 L8 M8の電子配置を持つ $\ce{Cl-}$ になります。
一般に、価電子の数が少ない金属元素の原子は電子を放出して陽イオンになりやすく、価電子の数が多い非金属元素の原子は電子を受け取って陰イオンになりやすい傾向があります。
イオン式の書き方
イオンを表す式をイオン式といいます。元素記号の右上に、イオンの価数(失った・受け取った電子の数)と符号(+または-)を書きます。
| イオン | イオン式 | 説明 |
|---|---|---|
| ナトリウムイオン | $\ce{Na+}$ | Na原子が電子を1個失う |
| マグネシウムイオン | $\ce{Mg^2+}$ | Mg原子が電子を2個失う |
| アルミニウムイオン | $\ce{Al^3+}$ | Al原子が電子を3個失う |
| 塩化物イオン | $\ce{Cl-}$ | Cl原子が電子を1個受け取る |
| 酸化物イオン | $\ce{O^2-}$ | O原子が電子を2個受け取る |
1個の原子からできるイオンだけでなく、複数の原子が結びついた集団が全体として電荷を帯びる多原子イオンもよく登場します。
| イオン | イオン式 |
|---|---|
| アンモニウムイオン | $\ce{NH4+}$ |
| 水酸化物イオン | $\ce{OH-}$ |
| 硝酸イオン | $\ce{NO3-}$ |
| 硫酸イオン | $\ce{SO4^2-}$ |
| 炭酸イオン | $\ce{CO3^2-}$ |
イオンのなりやすさ:イオン化エネルギーと電子親和力
原子がどれだけ陽イオンになりやすいかを表す量がイオン化エネルギーです。イオン化エネルギーは、原子から電子を1個取り去って1価の陽イオンにするために必要なエネルギーであり、この値が小さい原子ほど、電子を離しやすく、陽イオンになりやすいといえます。ナトリウムなどのアルカリ金属は、イオン化エネルギーが小さく、陽イオンになりやすい元素の代表です。
一方、原子がどれだけ陰イオンになりやすいかを表す量が電子親和力です。電子親和力は、原子が電子を1個受け取って1価の陰イオンになるときに放出されるエネルギーであり、この値が大きい原子ほど、電子を受け取りやすく、陰イオンになりやすいといえます。塩素などのハロゲンは、電子親和力が大きく、陰イオンになりやすい元素の代表です。
まとめると、次のような対応になります。
| 量 | 意味 | 値が大きい/小さいと… |
|---|---|---|
| イオン化エネルギー | 電子を取り去るのに必要なエネルギー | 小さいほど陽イオンになりやすい |
| 電子親和力 | 電子を受け取ったときに放出されるエネルギー | 大きいほど陰イオンになりやすい |
例題
例題1(基本)
問題
次のイオンのイオン式を書け。
(1) カリウムイオン(K原子が電子を1個失ってできる) (2) 硫化物イオン(S原子が電子を2個受け取ってできる) (3) アンモニウムイオン
解答・解説を見る
(1) カリウム原子Kが電子を1個失うと、正の電荷を1個持つイオンになります。イオン式は $\ce{K+}$ と書きます。
(2) 硫黄原子Sが電子を2個受け取ると、負の電荷を2個持つイオンになります。イオン式は $\ce{S^2-}$ と書きます。
(3) アンモニウムイオンは、窒素原子と水素原子4個が結びついた多原子イオンで、全体として+1の電荷を持ちます。イオン式は $\ce{NH4+}$ です。
答え:(1) $\ce{K+}$ (2) $\ce{S^2-}$ (3) $\ce{NH4+}$
例題2(標準)
問題
マグネシウム原子(電子配置K2 L8 M2)と酸素原子(電子配置K2 L6)は、それぞれ電子を何個失う、または受け取ることで、貴ガスと同じ安定な電子配置になるか。生じるイオンのイオン式もあわせて答えよ。
解答・解説を見る
マグネシウム原子
マグネシウム原子の電子配置はK2 L8 M2です。最外殻のM殻にある2個の電子を失うと、K2 L8となり、これはネオン原子と同じ、L殻まで満たされた安定な電子配置になります。
したがって、マグネシウム原子は電子を2個失って $\ce{Mg^2+}$ になります。
酸素原子
酸素原子の電子配置はK2 L6です。L殻の最大収容数は8個なので、あと2個電子を受け取ればL殻が満杯(K2 L8)になり、ネオン原子と同じ安定な電子配置になります。
したがって、酸素原子は電子を2個受け取って $\ce{O^2-}$ になります。
答え:マグネシウムは電子2個を失い $\ce{Mg^2+}$ に、酸素は電子2個を受け取り $\ce{O^2-}$ になる。
例題3(応用)
問題
一般に、1族のアルカリ金属元素(Li, Na, Kなど)はイオン化エネルギーが小さく、17族のハロゲン元素(F, Cl, Brなど)は電子親和力が大きいことが知られている。この事実をもとに、アルカリ金属とハロゲンが反応するときに、電子の授受がどちらの向きに起こると考えられるか、理由とともに説明せよ。
解答・解説を見る
イオン化エネルギーが小さい原子は、電子を少ないエネルギーで手放すことができるため、陽イオンになりやすい原子です。アルカリ金属はイオン化エネルギーが小さいので、電子を失って陽イオンになりやすいといえます。
一方、電子親和力が大きい原子は、電子を受け取ったときに大きなエネルギーを放出できる、つまり電子を受け取りやすい原子です。ハロゲンは電子親和力が大きいので、電子を受け取って陰イオンになりやすいといえます。
したがって、アルカリ金属原子とハロゲン原子が反応するときには、アルカリ金属原子が電子を1個放出して陽イオンになり、その電子をハロゲン原子が受け取って陰イオンになる、という向きで電子の授受が起こると考えられます。たとえばナトリウムと塩素が反応するときは、ナトリウム原子が電子を1個放出して $\ce{Na+}$ になり、塩素原子がその電子を受け取って $\ce{Cl-}$ になります。
答え:アルカリ金属原子(イオン化エネルギーが小さい)からハロゲン原子(電子親和力が大きい)へ、電子が移動する。アルカリ金属は電子を放出して陽イオンになり、ハロゲンはその電子を受け取って陰イオンになる。
練習問題
問題
次のイオンのイオン式を書け。(1) 硝酸イオン (2) カルシウムイオン(Ca原子が電子2個を失ってできる)
答え
(1) $\ce{NO3-}$ (2) $\ce{Ca^2+}$