化学 / 溶液

気体の溶解度とヘンリーの法則

要点整理

ヘンリーの法則

気体の水への溶けやすさは、固体とは逆に、温度が高くなるほど小さくなります(温めた炭酸飲料の泡が抜けやすいのはこのためです)。一方、圧力については、次の関係が成り立つことが知られています。

一定温度で、一定量の溶媒に溶ける気体の物質量(または質量)は、その気体の圧力に比例する。

これをヘンリーの法則といいます。式で書くと、圧力を $P$、溶ける物質量を $n$ として、

$n = kP$

($k$ は温度と気体の種類、溶媒の量によって決まる比例定数)となります。ただし、この法則が成り立つのは、$\ce{O2}$ や $\ce{N2}$、$\ce{H2}$ のように、水にあまり溶けず、水と化学反応も起こさない気体に限られます。$\ce{NH3}$ や $\ce{HCl}$ のように水によく溶けて電離するような気体には、ヘンリーの法則をそのまま適用できません。

「どの圧力で体積を測るか」に注意する

ヘンリーの法則を体積で扱うときは、どの圧力のもとで体積を測っているかに注意する必要があります。

(1) 標準状態($0\ \mathrm{^\circ C}$、$1.013\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$)に換算した体積で考える場合

物質量 $n$ は圧力 $P$ に比例するので、標準状態換算の体積 $V_0 = n\times22400\ \mathrm{mL/mol}$ も、そのまま圧力 $P$ に比例します。つまり、圧力を2倍にすると、標準状態換算の体積も2倍になります。

(2) 溶けたときと同じ圧力のもとで体積を測る場合

気体の状態方程式 $PV=nRT$ より、その圧力 $P$ のもとでの体積は $V=\dfrac{nRT}{P}$ です。ここに $n=kP$ を代入すると、

$V = \frac{kP\cdot RT}{P} = kRT$

となり、$P$ が分子・分母で打ち消し合って消えてしまいます。つまり、溶けたときと同じ圧力のもとで体積を測ると、圧力を変えても溶けている気体の体積は変わらないという、少し意外な結果になります。これは非常に間違えやすいポイントなので、「物質量(や標準状態換算の体積)は圧力に比例するが、その圧力下での体積は圧力によらず一定」と整理して覚えておきましょう。

例題

例題1(基本)

問題

$0\ \mathrm{^\circ C}$ で、圧力 $1.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ の窒素 $\ce{N2}$ を水 $1\ \mathrm{L}$ と接触させて十分な時間放置すると、$23\ \mathrm{mL}$(標準状態換算)の $\ce{N2}$ が溶ける。同じ温度で、圧力を $4.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ にしたとき、水 $1\ \mathrm{L}$ に溶ける $\ce{N2}$ の体積(標準状態換算)を求めよ。

解答・解説を見る

ヘンリーの法則より、標準状態換算の体積は圧力に比例します。圧力が $1.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ から $4.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ へと $4$ 倍になっているので、溶ける体積も $4$ 倍になります。

$23\times 4 = 92\ \mathrm{mL}$

答え:$92\ \mathrm{mL}$(標準状態換算)

例題2(標準)

問題

$0\ \mathrm{^\circ C}$ で、圧力 $1.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ の酸素 $\ce{O2}$ を水 $1\ \mathrm{L}$ と接触させると、$49\ \mathrm{mL}$(標準状態換算)の $\ce{O2}$ が溶ける。同じ温度で、圧力を $3.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ にしたとき、水 $1\ \mathrm{L}$ に溶けている $\ce{O2}$ の体積を、その $3.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ のもとで測定するといくらになるか。

解答・解説を見る

まず、$3.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ で溶ける $\ce{O2}$ の物質量(標準状態換算の体積で表す)を求めます。ヘンリーの法則より、圧力が $3$ 倍になるので、標準状態換算の体積も $3$ 倍になります。

$49\times 3 = 147\ \mathrm{mL}(標準状態換算)$

次に、この量の気体を、溶けたときの圧力である $3.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ のもとで測った体積に換算します。標準状態($1.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$)から $3.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ へと圧力が $3$ 倍になったので、同じ物質量の気体の体積はボイルの法則により $\dfrac{1}{3}$ 倍になります。

$147\times\frac{1}{3} = 49\ \mathrm{mL}$

答え:$49\ \mathrm{mL}$

圧力を $1.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ から $3.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ に変えても、その圧力下で測った体積は、もとの $49\ \mathrm{mL}$ から変わりません。これは要点整理で説明した「溶けたときの圧力で測ると体積は一定になる」ことの具体例です。

例題3(応用)

問題

$0\ \mathrm{^\circ C}$ で、$\ce{N2}$ を単独で圧力 $1.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ にして水 $1\ \mathrm{L}$ と接触させると $23\ \mathrm{mL}$(標準状態換算)溶け、$\ce{O2}$ を単独で圧力 $1.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ にして水 $1\ \mathrm{L}$ と接触させると $49\ \mathrm{mL}$(標準状態換算)溶けるものとする。いま、体積比 $\ce{N2}:\ce{O2}=4:1$ の空気を、全圧 $1.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$、$0\ \mathrm{^\circ C}$ で水 $1\ \mathrm{L}$ と接触させた。溶けた $\ce{N2}$ と $\ce{O2}$ の体積(標準状態換算)、および水に溶けている $\ce{N2}$ と $\ce{O2}$ の物質量の比を求めよ。

解答・解説を見る

ヘンリーの法則は、それぞれの気体の分圧に対して成り立ちます。空気の体積比が $\ce{N2}:\ce{O2}=4:1$ なので、全圧 $1.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ における各成分の分圧は、

$p_{\ce{N2}} = 1.0\times10^{5}\times\frac{4}{5} = 0.80\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$

$p_{\ce{O2}} = 1.0\times10^{5}\times\frac{1}{5} = 0.20\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$

溶ける体積(標準状態換算)

それぞれの気体が単独で $1.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ のときに溶ける体積に、圧力比(分圧 $\div 1.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$)をかけます。

$V_{\ce{N2}} = 23\times0.80 = 18.4\ \mathrm{mL}$

$V_{\ce{O2}} = 49\times0.20 = 9.8\ \mathrm{mL}$

溶けている物質量の比

標準状態換算の体積の比が、そのまま物質量の比になります。

$\ce{N2}:\ce{O2} = 18.4:9.8 \approx 1.88:1$

答え:溶けた $\ce{N2}$ は $18.4\ \mathrm{mL}$、$\ce{O2}$ は $9.8\ \mathrm{mL}$(いずれも標準状態換算)。水に溶けている $\ce{N2}$ と $\ce{O2}$ の物質量比は約 $1.88:1$

空気中の $\ce{N2}:\ce{O2}$ の比は $4:1$($=4.0:1$)ですが、水に溶けたあとの比は約 $1.88:1$ となり、空気中よりも $\ce{O2}$ の割合が大きくなっています。これは、$\ce{O2}$ のほうが $\ce{N2}$ より水に溶けやすい($1.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$あたりの溶解量が多い)ためです。水中の魚が呼吸できるのは、このように水に溶けた酸素の割合が空気中よりも高くなっていることも一因です。

練習問題

問題

$0\ \mathrm{^\circ C}$、圧力 $1.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ の水素 $\ce{H2}$ は、水 $1\ \mathrm{L}$ に $21\ \mathrm{mL}$(標準状態換算)溶ける。同じ温度で圧力を $5.0\times10^{5}\ \mathrm{Pa}$ にすると、水 $2\ \mathrm{L}$ には何mL(標準状態換算)の $\ce{H2}$ が溶けるか。

答え

圧力が $5$ 倍、水の量が $2$ 倍なので、溶ける体積(標準状態換算)は $21\times5\times2=210\ \mathrm{mL}$