有機化学 / 有機化合物の構造決定

章末問題

章末問題

問題1

問題

炭素・水素・酸素からなる化合物Aがある。A 7.4mgを完全燃焼させたところ、二酸化炭素13.2mgと水5.4mgが生成した。Aの分子量は74であり、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えると気体が発生した。Aの分子式と構造式を求めよ。原子量は $\mathrm{H=1.0,\ C=12,\ O=16}$ とする。

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分子式を求める

$m_{\ce{C}} = 13.2\times\frac{12}{44} = 3.6\ \mathrm{mg}\qquad m_{\ce{H}} = 5.4\times\frac{2}{18} = 0.6\ \mathrm{mg}$

$m_{\ce{O}} = 7.4-3.6-0.6 = 3.2\ \mathrm{mg}$

$\ce{C}:\ce{H}:\ce{O} = \frac{3.6}{12}:\frac{0.6}{1.0}:\frac{3.2}{16} = 0.3:0.6:0.2 = 3:6:2$

組成式は $\ce{C3H6O2}$(式量74)。分子量74は式量74と一致するので、分子式は $\ce{C3H6O2}$。

構造を決定する

$\ce{C3H6O2}$ には、プロピオン酸(プロパン酸)$\ce{CH3CH2COOH}$ や酢酸メチル $\ce{CH3COOCH3}$ などの異性体が考えられる。炭酸水素ナトリウム水溶液と反応して気体(二酸化炭素)が発生したことから、Aはカルボキシ基をもつ(炭酸より強い酸)とわかる。酢酸メチルはエステルでありカルボキシ基をもたないため反応しない。したがって、Aはプロピオン酸である。

答え:分子式 $\ce{C3H6O2}$、構造式 $\ce{CH3CH2COOH}$(プロピオン酸)

問題2

問題

分子式 $\ce{C4H6}$ で表される炭化水素Bは、触媒を用いて水素を付加すると、1molのBにつき2molの水素を吸収して、飽和の炭化水素 $\ce{C4H10}$ になった。考えられるBの構造式を、鎖式のものについてすべて示せ。

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不飽和度の計算

$U = \frac{2\times4+2-6}{2} = \frac{4}{2} = 2$

不飽和度2であり、実際に水素を2mol付加して飽和化合物になったことと一致する。不飽和度2は、二重結合を2個(ジエン)もつ場合と、三重結合を1個(アルキン)もつ場合の両方で説明できる。

考えられる構造をすべて挙げる

二重結合を2個もつ鎖式の構造としては、1,3-ブタジエン $\ce{CH2=CH-CH=CH2}$ が考えられる。三重結合を1個もつ構造としては、三重結合の位置によって、1-ブチン $\ce{CH#C-CH2-CH3}$(末端)と2-ブチン $\ce{CH3-C#C-CH3}$(内部)の2通りが考えられる。

このように、不飽和度と水素付加のデータだけからは、これら3種類の構造をまだ区別できない。実際の入試問題では、これに加えて臭素水との反応性や、別の検出反応の結果が与えられ、1つの構造に絞り込めるようになっている。

答え:$\ce{CH2=CH-CH=CH2}$(1,3-ブタジエン)、$\ce{CH#C-CH2-CH3}$(1-ブチン)、$\ce{CH3-C#C-CH3}$(2-ブチン)の3種類。

問題3

問題

分子式 $\ce{C7H8O}$ で表される化合物Cは、金属ナトリウムと反応して水素を発生し、塩化鉄(III)水溶液を加えると呈色した。Cとして考えられる構造をすべて答えよ。

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不飽和度の計算

$U = \frac{2\times7+2-8}{2} = \frac{8}{2} = 4$

不飽和度4は、ベンゼン環1個(二重結合3個+環1個に相当)に対応する典型的な値である。

検出反応からの絞り込み

金属ナトリウムと反応することから、ヒドロキシ基をもつ(エーテルではない)とわかる。塩化鉄(III)水溶液で呈色したことから、そのヒドロキシ基はフェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環に直接結合)であるとわかる。ベンジルアルコール($\ce{C6H5-CH2-OH}$、アルコール性ヒドロキシ基)やアニソール($\ce{C6H5-O-CH3}$、エーテルでヒドロキシ基なし)は、この2つの条件のどちらかを満たさないため除外される。

条件を満たすのは、ベンゼン環にメチル基とフェノール性ヒドロキシ基が結合したクレゾール($\ce{CH3-C6H4-OH}$)である。ただし、メチル基とヒドロキシ基の相対的な位置(オルト・メタ・パラ)まではこの実験だけでは決まらないため、3種類の異性体すべてが候補として残る。

答え:o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール(いずれもメチル基とフェノール性ヒドロキシ基をもつ $\ce{CH3-C6H4-OH}$)。位置関係を決めるにはさらに別の実験事実が必要。

問題4

問題

分子式 $\ce{C5H10O2}$ で表されるエステルYを水酸化ナトリウム水溶液でけん化すると、酢酸ナトリウムとアルコールZが得られた。Zはヨードホルム反応を示さなかった。Yの構造式を求めよ。

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加水分解の一般式から考える

けん化で酢酸ナトリウムが得られたことから、Yは酢酸の部分($\ce{CH3-CO-O-}$)をもつエステルであるとわかる。

$\ce{CH3-CO-O-R + NaOH -> CH3COONa + ROH}$

Yの分子式 $\ce{C5H10O2}$ から酢酸の部分($\ce{C2H3O2}$、$\ce{CH3CO-O-}$)を引くと、アルコール部分は $\ce{C3H7-}$(プロピル基)であるとわかる。プロピル基には、直鎖(n-プロピル、$\ce{-CH2CH2CH3}$)と枝分かれ(イソプロピル、$\ce{-CH(CH3)2}$)の2通りが考えられる。

アルコールZの構造の決定

けん化で生じたアルコールZがヨードホルム反応を示さなかったことから、Zは $\ce{CH3-CH(OH)-}$ の構造をもたないとわかる。イソプロピルアルコール(2-プロパノール、$\ce{CH3CH(OH)CH3}$)はこの構造をもちヨードホルム反応を示すはずなので、Zはこれではなく、1-プロパノール($\ce{CH3CH2CH2OH}$)であるとわかる。

したがって、Yは酢酸と1-プロパノールのエステル(酢酸プロピル、酢酸n-プロピル)である。

答え:$\ce{CH3-CO-O-CH2CH2CH3}$(酢酸プロピル)

問題5

問題

分子式 $\ce{C5H10}$ で表される化合物には、環状構造をもつものと、鎖式で二重結合をもつもの(アルケン)の両方が考えられる。この分子式の不飽和度を求め、それぞれのタイプの構造式の例を1つずつ挙げよ。

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不飽和度の計算

$U = \frac{2\times5+2-10}{2} = \frac{2}{2} = 1$

不飽和度1は、環1個、または二重結合1個のどちらにも対応する。

それぞれの構造の例

  • 環状構造(シクロアルカン):シクロペンタン $\ce{C5H10}$(五員環、二重結合なし)
  • 鎖式のアルケン:1-ペンテン $\ce{CH2=CH-CH2-CH2-CH3}$(直鎖、二重結合1個)

どちらも不飽和度1という条件は満たしているが、環をもつかどうかは、臭素水を加えて脱色するか(アルケンなら脱色する、シクロアルカンなら脱色しない)などの追加の実験で見分けることができる。

答え:不飽和度は1。環状構造の例:シクロペンタン。鎖式アルケンの例:1-ペンテン($\ce{CH2=CHCH2CH2CH3}$)。

問題6

問題

炭素・水素・酸素からなる化合物Zがある。Z 14.6mgを完全燃焼させたところ、二酸化炭素26.4mgと水9.0mgが生成した。Zの分子量は146であった。また、1molのZを完全に中和するには2molの水酸化ナトリウムが必要であり、Zは炭素骨格に枝分かれのない直鎖状の化合物であることがわかっている。Zの分子式と構造式を求めよ。原子量は $\mathrm{H=1.0,\ C=12,\ O=16}$ とする。

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分子式を求める

$m_{\ce{C}} = 26.4\times\frac{12}{44} = 7.2\ \mathrm{mg}\qquad m_{\ce{H}} = 9.0\times\frac{2}{18} = 1.0\ \mathrm{mg}$

$m_{\ce{O}} = 14.6-7.2-1.0 = 6.4\ \mathrm{mg}$

$\ce{C}:\ce{H}:\ce{O} = \frac{7.2}{12}:\frac{1.0}{1.0}:\frac{6.4}{16} = 0.6:1.0:0.4 = 3:5:2$

組成式は $\ce{C3H5O2}$(式量73)。分子量146は式量73の2倍なので、分子式は $\ce{C6H10O4}$。

構造を決定する

不飽和度は $U=\dfrac{2\times6+2-10}{2}=2$。

1molのZを中和するのに2molのNaOHが必要だったことから、Zはカルボキシ基を2個もつジカルボン酸であるとわかる。カルボキシ基2個分のC=Oで不飽和度2をちょうど使い切るので、残りの炭素骨格はすべて単結合(飽和)である。

分子式 $\ce{C6H10O4}$ から2個のカルボキシ基($\ce{-COOH}$、あわせて $\ce{C2H2O4}$)を除くと、残りは $\ce{C4H8}$ の炭化水素部分であり、これが2つのカルボキシ基をつなぐ鎖になる。炭素骨格に枝分かれがないという条件から、この部分は $\ce{-(CH2)4-}$ と決まる。

答え:分子式 $\ce{C6H10O4}$、構造式 $\ce{HOOC-(CH2)4-COOH}$(アジピン酸。ナイロン66の原料の一つ)