化学 / 溶液

よくある間違い

間違い1: 溶解度を「溶液100gに対する量」だと思い込む

よくある誤答例

溶解度が $60$ の物質について、「飽和溶液 $100\ \mathrm{g}$ 中に $60\ \mathrm{g}$ の溶質が溶けている」と考えてしまう。

なぜ間違いなのか

溶解度は、あくまで溶媒(水)100gに対して溶ける溶質の最大質量です。溶液(溶媒+溶質)100gに対する量ではありません。この混同は、再結晶の計算をすべて狂わせてしまう、非常に多いミスです。

正しい考え方

溶解度が $S$ のとき、「溶質:溶媒:溶液 $=S:100:(100+S)$」という比を必ず思い出しましょう。問題文に出てくる質量が「水の質量」なのか「飽和溶液の質量」なのかを、そのつど確認する習慣をつけることが大切です。

間違い2: 水和物が析出することを忘れて無水物として計算してしまう

よくある誤答例

硫酸銅(II)水溶液を冷却する問題で、析出するのが $\ce{CuSO4\cdot5H2O}$ であるにもかかわらず、無水物 $\ce{CuSO4}$ の公式 $w=\dfrac{S_1-S_2}{100+S_1}M$ をそのまま使ってしまう。

なぜ間違いなのか

水和物として結晶が析出するときは、結晶の中に水分子も一緒に取り込まれます。そのため、残った溶液の水の量が単純な計算より減ってしまい、無水物だけを考える公式は使えません。

正しい考え方

析出する結晶の質量を $w$ とおき、「結晶に含まれる無水物の質量」と「結晶に含まれる水の質量」を、それぞれ式量の比を使って $w$ で表します。そのうえで、残った溶液について「溶けている無水物の質量」と「残っている水の質量」の比が、冷却後の温度での溶解度の比に等しいという方程式を立てて解きましょう。

間違い3: 気体の溶解度も温度が上がると増えると思い込む

よくある誤答例

固体の溶解度が温度とともに増えることから、気体の溶解度も温度が高くなるほど大きくなると考えてしまう。

なぜ間違いなのか

気体の溶解度は、多くの固体とは逆に、温度が高くなるほど小さくなります。冷たい炭酸飲料の方が気が抜けにくく、温めると泡が激しく出るのはこのためです。

正しい考え方

「固体は温度が上がると溶けやすくなることが多いが、気体は温度が上がると溶けにくくなる」と、固体と気体を対比させて覚えておきましょう。

間違い4: ヘンリーの法則で「どの圧力で体積を測るか」を混同する

よくある誤答例

圧力を2倍にしたとき、「その圧力のもとで測った気体の体積」も2倍になると考えてしまう。

なぜ間違いなのか

圧力を2倍にすると、溶ける物質量(および標準状態換算の体積)は2倍になりますが、その圧力自体も2倍になっているため、その圧力のもとで測った体積は、ボイルの法則により半分に圧縮されます。その結果、両者は打ち消し合って、その圧力下での体積はもとと変わらなくなります。

正しい考え方

「標準状態換算の体積(または物質量)は圧力に比例する」ことと、「溶けたときの圧力のもとで測った体積は、圧力によらず一定である」ことを、別々の事実として区別して覚えましょう。問題文が「標準状態に換算した体積」を聞いているのか、「その圧力のもとでの体積」を聞いているのかを必ず確認します。

間違い5: 水と反応する気体にもヘンリーの法則をそのまま使ってしまう

よくある誤答例

アンモニア $\ce{NH3}$ や塩化水素 $\ce{HCl}$ のように水によく溶けて反応する気体についても、圧力と溶解量が単純に比例すると考えてしまう。

なぜ間違いなのか

ヘンリーの法則は、溶媒と反応せず、単純に分子のまま溶け込む気体(酸素、窒素、水素など)についてよく成り立ちます。$\ce{NH3}$ や $\ce{HCl}$ のように水と反応してイオン化する気体は、溶解のしかたが全く異なるため、ヘンリーの法則をそのまま適用することはできません。

正しい考え方

ヘンリーの法則が使えるのは、「水にあまり溶けず、水と化学変化を起こさない気体」に限られることを覚えておきましょう。

間違い6: 電解質の希薄溶液で電離を考慮せずに計算してしまう

よくある誤答例

$\ce{NaCl}$ 水溶液の凝固点降下や浸透圧を計算するときに、電離を無視して、溶かした $\ce{NaCl}$ の物質量をそのまま公式に代入してしまう。

なぜ間違いなのか

沸点上昇・凝固点降下・浸透圧はすべて、溶液中に存在する粒子の総数で決まる性質(束一的性質)です。$\ce{NaCl}$ は水中で $\ce{Na+}$ と $\ce{Cl-}$ に電離するため、粒子の数はもとの物質量の2倍になっています。これを考えずに計算すると、答えがちょうど電離後の粒子数の倍率の分だけ小さくなってしまいます。

正しい考え方

電解質を扱うときは、「溶かした物質量」ではなく「電離後の粒子の総物質量」を使うことを、計算の最初に必ず確認しましょう。完全に電離する場合は生じるイオンの数の分だけ、一部だけ電離する場合はファントホッフ係数 $i=1+\alpha$(2つの粒子に電離する場合)を掛けて求めます。

間違い7: 質量モル濃度とモル濃度を混同する

よくある誤答例

沸点上昇・凝固点降下の計算に、モル濃度 $c$(mol/L、溶液の体積あたり)をそのまま質量モル濃度 $m$(mol/kg、溶媒の質量あたり)として代入してしまう。

なぜ間違いなのか

沸点上昇度・凝固点降下度の公式 $\Delta t=Km$ で使う $m$ は、あくまで溶媒の質量(kg)あたりの物質量です。一方、浸透圧の公式 $\Pi=cRT$ で使う $c$ は溶液の体積(L)あたりの物質量です。この2つは定義が異なるので、混同すると誤った値になります。

正しい考え方

「沸点上昇・凝固点降下 → 質量モル濃度(溶媒の質量が基準)」「浸透圧 → モル濃度(溶液の体積が基準)」と、公式ごとにセットで覚えておきましょう。

間違い8: 浸透圧の計算で気体定数の単位をそろえない

よくある誤答例

圧力を $\mathrm{Pa}$ で扱っているのに、気体定数として $R=0.082\ \mathrm{atm\cdot L/(mol\cdot K)}$ をそのまま使ってしまう(あるいはその逆)。

なぜ間違いなのか

気体定数の数値は、圧力や体積にどの単位を使うかによって変わります。単位をそろえずに計算すると、答えが何桁も違う値になってしまいます。

正しい考え方

計算を始める前に、圧力の単位($\mathrm{Pa}$ か $\mathrm{atm}$ か)を確認し、それに対応する気体定数($R=8.3\times10^{3}\ \mathrm{Pa\cdot L/(mol\cdot K)}$ または $R=0.082\ \mathrm{atm\cdot L/(mol\cdot K)}$)を選びましょう。体積の単位も $\mathrm{L}$ にそろえる必要があります。

間違い9: 疎水コロイドと親水コロイドで、凝析・塩析に必要な電解質の量を逆に覚える

よくある誤答例

「少量の電解質で沈殿するのが塩析、多量の電解質が必要なのが凝析」のように、用語と量の対応を逆に覚えてしまう。

なぜ間違いなのか

疎水コロイドは、粒子表面の電荷どうしの反発だけで分散状態を保っているため、その電荷を少量の電解質で中和するだけで簡単に沈殿します(凝析)。一方、親水コロイドは粒子の周りの水和層によって強く安定化されているため、この水和層を壊すには多量の電解質が必要です(塩析)。

正しい考え方

「疎水コロイド+少量の電解質→凝析」「親水コロイド+多量の電解質→塩析」と、コロイドの種類と操作名、必要な電解質の量をワンセットで覚えましょう。