化学 / 溶液

固体の溶解度

要点整理

溶解度と溶解度曲線

一定の温度で、溶媒(ふつうは水)$100\ \mathrm{g}$ に溶かすことができる溶質の最大質量(g数)を、その物質の溶解度といいます。溶解度は物質ごとに決まっていて、温度によって変化します。硝酸カリウム $\ce{KNO3}$ のように、多くの固体の溶解度は温度が高くなるほど大きくなります。この、温度と溶解度の関係を表したグラフを溶解度曲線と呼びます。

ある温度で、溶解度いっぱいまで溶質が溶けている溶液を飽和溶液といいます。溶解度が $S$(g/水100 g)である物質について、水 $W\ \mathrm{g}$ を用いて作った飽和溶液には、次の量の溶質が溶けています。

$x = \frac{S}{100}\,W$

このとき、飽和溶液全体の質量は $W+x = W\left(1+\dfrac{S}{100}\right) = W\cdot\dfrac{100+S}{100}$ となるので、「溶質:溶媒:溶液 $= S:100:(100+S)$」という比の関係で覚えておくと、いろいろな量から他の量を求めるときに便利です。

再結晶の考え方

高温で溶質をたくさん溶かした飽和溶液を冷やすと、低温での溶解度を超えた分の溶質が溶けきれなくなり、結晶として析出してきます。この操作を再結晶といい、少量の不純物を取り除いて物質を精製するために利用されます。

温度 $T_1$ での溶解度を $S_1$、より低い温度 $T_2$ での溶解度を $S_2$ とし、$T_1$ で質量 $M$ の飽和溶液を $T_2$ まで冷却したときに析出する結晶の質量 $w$ を求めてみましょう。

冷却の前後で水の質量は変わらない(結晶の析出によって減るのは溶質だけ)ので、まず溶液 $M$ に含まれる水の質量 $W$ を求めます。溶質:溶液 $=S_1:(100+S_1)$ の比から、

$W = M\times\frac{100}{100+S_1}$

冷却後、この水 $W$ に対して $T_2$ での溶解度分だけ溶質が溶けたままなので、残っている溶質の質量は $\dfrac{S_2}{100}W$ です。もとの溶質の質量 $\dfrac{S_1}{100}W$ との差が、析出した結晶の質量になります。

$w = \frac{S_1}{100}W - \frac{S_2}{100}W = \frac{S_1-S_2}{100}\,W = \frac{S_1-S_2}{100}\times M\times\frac{100}{100+S_1} = \frac{S_1-S_2}{100+S_1}\,M$

これが、無水物のまま結晶が析出する場合の析出量の公式です。ただし、硫酸銅(II)五水和物 $\ce{CuSO4.5H2O}$ のように、結晶が水和物として析出する物質では、析出する結晶の中に水も一緒に取り込まれてしまうため、この公式をそのまま使うことはできません。そのような場合は、例題3のように「水の質量」と「溶質(無水物換算)の質量」について、それぞれ収支の式を立てて解く必要があります。

例題

例題1(基本)

問題

硝酸カリウム $\ce{KNO3}$ の水に対する溶解度は、$60\ \mathrm{^\circ C}$ で $110$、$20\ \mathrm{^\circ C}$ で $32$(いずれも水 $100\ \mathrm{g}$ に対する g数)である。$60\ \mathrm{^\circ C}$ の水 $150\ \mathrm{g}$ に溶かすことができる $\ce{KNO3}$ の最大質量を求めよ。

解答・解説を見る

溶解度の定義から、水 $100\ \mathrm{g}$ あたり $110\ \mathrm{g}$ の $\ce{KNO3}$ が溶けるので、水 $150\ \mathrm{g}$ に溶ける最大質量 $x$ は、比例式で求められます。

$x = \frac{110}{100}\times 150 = 165\ \mathrm{g}$

答え:$165\ \mathrm{g}$

例題2(標準)

問題

$60\ \mathrm{^\circ C}$ で $\ce{KNO3}$ の飽和水溶液 $210\ \mathrm{g}$ をつくり、これを $20\ \mathrm{^\circ C}$ まで冷却した。析出する結晶の質量を求めよ。ただし、$\ce{KNO3}$ の溶解度は $60\ \mathrm{^\circ C}$ で $110$、$20\ \mathrm{^\circ C}$ で $32$ とする。

解答・解説を見る

水の質量を求める

溶質:溶液の比が $S_1:(100+S_1) = 110:210$ なので、飽和溶液 $210\ \mathrm{g}$ に含まれる水の質量 $W$ は、溶液:水の比 $210:100$ を使って、

$W = 210\times\frac{100}{210} = 100\ \mathrm{g}$

(この問題では溶液の質量がちょうど $100+S_1=210$ に一致するように選んであるので、水の質量はぴったり $100\ \mathrm{g}$ になります。)

冷却後に溶けたままの溶質の質量

$20\ \mathrm{^\circ C}$ での溶解度は $32$ なので、水 $100\ \mathrm{g}$ に溶けたままの $\ce{KNO3}$ は $32\ \mathrm{g}$ です。

析出量を求める

もともと水 $100\ \mathrm{g}$ に溶けていた $\ce{KNO3}$ は $110\ \mathrm{g}$ だったので、析出する結晶の質量は、

$110-32 = 78\ \mathrm{g}$

答え:$78\ \mathrm{g}$

例題3(応用)

問題

硫酸銅(II)$\ce{CuSO4}$(式量 $160$)の水に対する溶解度は、$60\ \mathrm{^\circ C}$ で $40$、$20\ \mathrm{^\circ C}$ で $20$ である。$60\ \mathrm{^\circ C}$ の水 $200\ \mathrm{g}$ に $\ce{CuSO4}$ を溶かして飽和水溶液をつくり、これを $20\ \mathrm{^\circ C}$ まで冷却したところ、硫酸銅(II)五水和物 $\ce{CuSO4.5H2O}$(式量 $250$)の結晶が析出した。析出した結晶の質量を求めよ。

解答・解説を見る

水和物として結晶が析出する場合、結晶の中に水分子も取り込まれるため、「水の質量」と「$\ce{CuSO4}$(無水物換算)の質量」の両方について、収支の式を別々に立てる必要があります。

最初の溶液の組成

$60\ \mathrm{^\circ C}$ で水 $200\ \mathrm{g}$ を飽和させると、溶解度 $40$ より、溶けている $\ce{CuSO4}$ の質量は、

$\frac{40}{100}\times 200 = 80\ \mathrm{g}$

析出する結晶の質量を $w\ \mathrm{g}$ とおく

$\ce{CuSO4.5H2O}$(式量 $250$)には、$\ce{CuSO4}$(式量 $160$)が質量の割合で $\dfrac{160}{250}=0.64$、水(式量 $90$)が $\dfrac{90}{250}=0.36$ の割合で含まれています。したがって、結晶 $w\ \mathrm{g}$ が析出すると、

  • 溶液から失われる $\ce{CuSO4}$ の質量:$0.64w$
  • 溶液から失われる水の質量:$0.36w$

残った水溶液が $20\ \mathrm{^\circ C}$ で飽和していることを式にする

冷却後、溶液に残っている水の質量は $200-0.36w$、溶けたままの $\ce{CuSO4}$ の質量は $80-0.64w$ です。これらが $20\ \mathrm{^\circ C}$ での溶解度の比(溶質:水 $=20:100$、つまり $0.20:1$)を満たすので、

$80-0.64w = 0.20\times(200-0.36w)$

右辺を展開すると、

$80-0.64w = 40-0.072w$

$w$ を含む項を左辺に、定数項を右辺に移項すると、

$-0.64w+0.072w = 40-80$

$-0.568w = -40$

$w = \frac{40}{0.568} \approx 70.4\ \mathrm{g}$

答え:析出する $\ce{CuSO4\cdot5H2O}$ の結晶は約 $70.4\ \mathrm{g}$

無水物だけに注目して単純に $80-\dfrac{20}{100}\times200=80-40=40\ \mathrm{g}$ と計算してしまうのは誤りです。析出する結晶が水も一緒に持ち去ってしまう分、実際に析出する結晶の質量はこれより大きくなることに注意しましょう。

練習問題

問題

ミョウバンの水に対する溶解度は、$50\ \mathrm{^\circ C}$ で $36$、$10\ \mathrm{^\circ C}$ で $8.0$ である。$50\ \mathrm{^\circ C}$ の水 $200\ \mathrm{g}$ にミョウバンを溶かして飽和水溶液をつくり、これを $10\ \mathrm{^\circ C}$ まで冷却すると、何gの結晶(無水物として)が析出するか。

答え

$50\ \mathrm{^\circ C}$ で溶けている量:$\dfrac{36}{100}\times200=72\ \mathrm{g}$。$10\ \mathrm{^\circ C}$ で溶けたままの量:$\dfrac{8.0}{100}\times200=16\ \mathrm{g}$。析出量 $=72-16=56\ \mathrm{g}$