化学 / 物質の状態変化

よくある間違い

間違い1: 気体の法則の計算にセルシウス温度をそのまま使ってしまう

よくある誤答例

シャルルの法則やボイル・シャルルの法則の比例式に、$27℃$ や $127℃$ のようなセルシウス温度の数値をそのまま代入してしまう。

なぜ間違いなのか

シャルルの法則 $\dfrac{V}{T}=(\text{一定})$ や状態方程式 $PV=nRT$ の $T$ は、必ず絶対温度(単位K)でなければなりません。セルシウス温度は $0℃$ を基準にした目盛りであり、比例関係が成り立つのは絶対零度($-273℃=0\ \mathrm{K}$)を基準にした絶対温度に対してだけです。

正しい考え方

気体の法則の計算を始める前に、必ずすべての温度を $T[\mathrm{K}]=t[℃]+273$ の式で絶対温度に変換する習慣をつけましょう。「℃のままでは計算しない」を合言葉にすると忘れにくくなります。

間違い2: 気体定数Rを使うときに、圧力や体積の単位をそろえ忘れる

よくある誤答例

$R=8.3\times10^3\ \mathrm{Pa\cdot L/(K\cdot mol)}$ を使っているのに、体積を $\mathrm{mL}$ のまま、あるいは圧力を $\mathrm{atm}$ や $\mathrm{hPa}$ のまま代入してしまう。

なぜ間違いなのか

気体定数 $R$ の値は、圧力・体積・温度の単位の組み合わせによって変わります。$R=8.3\times10^3\ \mathrm{Pa\cdot L/(K\cdot mol)}$ は、圧力を $\mathrm{Pa}$、体積を $\mathrm{L}$ で表すことを前提にした値であり、単位がずれていると、答えが桁違いになってしまいます。

正しい考え方

計算を始める前に、問題で与えられている圧力・体積の単位を確認し、使う $R$ の単位に合わせて変換しておきましょう($1\ \mathrm{mL}=10^{-3}\ \mathrm{L}$ など)。

間違い3: ボイルの法則とシャルルの法則をどちらに使うべきか混同する

よくある誤答例

「圧力が一定」の問題にボイルの法則 $P_1V_1=P_2V_2$ を使ってしまったり、逆に「温度が一定」の問題にシャルルの法則を使ってしまったりする。

なぜ間違いなのか

ボイルの法則は「温度が一定」のときに圧力と体積の関係を表す法則、シャルルの法則は「圧力が一定」のときに体積と温度の関係を表す法則です。どちらの量が一定に保たれているかを取り違えると、まったく違う式を立ててしまいます。

正しい考え方

問題文を読んだら、まず「何が一定に保たれているか」(温度なのか、圧力なのか)を確認しましょう。迷ったときは、両方を含んだボイル・シャルルの法則 $\dfrac{P_1V_1}{T_1}=\dfrac{P_2V_2}{T_2}$ に立ち返り、一定の量を同じ記号($P_1=P_2$ など)にして計算すれば、どちらのケースにも対応できます。

間違い4: 混合気体の分圧を求めるときに、全圧をそのまま使ってしまう

よくある誤答例

混合気体の中の1つの成分気体について状態方程式を使うとき、圧力の欄に混合気体全体の全圧をそのまま代入してしまう。

なぜ間違いなのか

状態方程式 $PV=nRT$ を、ある成分気体1種類だけについて立てるときの $P$ は、その成分気体の分圧であって、混合気体全体の全圧ではありません。全圧は、すべての成分気体の分圧を合計したものです。

正しい考え方

「全圧」と「分圧」は別の量であることを意識し、1種類の気体だけに注目して計算するときは分圧を、混合気体全体について考えるときは全圧を使う、と使い分けましょう。ドルトンの分圧の法則 $P_{\text{全}}=P_A+P_B+\cdots$ を、いつでも立ち返れる基本式として覚えておくと混同しにくくなります。

間違い5: モル分率と体積比・物質量の比の関係を見落とす

よくある誤答例

モル分率を求める問題で、わざわざ状態方程式を使って複雑に計算しようとしてしまい、単純な物質量の比で済むことに気づかない。

なぜ間違いなのか

同じ容器・同じ温度に入っている気体どうしでは、圧力は物質量に比例するため、モル分率 $x_A=\dfrac{n_A}{n_{\text{全}}}$ は、物質量の比をそのまま計算するだけで求められます。状態方程式を経由しなくても、与えられた物質量(または体積比)から直接求めることができます。

正しい考え方

モル分率は「その成分気体の物質量 ÷ 全体の物質量」という、比の計算だけで求まることを覚えておきましょう。気体の場合、モル分率は体積比とも一致するため、物質量ではなく体積の比で与えられている問題でも、そのまま同じ計算ができます。

間違い6: 実在気体が理想気体に近づく条件を逆に覚えてしまう

よくある誤答例

実在気体が理想気体に近いふるまいをする条件を、「低温・高圧」のように逆に覚えてしまう。

なぜ間違いなのか

低温では分子の熱運動が穏やかになり分子間力の影響を強く受けやすくなるため、理想気体からのズレはむしろ大きくなります。また高圧では分子どうしの間隔が狭くなり、分子自身の体積が無視できなくなるため、これもズレを大きくする条件です。

正しい考え方

「高温・低圧」で理想気体に近づく、と正しく覚えましょう。高温だと分子間力の影響を振り切りやすく、低圧だと分子自身の体積が容器の体積に対して無視できるほど小さくなる、という2つの理由をセットにして理解すると、逆に覚えることがなくなります。

間違い7: ファンデルワールスの状態方程式のaとbの役割を取り違える

よくある誤答例

定数 $a$ が分子の体積を表し、定数 $b$ が分子間力を表す、というように役割を逆に覚えてしまう。

なぜ間違いなのか

$\left(P+\dfrac{an^2}{V^2}\right)(V-nb)=nRT$ において、$a$ を含む項は圧力 $P$ に加える補正、$b$ を含む項は体積 $V$ から引く補正です。圧力の補正(分子間力による圧力の低下を補う)は $a$、体積の補正(分子自身の体積による自由空間の減少を補う)は $b$ が担っています。

正しい考え方

「$a$ は圧力(Pressure)の補正、圧力を押し上げる方向に足す」「$b$ は体積(Volume)の補正、体積を差し引く方向に引く」というように、式の中でどちらの量に効いているかで覚えると混同しにくくなります。

間違い8: 飽和蒸気圧が容器の体積や液体の量によって変わると思い込む

よくある誤答例

密閉容器の体積を大きくすれば、液体がもっと蒸発できるようになるので、飽和蒸気圧も大きくなると考えてしまう。

なぜ間違いなのか

飽和蒸気圧は、あくまで温度だけによって決まる量です。容器の体積を大きくしても、液体が少しでも残っている限り(蒸発しきってしまわない限り)、気液平衡が保たれ、蒸気の圧力は同じ飽和蒸気圧の値に戻ります(体積が大きくなった分、追加で液体が蒸発して平衡を保ち直すだけです)。

正しい考え方

飽和蒸気圧は温度の関数であり、体積や液体の量には依存しないことを押さえましょう。ただし、液体の量が少なすぎて、体積を大きくしたときにすべて蒸発しきってしまうと、それ以上は蒸気の圧力が飽和蒸気圧の値を保てなくなり、通常の気体の状態方程式に従うようになる(このときは気液平衡ではなくなる)点には注意が必要です。

間違い9: 沸点を「100℃で決まっている」というように、圧力条件を忘れて覚えてしまう

よくある誤答例

水の沸点は常に $100℃$ である、というように、沸点を物質固有の絶対的な値として覚えてしまい、高山や圧力鍋の問題に対応できなくなる。

なぜ間違いなのか

沸点は「飽和蒸気圧が外部の圧力と等しくなる温度」と定義されており、外部の圧力(多くは大気圧)が変われば、沸点も変わります。$100℃$ という値は、あくまで標準の大気圧($1.013\times10^5\ \mathrm{Pa}$)のもとでの水の沸点にすぎません。

正しい考え方

沸点を考えるときは、必ず「そのときの外部の圧力はいくらか」を確認しましょう。大気圧が低い高山では沸点は $100℃$ より低くなり、圧力鍋のように外部の圧力を高くすると沸点は $100℃$ より高くなる、という関係を理解しておくことが重要です。