化学基礎 / 物質量と化学反応式
化学反応式と量的関係の計算
要点整理
係数の比 = 物質量の比
化学反応式の係数は、その反応に関わる物質の物質量(mol)の比を表しています。たとえば、次の化学反応式を考えます。
$\ce{N2 + 3H2 -> 2NH3}$
この式は、「窒素1molと水素3molが反応すると、アンモニア2molができる」ことを表しています。つまり、この反応に関わる $\ce{N2}$、$\ce{H2}$、$\ce{NH3}$ の物質量の比は、常に
$1:3:2$
に保たれます。これは、反応する量が実際に1mol、3mol、2molのときだけでなく、0.5mol、1.5mol、1molのときも、2mol、6mol、4molのときも、常に比例関係として成り立ちます。
この「係数の比=物質量の比」という関係こそが、化学反応式を使った量的計算の土台になります。質量や気体の体積が与えられたときは、いったんそれらを物質量(mol)に変換し、係数の比を使って他の物質の物質量を求め、最後にまた質量や体積に変換し直す、という流れで計算します。
$\text{質量・体積など} \ \longrightarrow\ \text{物質量(mol)} \ \xrightarrow{\text{係数比}}\ \text{物質量(mol)} \ \longrightarrow\ \text{質量・体積など}$
過不足のある反応(限定反応物)
実際の反応では、2つの反応物がちょうど過不足なく反応するとは限らず、どちらか一方が反応しきれずに余ってしまうことがあります。このとき、先に使い切られてしまう(反応する量を制限する)物質を限定反応物と呼びます。
過不足がある問題を解くときは、次の手順で考えます。
- 与えられている2つの反応物の物質量を、それぞれ求める。
- 化学反応式の係数の比と比較して、どちらの物質が先に無くなるか(限定反応物はどちらか)を判定する。
- 限定反応物の物質量を基準にして、係数の比を使い、生成物の物質量や、余る反応物の量を計算する。
限定反応物の判定は、「それぞれの物質量を、その物質の係数で割った値」を比較するとわかりやすくなります。この値が小さい方の物質が、先に無くなる(限定反応物になる)物質です。
例題
例題1(基本)
問題
次の反応式にしたがって、炭素 $\ce{C}$(原子量12)$3.0\,\mathrm{g}$ を完全に燃焼させた。生成する二酸化炭素 $\ce{CO2}$(分子量44)の質量を求めよ。
$\ce{C + O2 -> CO2}$
解答・解説を見る
まず、炭素の物質量を求めます。$n=\dfrac{w}{M}$ に $w=3.0$、$M=12$ を代入します。
$n_{\ce{C}} = \frac{3.0}{12} = 0.25\,\mathrm{mol}$
反応式の係数を見ると、$\ce{C}$ と $\ce{CO2}$ の係数はどちらも1なので、物質量の比は $1:1$ です。したがって、生成する $\ce{CO2}$ の物質量も $0.25\,\mathrm{mol}$ になります。
$n_{\ce{CO2}} = 0.25\,\mathrm{mol}$
最後に、$\ce{CO2}$ の質量を求めます。$w=nM$ に $n=0.25$、$M=44$ を代入します。
$w = 0.25\times44 = 11\,\mathrm{g}$
答え:11 g
例題2(標準)
問題
次の反応式にしたがって、炭酸カルシウム $\ce{CaCO3}$(式量100)$5.0\,\mathrm{g}$ に十分な量の希塩酸を加えて反応させた。発生する二酸化炭素 $\ce{CO2}$ の、標準状態における体積を求めよ。
$\ce{CaCO3 + 2HCl -> CaCl2 + H2O + CO2}$
解答・解説を見る
まず、炭酸カルシウムの物質量を求めます。$n=\dfrac{w}{M}$ に $w=5.0$、$M=100$ を代入します。
$n_{\ce{CaCO3}} = \frac{5.0}{100} = 0.050\,\mathrm{mol}$
反応式の係数を見ると、$\ce{CaCO3}$ と $\ce{CO2}$ の係数はどちらも1なので、物質量の比は $1:1$ です。「十分な量の希塩酸」とあるので、塩酸が不足することはなく、炭酸カルシウムがすべて反応すると考えられます。したがって、発生する $\ce{CO2}$ の物質量も $0.050\,\mathrm{mol}$ です。
$n_{\ce{CO2}} = 0.050\,\mathrm{mol}$
標準状態における気体の体積は、物質量に $22.4\,\mathrm{L/mol}$ を掛けて求めます。
$V = 0.050\times22.4 = 1.12\,\mathrm{L}$
答え:1.12 L
例題3(応用)
問題
次の反応式にしたがって、窒素 $\ce{N2}$ $1.0\,\mathrm{mol}$ と水素 $\ce{H2}$ $2.0\,\mathrm{mol}$ を反応させ、アンモニア $\ce{NH3}$ を生成させた。反応が完全に進んだとして、生成するアンモニアの物質量と、反応せずに残る気体とその物質量を求めよ。
$\ce{N2 + 3H2 -> 2NH3}$
解答・解説を見る
まず、それぞれの反応物の物質量を、係数で割った値を比較して、どちらが先に無くなる(限定反応物になる)かを判定します。
$\ce{N2}: \frac{1.0}{1} = 1.0,\qquad \ce{H2}: \frac{2.0}{3} \approx 0.67$
この値が小さい方、つまり $\ce{H2}$ の方が先に無くなります。したがって、$\ce{H2}$ が限定反応物です。
限定反応物(H2)を基準に計算する
$\ce{H2}$ が $2.0\,\mathrm{mol}$ すべて反応するとして、係数の比 $\ce{N2}:\ce{H2}:\ce{NH3}=1:3:2$ を使います。
反応した $\ce{N2}$ の物質量は、$\ce{H2}$ との比 $1:3$ を使って、
$2.0\times\frac{1}{3} = \frac{2.0}{3} \approx 0.67\,\mathrm{mol}$
生成する $\ce{NH3}$ の物質量は、$\ce{H2}$ との比 $2:3$ を使って、
$2.0\times\frac{2}{3} = \frac{4.0}{3} \approx 1.3\,\mathrm{mol}$
残る気体の物質量
最初にあった $\ce{N2}$ は $1.0\,\mathrm{mol}$ でしたが、そのうち $\dfrac{2.0}{3}\,\mathrm{mol}$ が反応で使われたので、残る $\ce{N2}$ は、
$1.0-\frac{2.0}{3} = \frac{3.0-2.0}{3} = \frac{1.0}{3} \approx 0.33\,\mathrm{mol}$
答え:生成するアンモニアは約1.3mol。反応せずに残る気体は窒素で、約0.33mol残る。
練習問題
問題
次の反応式にしたがって、亜鉛 $\ce{Zn}$(原子量65)$6.5\,\mathrm{g}$ に十分な量の希硫酸を加えて反応させた。発生する水素 $\ce{H2}$ の、標準状態における体積を求めよ。
$\ce{Zn + H2SO4 -> ZnSO4 + H2}$
答え
$n_{\ce{Zn}}=\dfrac{6.5}{65}=0.10\,\mathrm{mol}$。係数比1:1より $n_{\ce{H2}}=0.10\,\mathrm{mol}$。$V=0.10\times22.4=2.24\,\mathrm{L}$