有機化学 / 炭化水素
頻出解法パターン
パターン1: 構造異性体を数え上げる手順
こんな問題で使う
与えられた分子式について、考えられる構造異性体をすべて書き出す、あるいは何種類あるかを答える問題。
解法の手順
- まず、枝分かれのない直鎖(または一番大きい環)の構造を1つ描く。
- 主鎖(または環)の炭素数を1つ減らし、余った炭素をメチル基などの置換基として結合させる。位置は主鎖の対称性を考えて重複しない範囲ですべて試す。
- 主鎖をさらに短くしながら、置換基を増やす・種類を変えるパターンを網羅する。
- 描いた構造ごとに「もっとも長い炭素鎖(または環)はどこか」を数え直し、既に描いた構造と同じものになっていないか確認する。
- 不飽和結合や環を含む場合は、二重結合・三重結合の位置や、環のサイズと置換基の位置も同様にすべて試す。
具体例
$\ce{C5H12}$ の構造異性体を数える場合、直鎖のn-ペンタンから始め、主鎖を4個(ブタン)に減らしてメチル基を1個つけた2-メチルブタン、主鎖を3個(プロパン)に減らしてメチル基を2個つけた2,2-ジメチルプロパンの、合計3種類が得られる。
パターン2: 一般式から炭化水素の種類を判別する手順
こんな問題で使う
分子式が与えられ、その炭化水素がアルカン・アルケン・アルキン・シクロアルカン・シクロアルケンのどれに分類されるかを判断する問題。
解法の手順
- 分子式の炭素数を $n$ として、水素原子の数を $2n+2$、$2n$、$2n-2$ のどれと比較すべきか計算する。
- 水素数が $2n+2$ ならアルカン(鎖式・飽和)。
- 水素数が $2n$ ならアルケンまたはシクロアルカン(鎖式で二重結合1個、または環式で単結合のみ)のどちらか。
- 水素数が $2n-2$ ならアルキンまたはシクロアルケン(鎖式で三重結合1個、または環式で二重結合1個)のどちらか。
- 「鎖式か環式か」まで分子式だけからは決められないので、その情報が問題文に与えられていないかを確認する。
具体例
$\ce{C6H12}$ は炭素数6で水素数12、$2\times 6=12$ に一致するので、鎖式のアルケンか環式のシクロアルカンのどちらかであると判断できる。
パターン3: 完全燃焼の反応式と量的関係の立て方
こんな問題で使う
炭化水素の完全燃焼にともなう、必要な酸素や生成する二酸化炭素・水の物質量・質量・体積を求める問題。
解法の手順
- 炭化水素の分子式 $\mathrm{C_xH_y}$ から、炭素原子の数だけ $\ce{CO2}$ の係数を、水素原子の数の半分だけ $\ce{H2O}$ の係数を決める。
- 両辺の酸素原子の数をそろえるように $\ce{O2}$ の係数を決める(分数になる場合は反応式全体を整数倍する)。
- 与えられた物質の質量から物質量(mol)を求める。
- 反応式の係数比を使って、求めたい物質の物質量を計算し、必要に応じて質量や体積(標準状態なら $22.4\ \mathrm{L/mol}$)に変換する。
具体例
ブタン $\ce{C4H10}$ の完全燃焼の反応式 $\ce{2C4H10+13O2->8CO2+10H2O}$ より、ブタン $0.1\ \mathrm{mol}$ から生じる水は、係数比 $2:10=1:5$ を使って $0.1\times 5=0.5\ \mathrm{mol}$ と求められる。
パターン4: 付加反応の生成物を決める手順
こんな問題で使う
アルケン・アルキンに、臭素・水素・水・ハロゲン化水素などを反応させたときの生成物を求める問題。
解法の手順
- 二重結合(π結合1本)か三重結合(π結合2本)かを確認する。
- 二重結合には試薬1分子分、三重結合には試薬2分子分が、段階的に付加することを踏まえる。
- 二重結合(または三重結合の1本目)をつくっていた2つの炭素それぞれに、試薬の原子を1個ずつ配置する。
- 生成物の構造式を書き、元の炭素骨格(枝分かれ)がそのまま保たれていることを確認する。
具体例
プロペン $\ce{CH2=CH-CH3}$ に臭素水を反応させると、二重結合の2つの炭素それぞれに臭素原子が1個ずつ付加し、$\ce{CH2Br-CHBr-CH3}$(1,2-ジブロモプロパン)が生成する。
パターン5: シス・トランス異性体の判定手順
こんな問題で使う
与えられたアルケンに、幾何異性体(シス・トランス異性体)が存在するかどうかを判定する問題。
解法の手順
- 二重結合をつくる2つの炭素原子それぞれについて、結合している2つの原子(団)が何かを確認する。
- 両方の炭素で、結合している2つの原子(団)が互いに異なっていれば、シス・トランス異性体が存在する。
- どちらか一方の炭素で、結合している2つの原子(団)が同じであれば、シス・トランス異性体は存在しない。
- 存在する場合は、大きい原子団どうしが同じ側にあるものをシス形、反対側にあるものをトランス形として区別する。
具体例
2-ペンテン $\ce{CH3-CH=CH-CH2CH3}$ は、左の炭素に $\ce{CH3}$ と $\ce{H}$、右の炭素に $\ce{C2H5}$ と $\ce{H}$ が結合しており、どちらも異なる2種類なので、シス-2-ペンテンとトランス-2-ペンテンが存在すると判定できる。
パターン6: 不飽和結合・環の数から水素原子の不足数を読み取る
こんな問題で使う
分子式だけから、その化合物が持つ不飽和結合や環の数(合計)を見積もりたい問題。
解法の手順
- 炭素数 $n$ のアルカンが持つはずの水素原子数 $2n+2$ を計算する。
- 実際の分子式の水素原子数を、$2n+2$ から引き算する。
- その差を2で割った値が、二重結合・三重結合(π結合の本数)・環の合計数(不飽和度)を表す。三重結合は2、二重結合・環はそれぞれ1として数える。
- 得られた不飽和度をもとに、考えられる構造(鎖式で二重結合が何個、環が何個など)を絞り込む。
具体例
$\ce{C4H6}$ の場合、炭素数4のアルカンなら水素は $2\times4+2=10$ 個のはずだが、実際は6個なので差は4、不飽和度は $4\div2=2$。これは三重結合を1個持つアルキン(1-ブチン)、または二重結合を2個持つ化合物、あるいは環と二重結合を1個ずつ持つシクロアルケン(シクロブテンなど)が考えられることを意味する。