有機化学 / 官能基を持つ脂肪族化合物

頻出解法パターン

パターン1: 官能基から化合物の性質を予測する手順

こんな問題で使う

構造式や示性式が与えられた化合物について、どのような反応・性質を持つかを問われる問題。

解法の手順

  1. 分子の中に含まれる官能基($\ce{-OH}$、$\ce{-CHO}$、$\ce{>C=O}$、$\ce{-COOH}$、$\ce{-COO-}$、$\ce{-NH2}$ など)をすべて見つける。
  2. 官能基ごとに決まっている代表的な反応(アルコールならナトリウムとの反応、アルデヒドなら還元性、カルボン酸なら $\ce{NaHCO3}$ との反応など)を思い出す。
  3. 複数の官能基を持つ化合物の場合は、それぞれの官能基について別々に反応を考える。
  4. 問題文の実験結果(気体の発生、沈殿の生成、色の変化など)と、予測した反応を照らし合わせて答えを絞り込む。

具体例

ギ酸は $\ce{-COOH}$ を持つのでカルボン酸の性質(酸性、$\ce{NaHCO3}$ との反応)を示すが、構造の中に $\ce{H-COOH}$ というアルデヒドに似た部分を持つため、銀鏡反応も示すというように、1つの化合物が持つ複数の性質を官能基ごとに整理して予測する。

パターン2: アルコールの酸化生成物を段階的に決定する手順

こんな問題で使う

与えられたアルコールを酸化したときに、何が生成するかを問う問題。

解法の手順

  1. ヒドロキシ基がついた炭素原子に、他の炭素原子が何個結合しているかを数え、第一級・第二級・第三級を判定する。
  2. 第一級なら、まずアルデヒドが生成することを考える。さらに酸化が必要な設定であれば、カルボン酸まで進める。
  3. 第二級なら、ケトンが生成し、そこで酸化が止まることを確認する。
  4. 第三級なら、通常の条件では酸化されないと判断する。
  5. 生成物の構造式を、もとのアルコールの炭素骨格を変えずに、ヒドロキシ基の部分だけをカルボニル基・カルボキシ基に置き換える形で書く。

具体例

2-ブタノール $\ce{CH3-CH2-CH(OH)-CH3}$ は第二級アルコールなので、酸化するとメチルエチルケトン $\ce{CH3-CH2-CO-CH3}$ が生成し、それ以上は酸化されない。

パターン3: 還元性(銀鏡反応・フェーリング液)の有無を判定する手順

こんな問題で使う

与えられた化合物が、銀鏡反応やフェーリング液の還元反応を示すかどうかを判定する問題。

解法の手順

  1. 化合物の構造式を確認し、カルボニル炭素($\ce{C=O}$ の炭素)に水素原子が直接結合しているかを調べる。
  2. 水素原子が結合していれば(アルデヒド、またはギ酸のような例外)、還元性を持ち、銀鏡反応・フェーリング液の還元反応がともに陽性になると判断する。
  3. 水素原子が結合していなければ(ケトン、ギ酸以外の通常のカルボン酸、アルコールなど)、還元性を持たないと判断する。
  4. 実験結果(銀の析出、赤色沈殿の生成)が問題文に与えられている場合は、その逆をたどって化合物の構造を絞り込む。

具体例

未知の化合物 $\ce{C3H6O}$ が銀鏡反応を示した場合、ケトンであるアセトン($\ce{CH3-CO-CH3}$、還元性なし)ではなく、アルデヒドであるプロパナール($\ce{CH3-CH2-CHO}$、還元性あり)であると判断できる。

パターン4: エステル化・加水分解・けん化の量的関係を計算する手順

こんな問題で使う

エステル化、酸による加水分解、けん化にともなう、物質量・質量の関係を求める問題。

解法の手順

  1. 反応式を書き、カルボン酸・アルコール・エステル・水(またはカルボン酸塩)の係数比を確認する(多くの場合、単純なエステル化・けん化は $1:1:1:1$)。
  2. 与えられた物質の質量を、モル質量(分子量・式量)で割って物質量を求める。
  3. 係数比を使って、求めたい物質の物質量を求める。
  4. 必要に応じて、物質量にモル質量をかけて質量に変換する。
  5. けん化の場合は生成物がカルボン酸の「塩」になることを踏まえ、酸そのものではなく塩の物質量・質量を答えていないか確認する。

具体例

酢酸メチル $7.4\ \mathrm{g}$(分子量 $74$、$0.1\ \mathrm{mol}$)を完全にけん化するには、$1:1$ の関係から水酸化ナトリウムも $0.1\ \mathrm{mol}$(式量 $40$ より $4.0\ \mathrm{g}$)必要である。

パターン5: けん化価・ヨウ素価から油脂の構造を推定する手順

こんな問題で使う

けん化価やヨウ素価の値から、油脂を構成する脂肪酸の分子量や不飽和度を推定する問題。

解法の手順

  1. けん化価が「油脂 $1\ \mathrm{g}$ をけん化するのに必要な $\ce{KOH}$ の $\mathrm{mg}$ 数」であることを確認し、$\ce{KOH}$ の物質量(式量 $56$ で割る)を求める。
  2. けん化ではエステル結合1か所につき $\ce{KOH}$ が1分子反応することを使い、油脂 $1\ \mathrm{g}$ あたりのエステル結合(脂肪酸)の物質量を求める。
  3. 「脂肪酸の物質量が多い(けん化価が大きい)ほど、脂肪酸1分子あたりの分子量は小さい」という関係から、脂肪酸の分子量のおおよその大小を判断する。
  4. ヨウ素価が「油脂 $100\ \mathrm{g}$ に付加できるヨウ素の $\mathrm{g}$ 数」であることを確認し、値が大きいほど二重結合(不飽和度)が多いと判断する。

具体例

けん化価が $168$($\ce{KOH}$ の式量 $56$)の油脂 $1\ \mathrm{g}$ には、$168\div56=3\ \mathrm{mmol}$ の $\ce{KOH}$ が反応するので、エステル結合も同じく $3\times10^{-3}\ \mathrm{mol}$ 含まれていると求められる。

パターン6: カルボン酸の酸性の強さを比較する手順

こんな問題で使う

カルボン酸・炭酸・フェノール類・アルコールなど、複数の $\ce{O-H}$ を持つ化合物の酸としての強さを比較する問題。

解法の手順

  1. 比較する化合物の中に、カルボン酸(カルボキシ基)、フェノール類、アルコールがそれぞれ含まれているかを確認する。
  2. 「カルボン酸 > 炭酸 > フェノール類」という強さの順序、およびアルコールはこれらよりもはるかに弱い(ほぼ中性)ことを思い出す。
  3. 実験で区別する場合は、$\ce{NaHCO3}$ 水溶液(炭酸より強い酸だけが反応し気体が発生)や、$\ce{NaOH}$ 水溶液(フェノール類も反応するがアルコールは反応しない)を使い分ける。
  4. 電離後にできる陰イオンの安定性(カルボン酸イオンは負電荷が2つの酸素に分散して安定)という理由もあわせて説明できるようにする。

具体例

酢酸、フェノール、エタノールの混合物に $\ce{NaHCO3}$ 水溶液を加えると、酢酸だけが反応して二酸化炭素を発生する。フェノールとエタノールを区別するには、さらに $\ce{NaOH}$ 水溶液を使い、フェノールだけが反応する(溶ける)ことを確認する。