化学基礎 / 物質の構成

混合物の分離(ろ過・蒸留・再結晶・クロマトグラフィー)

要点整理

混合物から目的の純物質を取り出す操作を分離、分離した物質からさらに不純物を取り除いて純度を高める操作を精製といいます。分離の方法は、物質どうしの「何のちがいを利用するか」によっていくつかの種類に分けられます。

ろ過

ろ過は、液体と、そこに溶けずに混ざっている固体を分けるときに使う操作です。ろ紙の小さな穴を液体だけが通り抜け、固体はろ紙の上に残ることを利用します。砂の混じった水から砂を取り除くときなどに使われます。

蒸留と分留

蒸留は、液体を加熱して沸騰させ、出てきた蒸気を冷やして液体に戻すことで、目的の物質を分離する操作です。たとえば、海水を加熱すると水だけが蒸発し、これを冷やして集めることで、塩分を含まない水(純水)を得ることができます。

液体の混合物の中に、沸点の異なる成分が2種類以上含まれている場合、加熱していくと沸点の低い成分から先に蒸発してきます。この性質を利用して、沸点のちがう液体どうしを順に分離していく操作を、特に分留(分別蒸留)と呼びます。代表的な例が、原油から灯油・軽油・ガソリンなどを取り出す石油の分留や、日本酒などの発酵液を加熱してエタノールと水を分離する操作です。エタノール(沸点 $78\ \mathrm{^\circ C}$)は水(沸点 $100\ \mathrm{^\circ C}$)より沸点が低いため、混合物を加熱すると、先にエタノールを多く含む蒸気が得られます。

再結晶

再結晶は、固体の溶解度が温度によって変化することを利用した分離法です。多くの固体は、温度が高いほど水への溶解度が大きくなります。そこで、目的の物質に少量の不純物が混ざっている固体を、高温の水に完全に溶かしたあと、その水溶液をゆっくり冷やすと、溶解度が下がった分だけ目的の物質が結晶として析出します。不純物は微量しか含まれていないため飽和に達せず、溶液中に溶けたまま残ります。こうして、純度の高い結晶を得ることができます。

温度 $t_1$ における溶解度(溶媒100gあたりに溶ける溶質の最大質量)を $S_1$、冷却後の温度 $t_2$ における溶解度を $S_2$ とすると、水 $W\,\mathrm{g}$ に溶質を溶かした飽和水溶液を $t_1$ から $t_2$ まで冷やしたときに析出する結晶の質量 $w$ は、次のように計算できます。

$w = W\left(1-\frac{S_2+100}{S_1+100}\right)$

これは、「$t_1$ での飽和水溶液 $(S_1+100)\,\mathrm{g}$ 中に含まれる水 $100\,\mathrm{g}$」という比の関係を、実際の水の質量 $W\,\mathrm{g}$ に当てはめて考えたものです(導出は例題1で確認します)。

抽出

抽出は、目的の物質をよく溶かす溶媒を使って、混合物からその物質だけを溶かし出す操作です。たとえば、水に溶けている臭素を、水とは混ざり合わないヘキサンのような有機溶媒を加えて振り混ぜると、臭素はヘキサン層に多く移動します。お茶の葉から茶の成分をお湯で溶かし出す操作も、身近な抽出の例です。

昇華法

固体が液体を経ずに直接気体になる変化を昇華といい、昇華しやすい性質を持つ物質を利用した分離法を昇華法と呼びます。たとえば、ヨウ素や、防虫剤に使われるナフタレンは昇華性を持つため、これらと昇華しない物質(砂など)が混ざっている場合、穏やかに加熱してヨウ素だけを気体にし、冷たい部分で再び固体として集めることで分離できます。

クロマトグラフィー

クロマトグラフィーは、ろ紙などに対する物質の吸着されやすさ(移動しやすさ)のわずかなちがいを利用する分離法です。たとえば、水性ペンのインクをろ紙の端につけ、下端を水に浸すと、水がろ紙をのぼるにつれて、インクに含まれる複数の色素が異なる速さで移動し、色ごとに分離した点(スポット)として現れます。この操作をペーパークロマトグラフィーと呼びます。ごく微量の混合物でも成分を分離・検出できることが特徴です。

分離法のまとめ

分離法 利用する性質のちがい 代表例
ろ過 粒の大きさ(固体と液体) 砂の混じった水から砂を除く
蒸留・分留 沸点 海水から水を得る、石油の精製
再結晶 温度による溶解度 硝酸カリウムの精製
抽出 溶媒への溶けやすさ 茶葉から茶の成分を溶かし出す
昇華法 昇華のしやすさ ヨウ素と砂の分離
クロマトグラフィー ろ紙への吸着されやすさ インクの色素の分離

例題

例題1(基本)

問題

硝酸カリウムは、$60\ \mathrm{^\circ C}$ の水100gに109g、$20\ \mathrm{^\circ C}$ の水100gに32g溶ける(溶解度109、32)。$60\ \mathrm{^\circ C}$ の水100gに硝酸カリウムを溶かしてつくった飽和水溶液を $20\ \mathrm{^\circ C}$ まで冷やすと、何gの結晶が析出するか。

解答・解説を見る

$60\ \mathrm{^\circ C}$ での飽和水溶液は、水100gに硝酸カリウム109gが溶けているので、水溶液全体の質量は $100+109=209\ \mathrm{g}$ です。

この水溶液を $20\ \mathrm{^\circ C}$ まで冷やすと、水100gに対して溶けていられる量が109gから32gまで減るので、その差の分だけ結晶が析出します。水の質量は蒸発しない限り変わらないので、

$109-32 = 77\ \mathrm{g}$

の硝酸カリウムが、水100gあたり析出することになります。今回はちょうど水100gを使っているので、これがそのまま答えになります。

答え:77gの結晶が析出する。

(このとき使った考え方を式にすると、水 $W\,\mathrm{g}$ に対して析出する結晶 $w=\dfrac{W}{100}(S_1-S_2)$ となり、これは要点整理の式 $w=W\left(1-\dfrac{S_2+100}{S_1+100}\right)$ を水の質量に着目して整理したものと一致します。)

例題2(標準)

問題

ミョウバンの溶解度は、$60\ \mathrm{^\circ C}$ で $57$、$20\ \mathrm{^\circ C}$ で $12$ である。$60\ \mathrm{^\circ C}$ の水 $150\,\mathrm{g}$ にミョウバンを溶かして飽和水溶液をつくり、これを $20\ \mathrm{^\circ C}$ まで冷やした。析出する結晶は何gか。

解答・解説を見る

水 $100\,\mathrm{g}$ あたりで考えると、$60\ \mathrm{^\circ C}$ から $20\ \mathrm{^\circ C}$ に冷やしたときに析出する結晶は $57-12=45\ \mathrm{g}$ です。

問題の水の質量は $150\,\mathrm{g}$ なので、比例計算で結晶の析出量を求めます。水 $100\,\mathrm{g}$ あたり $45\,\mathrm{g}$ 析出するので、

$45\times\frac{150}{100} = 67.5\ \mathrm{g}$

答え:67.5gの結晶が析出する。

水の量が「ちょうど100g」でない問題では、このように「水100gあたりの析出量」をいったん求めてから、実際の水の質量に合わせて比例計算する、という手順が使えます。

例題3(応用)

問題

塩化ナトリウムに少量の硝酸カリウムが混ざった固体の混合物がある。硝酸カリウムを再結晶によって分離・精製する方法として適切な操作を選び、その理由を説明せよ。ただし、塩化ナトリウムの溶解度は温度によってほとんど変化しないが、硝酸カリウムの溶解度は温度が下がると大きく減少するものとする。

(ア) 混合物を少量の水に溶かし、そのまま加熱して水を蒸発させる。 (イ) 混合物を高温の水に溶かして飽和水溶液に近づけたあと、冷やして結晶を析出させ、ろ過する。 (ウ) 混合物をろ紙に少量つけ、水を展開させる。

解答・解説を見る

再結晶は「温度による溶解度の変化のちがい」を利用する分離法なので、まず2つの物質の溶解度の温度変化を比較します。

  • 塩化ナトリウム:溶解度が温度によってほとんど変化しない → 冷やしても結晶がほとんど析出しない
  • 硝酸カリウム:溶解度が温度によって大きく変化する(高温でよく溶け、低温では溶けにくい) → 冷やすと結晶が多く析出する

(ア)は水を蒸発させる操作なので、溶けている物質は溶解度に関係なくすべて析出してしまい、塩化ナトリウムと硝酸カリウムが両方とも結晶として出てきてしまうため、分離にはなりません。

(ウ)はクロマトグラフィーの操作であり、ろ紙への吸着されやすさのちがいを利用するものなので、今回の「温度による溶解度のちがい」を利用する目的には合いません。

(イ)のように、高温で溶かしたあと冷やすと、溶解度が大きく下がる硝酸カリウムだけが結晶として析出し、溶解度がほとんど変わらない塩化ナトリウムは溶けたままになります。これをろ過すれば、純度の高い硝酸カリウムの結晶を、ろ紙の上に取り出すことができます。

答え:(イ)。硝酸カリウムは温度が下がると溶解度が大きく減少するため冷却すると結晶として析出するが、塩化ナトリウムは溶解度がほとんど変化しないため溶けたまま残る。この差を利用して、冷却・ろ過により硝酸カリウムだけを結晶として分離できるから。

練習問題

問題

次の(1)〜(3)の分離操作は、それぞれ何と呼ばれる分離法か答えよ。

(1) 原油を加熱し、沸点の低い成分から順にガソリン・灯油・軽油などを取り出す。 (2) ヨウ素と塩化ナトリウムの混合物を穏やかに加熱し、ヨウ素の気体だけを冷たい容器のふたの裏に固体として集める。 (3) 水に溶けたヨウ素を、ヘキサンを加えて振り混ぜることでヘキサン層に移す。

答え

(1) 分留(分別蒸留) (2) 昇華法 (3) 抽出