無機化学 / 非金属元素

炭素・ケイ素とその化合物

要点整理

炭素の同素体

炭素の同素体は、原子どうしの結合の仕方の違いによって、性質が大きく異なることを示す好例です。

同素体 結合の様子 性質
ダイヤモンド 各C原子が4個の価電子すべてを使い、正四面体状に共有結合(sp3)して立体網目構造をつくる 非常に硬い(天然物質中最高の硬度)。電気を通さない(すべての価電子が結合に使われ自由電子がない)
黒鉛(グラファイト) 各C原子が3個の価電子で平面状の正六角形網目(sp2)をつくり、その層が弱いファンデルワールス力で積み重なる やわらかく薄くはがれやすい(潤滑剤・鉛筆の芯)。電気をよく通す(結合に使われず余った電子が層内を自由に動けるため)
フラーレン($\mathrm{C_{60}}$ など) 炭素原子がサッカーボール状の球形分子を作る 分子結晶。有機溶媒に溶けるなど、共有結合結晶とは異なる性質を示す

ダイヤモンドと黒鉛はどちらも炭素原子だけからなる共有結合結晶ですが、電気伝導性が正反対になる点が重要です。これは、黒鉛では各炭素原子が持つ4個の価電子のうち3個だけが共有結合に使われ、残り1個が結合に使われずに層全体を自由に動き回れる(金属の自由電子に似たはたらきをする)ためです。

二酸化炭素 CO2 の製法と性質

石灰石(主成分 $\mathrm{CaCO_3}$)に塩酸を加えると、二酸化炭素が発生します。

$\ce{CaCO3 + 2HCl -> CaCl2 + H2O + CO2 ^}$

これも、強酸(塩酸)が弱酸(炭酸)を追い出す反応です。炭酸は水と二酸化炭素にすぐ分解してしまう不安定な酸なので、実際には気体として発生します。

二酸化炭素は無色・無臭で、空気より重く、水に少し溶けて弱酸性(炭酸)を示します。密度が大きいことを利用して下方置換で捕集するのが一般的です。石灰水(水酸化カルシウム水溶液)に通すと白濁するのは、次の反応で水に溶けにくい炭酸カルシウムの沈殿が生じるためで、二酸化炭素の検出反応として広く使われます。

$\ce{Ca(OH)2 + CO2 -> CaCO3 v + H2O}$

ここでさらに二酸化炭素を通し続けると、いったん白濁した液が再び透明になります。これは炭酸カルシウムが、水に溶けやすい炭酸水素カルシウムに変化するためです。

$\ce{CaCO3 + CO2 + H2O -> Ca(HCO3)2}$

この反応は鍾乳洞の形成にも関わっており、続く典型金属元素の単元(アルカリ土類金属)でも硬水・軟水の話とあわせて再び登場します。

なお、酸素が不足した状態で炭素を不完全燃焼させると、有毒な一酸化炭素 $\mathrm{CO}$ が生じます。一酸化炭素は強い還元剤としてもはたらき、製鉄では鉄鉱石(酸化鉄)から酸素を奪って鉄の単体を得るのに利用されます。

$\ce{Fe2O3 + 3CO -> 2Fe + 3CO2}$

ケイ素 Si の性質と製法

ケイ素はダイヤモンドと同じ共有結合結晶の構造を持ち、天然にはケイ酸塩や二酸化ケイ素として広く存在しますが、単体としては存在しません。半導体としての性質を持ち、コンピュータ用のICチップや太陽電池に利用されています。

工業的には、二酸化ケイ素(ケイ砂)をコークス(炭素)とともに電気炉で強熱し、還元することで単体のケイ素を得ます。

$\ce{SiO2 + 2C -> Si + 2CO}$

この反応は、二酸化ケイ素中のケイ素原子の酸化数が $+4$ から単体の $0$ へと減少する還元反応であり、炭素が還元剤としてはたらいています(炭素自身は $0 \to +2$ に酸化されて一酸化炭素になります)。

二酸化ケイ素 SiO2 とその利用

二酸化ケイ素は、水晶や石英の主成分で、ケイ素原子1個のまわりに酸素原子4個が正四面体状に結びつき、それが立体的に無数につながった共有結合結晶です。融点が非常に高く、硬く、酸(フッ化水素酸を除く)にはほとんど溶けません。

$\ce{SiO2 + 4HF -> SiF4 + 2H2O}$

(前の単元で学んだように、この反応のためフッ化水素酸はガラス容器で保存できません。)

二酸化ケイ素は酸性酸化物であるため、高温で強い塩基と反応してケイ酸塩をつくります。

$\ce{SiO2 + 2NaOH -> Na2SiO3 + H2O}$

これは化学基礎で学んだ「酸性酸化物+塩基 → 塩+水」という反応パターンそのものです。

ガラスと水ガラス

ソーダ石灰ガラス(一般的な窓ガラス)は、二酸化ケイ素(ケイ砂)、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウムを混ぜて高温で融解させてつくります。おおまかには次のような反応が起きています。

$\ce{SiO2 + Na2CO3 -> Na2SiO3 + CO2 ^}$

ケイ酸ナトリウム $\mathrm{Na_2SiO_3}$ に水を加えて加熱すると、粘性の大きい液体である水ガラスが得られます。水ガラスに塩酸などの酸を加えると、ケイ酸(オルトケイ酸に近い組成 $\mathrm{H_2SiO_3}$)の白色ゲル状沈殿が生じます。

$\ce{Na2SiO3 + 2HCl -> H2SiO3 v + 2NaCl}$

このケイ酸のゲルを乾燥させると、多孔質のシリカゲルが得られます。シリカゲルは表面積が非常に大きく、水分子を吸着しやすいため、乾燥剤として広く利用されています。

例題

例題1(基本)

問題

ダイヤモンドは電気を通さないが、同じ炭素の同素体である黒鉛は電気をよく通す。この違いが生じる理由を、価電子の使われ方の違いから説明せよ。

解答・解説を見る

ダイヤモンドでは、各炭素原子の4個の価電子すべてが、隣接する4個の炭素原子との共有結合に使われており、結晶内を自由に動ける電子が存在しません。一方、黒鉛では各炭素原子の4個の価電子のうち3個だけが平面状の共有結合(六角形網目構造)に使われ、残りの1個の電子は結合に使われず、層全体にわたって自由に動くことができます。この自由に動ける電子が電気伝導を担うため、黒鉛は電気をよく通します。

答え:ダイヤモンドは全価電子が共有結合に使われ自由電子がないため電気を通さない。黒鉛は価電子の1個が結合に使われず層内を自由に動けるため、電気をよく通す。

例題2(標準)

問題

石灰水に二酸化炭素を通すと白く濁るが、さらに二酸化炭素を通し続けると再び透明になる。この2つの変化をそれぞれ化学反応式で示せ。

解答・解説を見る

白濁する反応

$\ce{Ca(OH)2 + CO2 -> CaCO3 v + H2O}$

水に溶けにくい炭酸カルシウムの白色沈殿が生じるため、白く濁ります。

再び透明になる反応

$\ce{CaCO3 + CO2 + H2O -> Ca(HCO3)2}$

炭酸カルシウムが、水に溶けやすい炭酸水素カルシウムに変化するため、沈殿が消えて透明に戻ります。

答え:Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3↓ + H2O(白濁)、CaCO3 + CO2 + H2O → Ca(HCO3)2(透明化)

例題3(応用)

問題

工業的にケイ素の単体を製造する反応式を書き、この反応が酸化還元反応であることを、ケイ素原子と炭素原子それぞれの酸化数の変化から説明せよ。

解答・解説を見る

$\ce{SiO2 + 2C -> Si + 2CO}$

$\mathrm{SiO_2}$ 中のケイ素原子の酸化数は $+4$ ですが、単体のケイ素になると酸化数は $0$ になり、還元されています。一方、炭素の酸化数は単体の $0$ から一酸化炭素中の $+2$ へと増加しており、酸化されています。炭素がケイ素より酸素との親和性が強いために、二酸化ケイ素から酸素を奪う還元剤としてはたらいていると理解できます。

答え:Siの酸化数は+4→0(還元)、Cの酸化数は0→+2(酸化)と変化しており、炭素が還元剤としてはたらく酸化還元反応である。

練習問題

問題

次の(1)〜(3)に答えよ。

(1) 二酸化ケイ素が塩酸には溶けないが、フッ化水素酸には溶ける理由を化学反応式とともに説明する必要はない。この反応式のみを書け。

(2) 水ガラスに塩酸を加えると白色のゲル状沈殿が生じる。この沈殿の名称と化学反応式を答えよ。

(3) シリカゲルが乾燥剤として利用される理由を、その構造の特徴から述べよ。

答え

(1) $\ce{SiO2 + 4HF -> SiF4 + 2H2O}$

(2) 名称:ケイ酸。反応式:$\ce{Na2SiO3 + 2HCl -> H2SiO3 + 2NaCl}$

(3) シリカゲルは表面積が非常に大きい多孔質構造をしており、表面に水分子を吸着しやすいため。