無機化学 / 無機物質の分析

よくある間違い

間違い1: 捕集法を「におい」や「毒性」で判断してしまう

よくある誤答例

「Cl2は有毒だから下方置換」のように、気体の性質と関係のない理由で捕集法を判断してしまう。

なぜ間違いなのか

捕集法を決めるのは、あくまで「水への溶けやすさ」と「空気に対する密度の大小」の2つだけです。毒性や色、におい自体は捕集法の判断基準にはなりません。

正しい考え方

まず「水に溶けにくいか」を確認し、溶けにくければ水上置換。水に溶けやすい場合だけ、次に「空気より軽いか重いか」を確認し、軽ければ上方置換、重ければ下方置換、という2段階の手順を毎回踏みましょう。

間違い2: CO2は必ず下方置換だと思い込む

よくある誤答例

CO2は空気より重いから下方置換で集めるものだと決めつけ、水上置換という選択肢があることを知らない。

なぜ間違いなのか

CO2は水に少ししか溶けないため、水上置換でも十分に捕集できます。密度が大きいことから下方置換も可能ですが、水上置換の方がより純粋な気体を集められるという利点があります。

正しい考え方

「水にほとんど溶けない、または少ししか溶けない気体は、密度に関係なく水上置換が使える」という原則を思い出しましょう。CO2はこの原則にあてはまる気体です。

間違い3: 塩化カルシウムはどんな気体にも使える中性の乾燥剤だと思い込む

よくある誤答例

塩化カルシウムは中性だから、酸性・塩基性を問わずどんな気体の乾燥にも使えると考えてしまう。

なぜ間違いなのか

塩化カルシウムは中性の乾燥剤としてよく使われますが、唯一の例外としてアンモニアとは付加化合物$\ce{CaCl2.8NH3}$をつくって反応してしまうため、アンモニアの乾燥には使えません。

正しい考え方

「中性の乾燥剤=万能」ではなく、「塩化カルシウムはNH3の乾燥には使えない」という例外を単独の知識として覚えておきましょう。NH3を乾燥できるのはソーダ石灰だけです。

間違い4: 濃硫酸はすべての酸性の気体を乾燥できると思い込む

よくある誤答例

濃硫酸は酸性の乾燥剤だから、H2Sのような酸性の気体もまとめて乾燥できると考えてしまう。

なぜ間違いなのか

濃硫酸は酸性であると同時に強い酸化剤でもあります。H2Sは還元性が強い気体であるため、濃硫酸に触れると酸化されてしまい、乾燥剤としての役割を果たせません。

正しい考え方

乾燥剤を選ぶときは「酸性・塩基性が合っているか」だけでなく、「酸化還元反応が起こらないか」も確認する必要があります。H2Sのように還元性の強い気体には、酸化力を持たない中性の乾燥剤(塩化カルシウムなど)を使いましょう。

間違い5: 硫化水素で沈殿するかどうかを、金属イオンの種類だけで判断してしまう

よくある誤答例

「Zn2+は硫化水素と反応してZnSの沈殿をつくる」と、液性(酸性か中性・塩基性か)を考えずに一律に暗記してしまう。

なぜ間違いなのか

ZnSが沈殿するかどうかは、溶液のpHによって大きく変わります。酸性条件ではS2-の濃度が低すぎてZnSは沈殿できませんが、中性~塩基性条件ではS2-濃度が上がり沈殿できるようになります。CuSやPbSのように溶解度積が極めて小さい硫化物だけが、酸性条件でも沈殿できる例外です。

正しい考え方

「その硫化物が、酸性・中性のどちらの条件で沈殿するか」を必ずセットで覚えましょう。目安として、CuS・PbS・Ag2Sなどは酸性でも沈殿し、ZnS・FeSなどは中性~塩基性でなければ沈殿しないと整理できます。

間違い6: 白色沈殿はすべて同じ性質を持つと思い込む

よくある誤答例

AgCl、BaSO4、CaCO3はどれも「白い沈殿」という理由だけで、性質も同じだと考えてしまう。

なぜ間違いなのか

見た目の色が同じでも、酸を加えたときの反応はまったく異なります。AgClとBaSO4は希塩酸・希硝酸を加えても溶けませんが、CaCO3は酸を加えると気体を発生しながら溶けます。

正しい考え方

白色沈殿を見分けるときは、色だけでなく「希塩酸(希硝酸)を加えたときに変化するかどうか」を必ず確認しましょう。炭酸塩(CaCO3など)は弱酸の塩なので強酸を加えると分解しますが、AgClやBaSO4は非常に安定なので変化しません。

間違い7: 炭酸カルシウムに塩酸を加えたときの気体をCOと間違える

よくある誤答例

炭酸カルシウムに塩酸を加えて発生する気体を、一酸化炭素COだと勘違いしてしまう。

なぜ間違いなのか

「炭酸」という名前や化学式の中の「C」という文字だけを見て、COを連想してしまうことが原因です。

正しい考え方

炭酸カルシウムは弱酸である炭酸$\ce{H2CO3}$の塩であり、強酸を加えることで遊離した炭酸が分解してできる気体は、あくまで二酸化炭素CO2です。反応式$\ce{CaCO3 + 2HCl -> CaCl2 + H2O + CO2 ^}$を書けば、Cが1個・Oが2個の生成物であることは一目瞭然です。反応式を書かずに名称だけで判断しようとすると、この間違いが起こりやすくなります。