化学基礎 / 物質の構成
電子配置と周期表
要点整理
電子殻
原子核のまわりに存在する電子は、原子核からの距離に応じて、いくつかの層に分かれて存在しています。この層を電子殻といい、原子核に近い方から順に、**K殻・L殻・M殻・N殻…**という名前がつけられています。
それぞれの電子殻に入ることができる電子の最大数は決まっており、内側から $n=1, 2, 3,\dots$ 番目の電子殻(K殻が $n=1$、L殻が $n=2$、M殻が $n=3$)には、最大で
$2n^2\ \text{個}$
の電子が入ることができます。この式から、K殻には最大2個、L殻には最大8個、M殻には最大18個の電子が入れることがわかります。
| 電子殻 | $n$ | 最大収容電子数($2n^2$) |
|---|---|---|
| K殻 | 1 | 2 |
| L殻 | 2 | 8 |
| M殻 | 3 | 18 |
電子は、原則として内側の電子殻から順に埋まっていきます(ただし、原子番号が大きくなると例外も現れますが、高校化学基礎の範囲では原子番号1〜20程度までを中心に扱うため、内側から順に埋めていく考え方でほぼ対応できます)。
電子配置の書き方
原子番号1〜20程度の原子について、電子が各電子殻に何個ずつ入っているかを示したものを電子配置といい、内側の殻から順に電子の数を書き並べて表します。
たとえば、原子番号11のナトリウム原子は電子を11個持っており、K殻に2個、L殻に8個(満杯)、残りの $11-2-8=1$ 個がM殻に入るので、電子配置は「K殻2、L殻8、M殻1」となります。
| 元素 | 原子番号 | K殻 | L殻 | M殻 |
|---|---|---|---|---|
| H | 1 | 1 | – | – |
| He | 2 | 2 | – | – |
| Li | 3 | 2 | 1 | – |
| C | 6 | 2 | 4 | – |
| O | 8 | 2 | 6 | – |
| Ne | 10 | 2 | 8 | – |
| Na | 11 | 2 | 8 | 1 |
| Cl | 17 | 2 | 8 | 7 |
| Ar | 18 | 2 | 8 | 8 |
価電子と閉殻
原子の最も外側の電子殻(最外殻)に入っている電子は、化学結合や反応において重要な役割を果たすため、これを価電子と呼びます。価電子の数が同じ原子どうしは、化学的な性質が似る傾向があります。
ただし、ヘリウム・ネオン・アルゴンなどの貴ガス(希ガス)は例外です。これらの原子は、最外殻がちょうど最大数の電子で満たされた閉殻という非常に安定な状態になっており、他の原子と結合をつくりにくいため、価電子の数は「0」として扱います。
周期表との対応
周期表の横の行を周期、縦の列を族と呼びます。
- 周期:同じ周期の元素は、電子が入っている電子殻の数(最も外側の電子殻の番号 $n$)が同じです。たとえば第3周期の元素(Na〜Ar)は、いずれも電子がM殻まで入っています。
- 族:1族・2族と13〜18族に属する元素(典型元素)では、同じ族の元素は価電子の数が同じになる傾向があり、そのため化学的性質もよく似ます。1族(水素を除く)は価電子1個、2族は価電子2個、13族は価電子3個、というように、13〜17族では「族番号の一の位」がそのまま価電子の数に対応します。18族(貴ガス)は最外殻が閉殻のため、価電子は0個として扱います。
| 族 | 価電子の数 | 元素の例 |
|---|---|---|
| 1族(水素以外) | 1 | Li, Na, K |
| 2族 | 2 | Be, Mg, Ca |
| 13族 | 3 | B, Al |
| 14族 | 4 | C, Si |
| 15族 | 5 | N, P |
| 16族 | 6 | O, S |
| 17族 | 7 | F, Cl |
| 18族 | 0(閉殻) | He, Ne, Ar |
このように、周期表は「電子配置の規則性」をもとに元素を並べた表になっており、縦・横の位置を見るだけで、その元素のおおよその電子配置や化学的性質を推測することができます。
例題
例題1(基本)
問題
原子番号15のリン原子について、電子配置(各電子殻に入っている電子の数)を求めよ。また、価電子の数を答えよ。
解答・解説を見る
電子は内側の電子殻から順に、最大収容数($2n^2$)まで詰めていきます。
K殻の最大数は2個なので、まずK殻に2個入れます。残りは $15-2=13$ 個です。
L殻の最大数は8個なので、次にL殻に8個入れます。残りは $13-8=5$ 個です。
残った5個は、その外側のM殻に入ります。M殻の最大数は18個なので、5個はすべてM殻に収まります。
したがって、電子配置は「K殻2、L殻8、M殻5」です。
最外殻であるM殻に入っている電子の数がそのまま価電子の数になるので、価電子の数は5個です。
答え:電子配置はK殻2・L殻8・M殻5、価電子の数は5個
例題2(標準)
問題
次の(a)〜(d)の原子のうち、化学的性質が似ていると考えられる組を1組選び、その理由を電子配置の観点から説明せよ。
(a) 原子番号3のリチウム (b) 原子番号6の炭素 (c) 原子番号11のナトリウム (d) 原子番号17の塩素
解答・解説を見る
それぞれの電子配置と価電子の数を求めます。
- (a) リチウム(原子番号3):K殻2、L殻1 → 価電子1個
- (b) 炭素(原子番号6):K殻2、L殻4 → 価電子4個
- (c) ナトリウム(原子番号11):K殻2、L殻8、M殻1 → 価電子1個
- (d) 塩素(原子番号17):K殻2、L殻8、M殻7 → 価電子7個
化学的性質は、最外殻に入っている価電子の数によって大きく決まります。(a)リチウムと(c)ナトリウムは、電子が入っている電子殻の数(周期)は異なりますが、どちらも最外殻の電子(価電子)が1個であるという共通点があります。
答え:(a)と(c)。どちらも価電子の数が1個であり(リチウムは最外殻のL殻に1個、ナトリウムは最外殻のM殻に1個)、価電子の数が等しい原子どうしは化学的性質が似る傾向があるから。
例題3(応用)
問題
原子番号1〜20の元素の中から、次の(1)〜(3)の条件をすべて満たす元素を1つ選び、元素記号と原子番号を答えよ。
(1) 電子は3つの電子殻(K殻・L殻・M殻)に分かれて入っている。 (2) 最外殻(M殻)に入っている電子の数は2個である。 (3) 貴ガス(希ガス)ではない。
解答・解説を見る
条件(1)から、この原子はK殻・L殻・M殻の3つの電子殻に電子を持つので、K殻(最大2個)とL殻(最大8個)は満杯になっていると考えられます。K殻とL殻だけで電子は $2+8=10$ 個です。
条件(2)から、M殻には2個の電子が入っているので、電子の総数は、
$10+2 = 12$
電子の総数と陽子の数(原子番号)は等しいので、この原子の原子番号は12です。これはマグネシウム $\ce{Mg}$ の原子番号です。
条件(3)についても確認すると、マグネシウムは2族の典型元素であり貴ガスではないので、すべての条件を満たします。
答え:マグネシウム(Mg)、原子番号12
練習問題
問題
原子番号19のカリウム原子の電子配置(各電子殻の電子の数)と、価電子の数を求めよ。
答え
K殻2、L殻8、M殻8、N殻1(合計 $2+8+8+1=19$)。価電子の数は1個。