無機化学 / 典型金属元素
アルカリ土類金属
要点整理
アルカリ土類金属の範囲と反応性
高校化学では、周期表2族のうちベリリウム Be とマグネシウム Mg を除いた、カルシウム Ca、ストロンチウム Sr、バリウム Ba、ラジウム Ra をアルカリ土類金属と呼びます(Be・Mgはこれらと性質がやや異なるため、慣習的に区別されています)。アルカリ土類金属は最外殻電子を2個持ち、これを2個とも放出して2価の陽イオンになりやすいという共通の性質があります。
アルカリ金属と同様に、アルカリ土類金属も常温の水と反応して水素を発生しますが、反応性はアルカリ金属ほど激しくありません(2個の電子を放出する必要がある分、1価の陽イオンになるアルカリ金属よりもイオン化エネルギーの合計が大きいためです)。
$\ce{Ca + 2H2O -> Ca(OH)2 + H2 ^}$
カルシウムの酸化数は $0 \to +2$(酸化)、水分子中の水素の酸化数は $+1 \to 0$(還元)へと変化する酸化還元反応である点は、アルカリ金属の場合と同じです。
なお、Mgは常温の水とはほとんど反応しませんが、高温の水蒸気とは反応して水素を発生します。この反応性の違いも、Be・Mgがアルカリ土類金属から除外して扱われる理由の一つです。
石灰石・生石灰・消石灰の関係
カルシウムに関する重要な3つの化合物、炭酸カルシウム(石灰石)、酸化カルシウム(生石灰)、水酸化カルシウム(消石灰)は、それぞれ次の反応でつながっています。
$\ce{CaCO3 ->[\text{強熱}] CaO + CO2 ^}$
石灰石を高温で強く熱すると、二酸化炭素を放出して酸化カルシウム(生石灰)になります。
$\ce{CaO + H2O -> Ca(OH)2}$
生石灰に水を加えると、大量の熱を発生しながら水酸化カルシウム(消石灰)になります(この発熱反応は乾燥剤や発熱剤としても利用されます)。
$\ce{Ca(OH)2 + CO2 -> CaCO3 v + H2O}$
消石灰の水溶液(石灰水)に二酸化炭素を通じると、再び炭酸カルシウムの白色沈殿が生じます。これは、炭素・ケイ素の単元で学んだ二酸化炭素の検出反応と同じものです。この3つの物質は「強熱→CO2が抜ける」「水を加える→水酸化物になる」「CO2を吸う→炭酸塩に戻る」という一つの循環としてまとめて理解しておくと、混乱せずに覚えられます。
さらに石灰水に二酸化炭素を通し続けると、いったん生じた白濁が消えて透明になります。
$\ce{CaCO3 + CO2 + H2O -> Ca(HCO3)2}$
水に溶けにくい炭酸カルシウムが、水に溶けやすい炭酸水素カルシウムに変化するためです。この反応は次に説明する硬水の性質や、鍾乳洞の形成にも関わっています。
硬水と軟水
水に溶けているカルシウムイオンやマグネシウムイオンの量が多い水を硬水、少ない水を軟水といいます。硬水は石けんと反応して不溶性の塩(脂肪酸カルシウムなど)をつくってしまうため泡立ちが悪く、加熱すると配管などに $\mathrm{CaCO_3}$ の scale(スケール)が付着することがあります。
硬水の原因物質によって、性質の異なる2種類に分けられます。
- 一時硬水:炭酸水素カルシウム $\mathrm{Ca(HCO_3)_2}$ が主な原因。煮沸すると、次の反応で水に溶けにくい炭酸カルシウムとして沈殿するため、硬度が下がる(軟化する)。
$\ce{Ca(HCO3)2 ->[\text{加熱}] CaCO3 v + H2O + CO2 ^}$
- 永久硬水:硫酸カルシウム $\mathrm{CaSO_4}$ などが主な原因。これらは加熱しても分解や沈殿が起こらないため、煮沸しても軟化しない。
一時硬水の名前の由来は「加熱という一時的な操作で硬度を取り除ける」という意味であり、逆に永久硬水は簡単な操作では軟化できないことを表しています。
バリウム化合物
硫酸バリウム $\mathrm{BaSO_4}$ は水にも酸にもきわめて溶けにくい白色の沈殿で、硫酸イオンの検出反応に利用されます。
$\ce{BaCl2 + Na2SO4 -> BaSO4 v + 2NaCl}$
バリウムイオン自体は本来毒性がありますが、硫酸バリウムは非常に溶けにくく体内にほとんど吸収されないため、X線撮影の造影剤(バリウム検査)として安全に利用することができます。
炎色反応(アルカリ土類金属)
前の単元(アルカリ金属)の表で確認したように、Ca・Sr・Baはいずれも特有の炎色反応を示します。
| 元素 | 炎色 |
|---|---|
| Ca(カルシウム) | 橙赤色 |
| Sr(ストロンチウム) | 紅色(深赤色) |
| Ba(バリウム) | 黄緑色 |
Be・Mgが炎色反応を示さないことも、これらをアルカリ土類金属から除外して扱う理由の一つになっています。
例題
例題1(基本)
問題
石灰石を強く加熱すると気体を発生しながら生石灰になった。この生石灰に水を加えると消石灰になる。この2段階の変化をそれぞれ化学反応式で示せ。
解答・解説を見る
$\ce{CaCO3 -> CaO + CO2}$
$\ce{CaO + H2O -> Ca(OH)2}$
答え:CaCO3 → CaO + CO2、CaO + H2O → Ca(OH)2
例題2(標準)
問題
ある地域の水道水を煮沸すると白い沈殿が生じ、それ以降は煮沸しても軟らかい水になった。この水に含まれていたと考えられる物質は何か。また、この沈殿が生じる反応を化学反応式で示せ。
解答・解説を見る
煮沸によって軟化することから、この水は一時硬水であり、原因物質は炭酸水素カルシウム $\mathrm{Ca(HCO_3)_2}$ であったと考えられる。加熱によって次のように分解し、水に溶けにくい炭酸カルシウムの沈殿が生じたため、水中のカルシウムイオンの濃度が下がり軟化した。
$\ce{Ca(HCO3)2 -> CaCO3 v + H2O + CO2}$
答え:炭酸水素カルシウムCa(HCO3)2。反応式:Ca(HCO3)2 → CaCO3↓ + H2O + CO2
例題3(応用)
問題
硫酸バリウムはX線撮影の造影剤として体内に投与されることがある。バリウムイオンには本来毒性があるにもかかわらず、硫酸バリウムが安全に使用できる理由を、その溶解性の観点から説明せよ。
解答・解説を見る
硫酸バリウムは水にも胃液などの酸にもきわめて溶けにくい物質である。そのため、体内に取り込まれてもバリウムイオン $\mathrm{Ba^{2+}}$ としてほとんど溶け出さず、消化管に吸収されることなくそのまま排出される。毒性はあくまで水に溶けてイオン化したバリウムイオンによるものであり、溶解度が極めて小さい硫酸バリウムの形であれば、体内でイオンとして作用しないため安全に使用できる。
答え:硫酸バリウムは水や体液にきわめて溶けにくく、バリウムイオンとして体内にほとんど吸収されないため、毒性を発揮せず安全に使用できる。
練習問題
問題
次の(1)〜(3)に答えよ。
(1) アルカリ土類金属の炎色反応の色を、Ca・Sr・Baについてそれぞれ答えよ。
(2) 硫酸イオンの検出に用いられる反応を、塩化バリウム水溶液を用いて化学反応式で示せ。
(3) 「一時硬水」という名称の由来を簡潔に説明せよ。
答え
(1) Ca:橙赤色、Sr:紅色(深赤色)、Ba:黄緑色
(2) $\ce{BaCl2 + Na2SO4 -> BaSO4 + 2NaCl}$
(3) 煮沸という一時的な操作によって炭酸カルシウムの沈殿が生じ、硬度を取り除く(軟化させる)ことができるため。