有機化学 / 有機化合物の構造決定

頻出解法パターン

パターン1: 元素分析から分子式を決める手順

こんな問題で使う

有機化合物を完全燃焼させたときの $\ce{CO2}$、$\ce{H2O}$ の質量(または質量パーセント組成)と分子量が与えられ、分子式を求めさせる問題。

解法の手順

  1. $\ce{CO2}$ の質量に $\dfrac{12}{44}$ をかけて炭素の質量を、$\ce{H2O}$ の質量に $\dfrac{2}{18}$ をかけて水素の質量を求める。
  2. 試料の質量から炭素・水素の質量を引いて、酸素の質量を(差として)求める。
  3. それぞれの質量を原子量で割って物質量に直し、最も簡単な整数比を求めて組成式を決める。
  4. 組成式の式量と、与えられた分子量を比較し、その倍数($n$)を求めて分子式を決める。

具体例

$\ce{CO2}$ 66.0mg、$\ce{H2O}$ 27.0mgが生じ、試料が29.0mg、分子量58のとき、C:H:O=3:6:1(組成式 $\ce{C3H6O}$、式量58)となり、分子量58は式量58と一致するので分子式は $\ce{C3H6O}$ と決まる。

パターン2: 不飽和度から可能な構造を絞り込む

こんな問題で使う

分子式が決まったあと、考えられる構造(環・二重結合・三重結合の数)を絞り込む問題。

解法の手順

  1. 分子式 $\ce{C_cH_hO_oN_n}$ から、不飽和度 $U=\dfrac{2c+2+n-h}{2}$ を計算する(酸素数は使わない)。
  2. $U=0$ なら、環も多重結合もない飽和の鎖式構造だと判断する。
  3. $U=1$ なら、環1個または二重結合(C=CまたはC=O)1個のどちらかがあると判断する。
  4. $U=2$ 以上なら、環・二重結合の組み合わせ、または三重結合の存在を候補として考える。

具体例

分子式 $\ce{C4H8O}$ の不飽和度は $U=\dfrac{2\times4+2-8}{2}=1$ なので、環が1個か、C=CまたはC=Oが1個のいずれかの構造(例:ブタノン、あるいはシクロブタノールなど)が候補になる。

パターン3: 官能基検出反応の結果を一覧化して消去法で構造を絞り込む

こんな問題で使う

複数の検出反応(銀鏡反応、ヨードホルム反応、ナトリウムとの反応など)の陽性・陰性の結果が与えられ、構造を1つに決めさせる問題。

解法の手順

  1. 分子式・不飽和度から、考えられる構造異性体をすべて書き出す。
  2. 各検出反応が何を検出するもの(ホルミル基、$\ce{CH3-CO-}$構造、ヒドロキシ基など)かを確認する。
  3. 陽性だった反応に対応する構造をもたない候補を消去する。
  4. 陰性だった反応に対応する構造をもつ候補も消去する。
  5. 最後まで残った候補を答えとする。

具体例

分子式 $\ce{C3H6O}$ の候補(アセトン、プロパナール)のうち、ヨードホルム反応が陽性であればアセトン($\ce{CH3-CO-CH3}$)、銀鏡反応が陽性であればプロパナール($\ce{CH3CH2CHO}$)と判断できる。

パターン4: エステルの加水分解生成物から元のエステルの構造を逆算する

こんな問題で使う

エステルを加水分解(またはけん化)した結果得られたカルボン酸(塩)とアルコールの情報から、元のエステルの構造を求めさせる問題。

解法の手順

  1. 加水分解(けん化)反応の一般式 $\ce{RCOOR' + H2O -> RCOOH + R'OH}$(けん化なら $\ce{RCOOR' + NaOH -> RCOONa + R'OH}$)を思い出す。
  2. 得られたカルボン酸(またはその塩)の構造から、$R$-COOH の部分を特定する。
  3. 得られたアルコールの構造から、$R'$-OH の部分を特定する。
  4. $R$-CO-O-$R'$ の形に組み立てて、元のエステルの構造式を書く。

具体例

けん化して酢酸ナトリウムとエタノールが得られたなら、元のエステルは $\ce{CH3-CO-O-C2H5}$(酢酸エチル)であると逆算できる。

パターン5: 分子式が同じでも異性体が複数あるときに追加の実験事実で一意に決定する

こんな問題で使う

分子式・不飽和度・官能基の種類まで絞り込んでも、なお複数の構造異性体が候補として残ってしまう問題。

解法の手順

  1. 残っている候補の構造式をすべて書き出す。
  2. 問題文にある追加の実験事実(炭素骨格に枝分かれがあるか、対称な構造か、酸化生成物の種類など)を1つずつ確認する。
  3. その事実に矛盾する候補を消去する。
  4. 候補が1つに絞られるまで、この作業を繰り返す。

具体例

分子式 $\ce{C4H8O2}$ でカルボキシ基をもつ化合物の候補(酪酸、2-メチルプロパン酸)のうち、「炭素骨格に枝分かれがある」という追加情報があれば、2-メチルプロパン酸(イソ酪酸)に絞り込める。