化学基礎 / 酸化還元反応
酸化剤・還元剤
要点整理
酸化剤・還元剤とは
- 酸化剤:相手の物質を酸化する物質。相手を酸化する代わりに、自分自身は電子を受け取って還元される。
- 還元剤:相手の物質を還元する物質。相手を還元する代わりに、自分自身は電子を失って酸化される。
この「相手を酸化する物質は、自分自身は還元される」という関係は逆に感じられて混乱しやすいので、必ずセットで覚えましょう。代表的な酸化剤には $\ce{KMnO4}$(過マンガン酸カリウム)、$\ce{K2Cr2O7}$(二クロム酸カリウム)、$\ce{HNO3}$(硝酸)、$\ce{Cl2}$ などが、代表的な還元剤には金属の単体、$\ce{H2S}$、シュウ酸 $\ce{(COOH)2}$ などがあります。$\ce{H2O2}$(過酸化水素)や $\ce{SO2}$ のように、反応する相手によって酸化剤にも還元剤にもなりうる物質もあるので注意が必要です。
半反応式の作り方
酸化剤・還元剤が実際にどう変化するかを、電子を含めたイオン反応式として表したものを半反応式といいます。半反応式は、次の手順で機械的に組み立てることができます。
- 変化前後の化学式を書く
- O以外の原子の数を、両辺でそろえる
- 両辺のO原子の数を、$\ce{H2O}$ を加えてそろえる
- 両辺のH原子の数を、$\ce{H+}$ を加えてそろえる
- 両辺の電荷の合計を、$\ce{e-}$ を加えてそろえる
例えば、酸性条件下で過マンガン酸イオン $\ce{MnO4-}$ が酸化剤としてはたらくとき、マンガンは $\ce{Mn^2+}$ に変化します。この手順に従うと、
$\ce{MnO4- -> Mn^2+}$
からスタートし、Oが左辺に4個あるので $\ce{H2O}$ を4個右辺に加え、
$\ce{MnO4- -> Mn^2+ + 4H2O}$
次に右辺のHが8個になったので、$\ce{H+}$ を8個左辺に加えます。
$\ce{MnO4- + 8H+ -> Mn^2+ + 4H2O}$
最後に電荷をそろえます。左辺は $(-1)+8\times(+1)=+7$、右辺は $+2$ なので、左辺に電子を5個加えれば $+7-5=+2$ となり、両辺の電荷がそろいます。
$\ce{MnO4- + 8H+ + 5e- -> Mn^2+ + 4H2O}$
これが $\ce{MnO4-}$ の半反応式です。
半反応式を組み合わせて全体の反応式を作る
酸化剤の半反応式と還元剤の半反応式は、電子の授受でつながっています。酸化剤が受け取る電子の数と、還元剤が失う電子の数が等しくなるように、それぞれの半反応式を何倍かしてから足し合わせると、電子を含まない全体のイオン反応式が得られます。
例えば還元剤の鉄(Ⅱ)イオンの半反応式は、
$\ce{Fe^2+ -> Fe^3+ + e-}$
です。$\ce{MnO4-}$ の半反応式では電子が5個、$\ce{Fe^2+}$ の半反応式では電子が1個なので、電子の数の最小公倍数である5にそろえるために、$\ce{Fe^2+}$ の式を5倍してから足し合わせます。
$\ce{MnO4- + 8H+ + 5e-} \to \ce{Mn^2+ + 4H2O}$
$\ce{5Fe^2+} \to \ce{5Fe^3+ + 5e-}$
両辺を足すと、電子 $5e^-$ が両辺で打ち消し合い、次の全体のイオン反応式が得られます。
$\ce{MnO4- + 8H+ + 5Fe^2+ -> Mn^2+ + 4H2O + 5Fe^3+}$
例題
例題1(基本)
問題
塩素 $\ce{Cl2}$ が酸化剤としてはたらくときの半反応式、およびヨウ化物イオン $\ce{I-}$ が還元剤としてはたらくときの半反応式を、それぞれ書け。また、この2つを組み合わせて、全体のイオン反応式を書け。
解答・解説を見る
$\ce{Cl2}$ は電子を受け取って $\ce{Cl-}$ になります。原子の数をそろえると $\ce{Cl2 -> 2Cl-}$、電荷は左辺 $0$、右辺 $-2$ なので、左辺に電子を2個加えます。
$\ce{Cl2 + 2e- -> 2Cl-}$
$\ce{I-}$ は電子を失って $\ce{I2}$ になります。原子の数をそろえると $\ce{2I- -> I2}$、電荷は左辺 $-2$、右辺 $0$ なので、右辺に電子を2個加えます。
$\ce{2I- -> I2 + 2e-}$
どちらの式も電子の数が2個で一致しているので、そのまま足し合わせます。
$\ce{Cl2 + 2I- -> 2Cl- + I2}$
答え:$\ce{Cl2 + 2e- -> 2Cl-}$、$\ce{2I- -> I2 + 2e-}$、全体:$\ce{Cl2 + 2I- -> 2Cl- + I2}$
例題2(標準)
問題
過酸化水素 $\ce{H2O2}$ が酸化剤としてはたらくとき(酸性条件下で $\ce{H2O}$ に変化する)の半反応式を、次の手順に従って作れ。
解答・解説を見る
手順1:変化前後の化学式
$\ce{H2O2 -> H2O}$
手順2:O以外の原子の数をそろえる
すでにOを除く原子(H)は両辺の分子数に含まれているので、いったんこのまま進めます。
手順3:O原子の数をそろえる
左辺のOは2個、右辺は $\ce{H2O}$ 1個あたりO1個なので、右辺の $\ce{H2O}$ を2個にします。
$\ce{H2O2 -> 2H2O}$
手順4:H原子の数をそろえる
左辺のHは2個、右辺は $2\times2=4$ 個になったので、左辺に $\ce{H+}$ を2個加えます。
$\ce{H2O2 + 2H+ -> 2H2O}$
手順5:電荷をそろえる
左辺の電荷は $0+2\times(+1)=+2$、右辺は $0$ です。左辺に電子を2個加えれば $+2-2=0$ となり、そろいます。
$\ce{H2O2 + 2H+ + 2e- -> 2H2O}$
答え:$\ce{H2O2 + 2H+ + 2e- -> 2H2O}$
例題3(応用)
問題
過マンガン酸カリウム水溶液を、硫酸酸性下で硫酸鉄(Ⅱ)水溶液に加えると、$\ce{MnO4-}$ が $\ce{Mn^2+}$ に、$\ce{Fe^2+}$ が $\ce{Fe^3+}$ に変化する酸化還元反応が起こる(過マンガン酸カリウム滴定として知られる反応である)。
(1) $\ce{MnO4-}$(酸化剤)の半反応式と、$\ce{Fe^2+}$(還元剤)の半反応式を、それぞれ書け。
(2) (1)の2つの半反応式を組み合わせて、電子を含まない全体のイオン反応式を書け。
解答・解説を見る
(1)
$\ce{MnO4-}$ の半反応式は、要点整理で導いたように、
$\ce{MnO4- + 8H+ + 5e- -> Mn^2+ + 4H2O}$
$\ce{Fe^2+}$ は電子を1個失って $\ce{Fe^3+}$ になるだけなので、
$\ce{Fe^2+ -> Fe^3+ + e-}$
(2)
$\ce{MnO4-}$ の式は電子が5個、$\ce{Fe^2+}$ の式は電子が1個なので、最小公倍数である5にそろえるために、$\ce{Fe^2+}$ の式全体を5倍します。
$\ce{MnO4- + 8H+ + 5e- -> Mn^2+ + 4H2O}$
$\ce{5Fe^2+ -> 5Fe^3+ + 5e-}$
両辺どうしを足し合わせ、両辺に共通する $5e^-$ を消去すると、
$\ce{MnO4- + 8H+ + 5Fe^2+ -> Mn^2+ + 4H2O + 5Fe^3+}$
答え:(1) $\ce{MnO4- + 8H+ + 5e- -> Mn^2+ + 4H2O}$、$\ce{Fe^2+ -> Fe^3+ + e-}$ (2) $\ce{MnO4- + 8H+ + 5Fe^2+ -> Mn^2+ + 4H2O + 5Fe^3+}$
練習問題
問題
過酸化水素 $\ce{H2O2}$ が還元剤としてはたらくとき(酸性条件下で $\ce{O2}$ に変化する)の半反応式を書け。
答え
$\ce{H2O2 -> O2 + 2H+ + 2e-}$