化学基礎 / 物質の構成

同位体と原子量

要点整理

同位体とは

同じ元素の原子であっても、中性子の数だけが異なるものが天然に存在することがあります。原子番号(陽子の数)が同じで、質量数(陽子の数+中性子の数)が異なる原子どうしを、たがいに同位体と呼びます。

たとえば、水素には次の3種類の同位体が存在します。

名称 表記 陽子 中性子
軽水素(プロチウム) $\ce{^{1}_{1}H}$ 1 0
重水素(ジュウテリウム) $\ce{^{2}_{1}H}$ 1 1
三重水素(トリチウム) $\ce{^{3}_{1}H}$ 1 2

同位体どうしは、陽子の数(原子番号)が同じなので、電子配置もほぼ同じであり、化学的な性質(反応のしかた)はほとんど変わりません。異なるのは中性子の数、すなわち質量だけです。

同位体の中には、原子核が不安定なために、放射線を出しながら別の原子に変化していくものがあり、これを放射性同位体と呼びます。たとえば炭素の同位体である $\ce{^{14}C}$ は放射性同位体で、一定の速さで壊れていく性質を利用して、遺跡や化石の年代を推定する研究(放射性炭素年代測定)などに利用されています。

相対質量と原子量

原子1個の実際の質量は、$10^{-24}\ \mathrm{g}$ 程度ときわめて小さく、そのままの数値では扱いにくいため、化学では「相対質量」という考え方を使います。相対質量は、質量数12の炭素原子($\ce{^{12}C}$)1個の質量をちょうど12と決め、これを基準として、他の原子の質量を比で表したものです。相対質量の値は、その原子の質量数にほぼ近い値になります。

ところが、天然の元素の多くは複数の同位体が一定の割合(存在比)で混ざって存在しています。たとえば天然の塩素原子は、$\ce{^{35}Cl}$(相対質量 $34.97$)が約 $75.8\%$、$\ce{^{37}Cl}$(相対質量 $36.97$)が約 $24.2\%$ の割合で存在しています。

そこで、実際の化学計算で使う原子量は、同位体1つ1つの相対質量ではなく、天然に存在するすべての同位体について、相対質量に存在比(割合)を掛けて足し合わせた「加重平均」の値として定義されます。同位体が2種類ある元素の場合、存在比を百分率(%)で表すと、次の式で計算できます。

$\text{原子量} = \frac{(\text{相対質量}_1\times \text{存在比}_1) + (\text{相対質量}_2\times \text{存在比}_2)}{100}$

この式は、それぞれの同位体の相対質量を、その同位体が存在する割合の重みをつけて平均している、と考えるとイメージしやすくなります。

例題

例題1(基本)

問題

天然の塩素は、相対質量 $35.0$ の $\ce{^{35}Cl}$ が $75.0\%$、相対質量 $37.0$ の $\ce{^{37}Cl}$ が $25.0\%$ の割合で存在するものとして、塩素の原子量を求めよ。

解答・解説を見る

原子量は、各同位体の相対質量に存在比(百分率)を掛けて合計し、100で割ることで求められます。

$\text{原子量} = \frac{35.0\times75.0 + 37.0\times25.0}{100}$

分子を計算すると、

$35.0\times75.0 = 2625.0,\qquad 37.0\times25.0 = 925.0$

$2625.0+925.0 = 3550.0$

これを100で割ります。

$\frac{3550.0}{100} = 35.5$

答え:塩素の原子量は35.5

例題2(標準)

問題

天然の銅は、相対質量 $62.93$ の $\ce{^{63}Cu}$ と、相対質量 $64.93$ の $\ce{^{65}Cu}$ の2種類の同位体からなり、銅の原子量は $63.55$ であることが知られている。$\ce{^{63}Cu}$ の存在比を $x\,\%$ として、$x$ の値を求めよ。

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$\ce{^{63}Cu}$ の存在比を $x\,\%$ とすると、残りの $\ce{^{65}Cu}$ の存在比は $(100-x)\,\%$ と表せます。原子量の式に当てはめると、

$63.55 = \frac{62.93\times x + 64.93\times(100-x)}{100}$

両辺に100を掛けて、分母を払います。

$6355 = 62.93x + 64.93(100-x)$

右辺を展開します。

$6355 = 62.93x + 6493 - 64.93x$

$x$ の項をまとめると、

$6355 = 6493 - 2.00x$

$2.00x$ を左辺に、定数を右辺にまとめるように整理します。

$2.00x = 6493-6355 = 138$

両辺を $2.00$ で割ります。

$x = \frac{138}{2.00} = 69$

答え:$\ce{^{63}Cu}$ の存在比は69%(このとき $\ce{^{65}Cu}$ の存在比は31%)

例題3(応用)

問題

ホウ素には $\ce{^{10}B}$(相対質量 $10.01$)と $\ce{^{11}B}$(相対質量 $11.01$)の2種類の同位体が存在し、ホウ素の原子量は $10.81$ である。天然に存在するホウ素原子1000個の中に、$\ce{^{10}B}$ はおよそ何個含まれるか。整数で答えよ。

解答・解説を見る

まず、$\ce{^{10}B}$ の存在比を $x\,\%$ とし、$\ce{^{11}B}$ の存在比を $(100-x)\,\%$ とおいて、原子量の式を立てます。

$10.81 = \frac{10.01\times x + 11.01\times(100-x)}{100}$

両辺に100を掛けます。

$1081 = 10.01x + 11.01(100-x)$

右辺を展開します。

$1081 = 10.01x + 1101 - 11.01x$

$x$ の項をまとめます。

$1081 = 1101 - 1.00x$

整理すると、

$1.00x = 1101-1081 = 20$

$x = 20$

したがって、$\ce{^{10}B}$ の存在比はおよそ $20\%$ です。存在比は「原子の個数の割合」でもあるので、1000個のホウ素原子のうち $\ce{^{10}B}$ の個数は、

$1000\times\frac{20}{100} = 200$

答え:およそ200個

(原子量の計算に使う「存在比」は、質量の割合ではなく、そのまま原子の個数の割合として扱ってよいことに注意しましょう。)

練習問題

問題

窒素の同位体は、相対質量 $14.00$ の $\ce{^{14}N}$ が $99.6\%$、相対質量 $15.00$ の $\ce{^{15}N}$ が $0.4\%$ の割合で天然に存在する。窒素の原子量を、小数第2位まで求めよ。

答え

$\dfrac{14.00\times99.6+15.00\times0.4}{100}=\dfrac{1394.4+6.0}{100}=14.00$