化学 / 化学結合と結晶

共有結合の結晶

要点整理

共有結合の結晶とは

金属でもイオン結晶でもない固体の中には、原子どうしが共有結合だけで次々とつながり、結晶全体があたかも1つの巨大な分子のようになっているものがあります。これを共有結合の結晶と呼びます。共有結合の結晶は、結晶全体を1個ずつの共有結合がすき間なく網目状に取り囲んでいるため、一般に非常に硬く、融点がきわめて高いという共通の性質を持ちます。代表例として、炭素の同素体であるダイヤモンド黒鉛、そして二酸化ケイ素 $\ce{SiO2}$ があります。

ダイヤモンド

ダイヤモンドでは、1個の炭素原子が、周囲の4個の炭素原子と共有結合しています。この4本の結合は、炭素原子を中心とした正四面体の頂点方向を向いており、結晶全体にこの正四面体構造が三次元的にすき間なく連続して広がっています。

  • 配位数(1個の原子に結合している他原子の数):4
  • すべての結合が強い共有結合であるため、天然に存在する物質の中で最も硬い
  • 融点はきわめて高い(約3550℃)
  • 価電子がすべて共有結合に使われており、自由に動ける電子がないため、電気を通さない(絶縁体)

黒鉛(グラファイト)

黒鉛も同じ炭素の同素体ですが、ダイヤモンドとはまったく異なる構造をとります。黒鉛では、1個の炭素原子は、同一平面上にある3個の炭素原子とだけ共有結合し、正六角形が連続する網目状の平面(層)をつくります。

  • 配位数:3(同一平面内)
  • 各炭素原子は、共有結合に使われなかった価電子を1個ずつ残しており、この電子が層全体に広がって自由に動けるようになっている(非局在化した電子)。この電子のおかげで、黒鉛は電気をよく通す
  • 層と層の間は、共有結合ではなく弱い**分子間力(ファンデルワールス力)**で結びついているだけなので、力を加えると層どうしが簡単にすべって剥がれる。そのため軟らかく、鉛筆の芯や潤滑剤に利用される
  • 同じ炭素どうしの結晶でありながら、ダイヤモンドとは硬さも電気伝導性もまったく逆になる点が重要である

このように、同じ元素からできているのに構造がちがうために性質が異なる単体どうしを同素体と呼びます(ダイヤモンドと黒鉛は炭素の同素体)。

二酸化ケイ素(SiO2)

二酸化ケイ素は、ケイ素原子 $\ce{Si}$ と酸素原子 $\ce{O}$ からなる共有結合の結晶で、水晶や石英の主成分です。構造はダイヤモンドとよく似ていますが、炭素原子どうしが直接結合するダイヤモンドとちがい、$\ce{SiO2}$ では1個のSi原子が4個のO原子と正四面体状に共有結合し、その1個のO原子がさらに別のSi原子と結合する(酸素原子が2個のSi原子の橋渡しをする)ことで、Si-O-Siの結合が三次元的に連続する網目構造をつくっています。

  • 組成比が $\ce{Si}:\ce{O}=1:2$ になるのは、O原子1個が2個のSi原子に共有されるため(Si原子1個あたりO原子は $4\times\dfrac{1}{2}=2$ 個分に相当する)
  • ダイヤモンドと同様、共有結合の結晶なので非常に硬く、融点も高い(約1700℃)
  • 電気は通さない(絶縁体)

3つの結晶の比較

ダイヤモンド 黒鉛 二酸化ケイ素 $\ce{SiO2}$
構成原子 C C Si, O
配位数 4(立体網目) 3(平面網目) Si:4(立体網目)
硬さ 非常に硬い 軟らかい(層がすべる) 非常に硬い
電気伝導性 通さない よく通す 通さない
融点 きわめて高い きわめて高い 高い

例題

例題1(基本)

問題

次の①~④の文のうち、黒鉛の性質として正しいものをすべて選べ。

① 電気をよく通す ② ダイヤモンドと同じ炭素の同素体である ③ すべての炭素原子が正四面体状に4個の炭素と結合している ④ 層と層の間は弱い分子間力で結びついており、はがれやすい

解答・解説を見る

黒鉛は各炭素原子が余らせた価電子が層全体を自由に動けるため、電気をよく通します(①は正しい)。黒鉛はダイヤモンドと同じ炭素からできた同素体です(②は正しい)。しかし、黒鉛の炭素原子は同一平面内で3個の炭素原子とだけ結合しており、正四面体状に4個と結合しているのはダイヤモンドの特徴です(③は誤り)。黒鉛の層と層の間は共有結合ではなく弱い分子間力で結びついているため、簡単にはがれます(④は正しい)。

答え:①、②、④

例題2(標準)

問題

二酸化ケイ素 $\ce{SiO2}$ の結晶構造について、次の問いに答えよ。

(1) この結晶中で、1個のSi原子には何個のO原子が共有結合しているか。 (2) 1個のO原子は何個のSi原子と共有結合しているか。 (3) (1)、(2)の結合のしかたから、組成式が $\ce{SiO2}$ になる(O原子の数がSi原子の2倍になる)理由を説明せよ。

解答・解説を見る

(1)、(2)

$\ce{SiO2}$ の結晶では、1個のSi原子が正四面体の頂点方向にある4個のO原子と共有結合しています。一方、1個のO原子は、2個のSi原子の間の橋渡しをする形で結合しています。

(3)

Si原子1個には4個のO原子が結合していますが、それぞれのO原子は2個のSi原子に共有されているため、Si原子1個あたりに割り当てられるO原子の数は、

$4\times\frac{1}{2}=2\ \text{個}$

となります。したがって、Si原子1個に対してO原子が2個の割合で結晶がつくられ、組成式は $\ce{SiO2}$ になります。

答え:(1) 4個 (2) 2個 (3) O原子1個が2個のSi原子に共有されているため、Si原子1個あたりのO原子の数は $4\times\frac{1}{2}=2$ 個となり、組成比がSi:O=1:2になるから。

例題3(応用)

問題

ダイヤモンドと黒鉛は、どちらも炭素原子だけからできているにもかかわらず、ダイヤモンドは電気を通さない絶縁体であるのに対し、黒鉛は電気をよく通す。この違いが生じる理由を、それぞれの結晶構造における価電子の使われ方に注目して説明せよ。

解答・解説を見る

炭素原子は価電子を4個持っています。

ダイヤモンドの場合

ダイヤモンドでは、1個の炭素原子が周囲の4個の炭素原子と共有結合しています。炭素原子の4個の価電子は、すべてこの4本の共有結合に使われてしまい、結晶中を自由に動き回れる電子(自由電子)が存在しません。そのため電気を通しません。

黒鉛の場合

黒鉛では、1個の炭素原子は同一平面内で3個の炭素原子とだけ共有結合しています。4個の価電子のうち3個は、この3本の共有結合に使われますが、残りの1個の価電子は特定の原子間に固定されず、平面(層)全体に広がって非局在化し、自由に動けるようになります。この非局在化した電子が電流を流す役割を果たすため、黒鉛は電気をよく通します。

結論

同じ炭素原子からなる結晶でも、共有結合に使われる価電子の数(ダイヤモンドは4個すべて、黒鉛は3個)がちがうために、余った価電子が自由に動けるかどうかが変わり、電気伝導性という正反対の性質が生まれます。

答え:ダイヤモンドは4個の価電子すべてが共有結合に使われ自由電子が存在しないため絶縁体になるが、黒鉛は3個の価電子だけが共有結合に使われ、残り1個が層全体を自由に動けるため電気をよく通す。

練習問題

問題

共有結合の結晶に共通する一般的な性質を2つ挙げよ。

答え

非常に硬い(硬度が高い)こと、融点が非常に高いこと(いずれか2つ、または「共有結合が三次元的な網目状に連続しているため壊れにくい」という趣旨も可)