化学 / 溶液

コロイド

要点整理

コロイド粒子とその性質

直径がおよそ $1\ \mathrm{nm}\sim100\ \mathrm{nm}$ 程度の粒子をコロイド粒子といいます。これは、ふつうのイオンや小さい分子(真の溶液)よりは大きく、目に見える沈殿(懸濁液)よりは小さい、中間的なサイズの粒子です。コロイド粒子が液体中に分散している状態をコロイド溶液、その中でも流動性を持つものを特にゾルと呼びます。

チンダル現象:コロイド溶液に横から強い光を当てると、光の通路が明るい筋となって見えることがあります。これは、コロイド粒子が可視光の波長に近い大きさを持つため、光を散乱させるからです。真の溶液(イオンや小さい分子だけが溶けている溶液)では、粒子が小さすぎてこの散乱がほとんど起こらないため、光の通路は見えません。

ブラウン運動:限外顕微鏡でコロイド溶液を観察すると、コロイド粒子が不規則に細かく震えるように動いているのが見えます。これは、周囲の溶媒分子が熱運動によってコロイド粒子に不規則にぶつかるために起こる運動で、ブラウン運動と呼ばれます。

透析:コロイド溶液の中に混ざっている小さいイオンや分子(不純物)を、半透膜を使って取り除く操作を透析といいます。コロイド粒子は半透膜を通れませんが、小さいイオンや分子は半透膜を通り抜けて外側の液体に出ていくため、コロイド粒子だけを精製することができます。

電気泳動:多くのコロイド粒子は、表面にイオンを吸着するなどして電荷を帯びています。コロイド溶液に電極を入れて電圧をかけると、コロイド粒子は自分の電荷と反対符号の電極に向かって移動します。この現象を電気泳動といい、コロイド粒子が正・負どちらの電荷を帯びているかを調べるのに利用されます。

疎水コロイドと親水コロイド

コロイドは、水との親和性のちがいによって、大きく2種類に分けられます。

疎水コロイド($\ce{Fe(OH)3}$、粘土、金属コロイドなど)は水との親和力が小さく、おもに粒子表面の電荷どうしの反発によって、粒子が集まって沈殿するのを防いでいます。そのため、少量の電解質を加えて表面電荷を中和すると、反発力を失った粒子どうしが集まって沈殿します。これを凝析といいます。

親水コロイド(タンパク質、デンプン、ゼラチンなど)は $\ce{-OH}$ や $\ce{-COOH}$ などの親水性の基を多く持ち、粒子の周囲に多数の水分子が水和することで分散状態を保っています。この水和層を壊すには、疎水コロイドの凝析よりもずっと多量の電解質を加えて、水分子を奪い合う必要があります。多量の電解質によって親水コロイドを沈殿させる操作を塩析といいます(セッケンの製造での塩析が代表例です)。

凝析では、加える電解質イオンのうち、コロイド粒子の電荷と反対符号のイオンの価数が大きいほど、少量で沈殿させる効果が大きくなることが知られています(価数の大きいイオンほど、より効率よく表面電荷を中和できるため)。

保護コロイド:疎水コロイドに親水コロイドを加えておくと、親水コロイドの粒子が疎水コロイドの粒子を取り囲み、水和層でおおうことで、少量の電解質を加えても凝析しにくくなります。このようなはたらきをする親水コロイドを保護コロイドと呼びます。墨汁は、疎水コロイドである炭素の微粒子を、にかわ(親水コロイド、保護コロイド)で保護することで、安定に分散させています。

例題

例題1(基本)

問題

次の(a)~(c)の現象は、それぞれ何と呼ばれるか答えよ。

(a) コロイド溶液に光を当てると、光の通路が明るく光って見えた。

(b) コロイド溶液を限外顕微鏡で観察すると、粒子が不規則に細かく動いていた。

(c) コロイド溶液に電極を入れて電圧をかけると、コロイド粒子が一方の電極に向かって移動した。

解答・解説を見る

(a) コロイド粒子による光の散乱によって光の通路が見える現象なので、チンダル現象です。

(b) 溶媒分子の衝突によってコロイド粒子が不規則に動く現象なので、ブラウン運動です。

(c) コロイド粒子が電荷を帯びていて、電場によって移動する現象なので、電気泳動です。

答え:(a) チンダル現象 (b) ブラウン運動 (c) 電気泳動

例題2(標準)

問題

塩化鉄(III)の希薄水溶液を沸騰水に加えると、加水分解が起こり、水酸化鉄(III)の赤褐色の疎水コロイド($\ce{Fe(OH)3}$ ゾル)が生じる。

(1) このコロイド溶液に直流電圧をかけると、コロイド粒子は陰極側に移動した。このコロイド粒子は正・負どちらの電荷を帯びているか。

(2) このコロイド溶液に、少量の $\ce{NaCl}$ 水溶液、$\ce{Na2SO4}$ 水溶液、$\ce{Na3PO4}$ 水溶液をそれぞれ加えたとき、最も少ない量で凝析を起こすと考えられるのはどれか。理由とともに答えよ。

解答・解説を見る

(1) 陰極(負極)は正の電荷を引き寄せる電極ではなく、正の電荷を帯びた粒子が引き寄せられる電極です(反対符号どうしが引き合う)。コロイド粒子が陰極側に移動したので、このコロイド粒子はの電荷を帯びています。

答え(1):正の電荷を帯びている

(2) 凝析を起こすためには、コロイド粒子の電荷(正)と反対符号のイオン、つまり陰イオンがはたらきます。陰イオンの価数が大きいほど、少量で表面電荷を中和できるため、凝析させる効果が大きくなります。

$\ce{NaCl}$ の陰イオンは $\ce{Cl-}$(1価)、$\ce{Na2SO4}$ の陰イオンは $\ce{SO4^2-}$(2価)、$\ce{Na3PO4}$ の陰イオンは $\ce{PO4^3-}$(3価)です。価数が最も大きいのは $\ce{PO4^3-}$ なので、最も少ない量で凝析を起こすのは $\ce{Na3PO4}$ 水溶液です。

答え(2):$\ce{Na3PO4}$ 水溶液(陰イオンの価数が最も大きく、少量で正電荷を中和できるため)

例題3(応用)

問題

(1) 墨汁は、炭素の微粒子(疎水コロイド)を含む黒色の液体だが、にかわ(親水コロイド)を加えて作られているため、少量の電解質を加えても容易には凝析しない。このしくみを、「保護コロイド」という語を用いて説明せよ。

(2) セッケン水溶液(セッケン分子が会合した親水性のコロイド)に多量の食塩を加えると、セッケン分がコロイド状態を保てなくなり分離する。この現象を何と呼ぶか、また、疎水コロイドの凝析と比べて必要な電解質の量にどのような違いがあるか説明せよ。

解答・解説を見る

(1) にかわは親水性の基を多く持つ親水コロイドで、疎水性である炭素の微粒子の周りを取り囲むように吸着し、粒子の表面を水和層でおおいます。これにより、炭素の微粒子どうしが直接近づいて集まる(凝析する)ことができなくなり、少量の電解質を加えても分散状態が保たれます。このように、疎水コロイドを保護して凝析を防ぐはたらきをする親水コロイドを保護コロイドといいます。

答え(1):にかわ(保護コロイド)が炭素の微粒子(疎水コロイド)の表面を取り囲み、水和層でおおうことで、電解質による凝析を防いでいるから。

(2) この現象は塩析です。セッケン水溶液は親水コロイドであり、粒子の周りの水分子との水和によって分散状態を保っています。塩析を起こすには、この水和層を壊すだけの多量のイオンが必要になるため、疎水コロイドを沈殿させる凝析に比べて、はるかに多量の電解質を加える必要があります。

答え(2):塩析。親水コロイドを沈殿させる塩析には、疎水コロイドを沈殿させる凝析よりもずっと多量の電解質が必要である。

練習問題

問題

疎水コロイドと親水コロイドのうち、少量の電解質を加えただけで沈殿するのはどちらか。また、その沈殿現象を何と呼ぶか。

答え

疎水コロイド。この現象を凝析と呼ぶ。