化学基礎 / 物質の構成
純物質と混合物、単体と化合物
要点整理
純物質と混合物
身のまわりの物質は、大きく純物質と混合物の2つに分けることができます。
純物質は、1種類の物質だけからできていて、決まった化学式1つで表すことができる物質です。純物質には、融点(固体が液体になる温度)や沸点(液体が気体になる温度)が、その物質ごとに決まった一定の値になるという特徴があります。たとえば、水($\ce{H2O}$)は $1.013\times10^5\ \mathrm{Pa}$(1気圧)のもとでは、常に $0\ \mathrm{^\circ C}$ で凍り、$100\ \mathrm{^\circ C}$ で沸騰します。
混合物は、2種類以上の純物質が、たがいに化学変化を起こすことなく混ざり合ったものです。空気(窒素・酸素・アルゴンなどの混合物)、海水(水・塩化ナトリウムなどの混合物)、食塩水、石油などが例です。混合物では、混ざっている割合によって融点や沸点が変わってしまうため、「決まった融点・沸点」を持ちません。たとえば食塩水は、濃度によって凍り始める温度が変わります。
見分け方のコツ:「1種類の化学式で書けるか」を考えましょう。1つの化学式で書ければ純物質、複数の物質が混ざっていて1つの化学式で書けなければ混合物です。
単体と化合物
純物質は、さらに単体と化合物に分けられます。
- 単体:1種類の元素だけからできている純物質。例:酸素 $\ce{O2}$、鉄 $\ce{Fe}$、ナトリウム $\ce{Na}$、ダイヤモンド(炭素 $\ce{C}$)
- 化合物:2種類以上の元素からできている純物質。例:水 $\ce{H2O}$、塩化ナトリウム $\ce{NaCl}$、二酸化炭素 $\ce{CO2}$
純物質・混合物・単体・化合物の関係をまとめると、次のようになります。
| 分類 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 純物質 → 単体 | 1種類の元素のみ | $\ce{O2}$、$\ce{Fe}$、$\ce{Na}$、$\ce{S}$ |
| 純物質 → 化合物 | 2種類以上の元素 | $\ce{H2O}$、$\ce{NaCl}$、$\ce{CO2}$ |
| 混合物 | 純物質が複数混ざったもの | 空気、海水、食塩水、石油 |
元素と単体のちがい
日常では混同しやすいのですが、「元素」と「単体」は意味が異なります。元素は「原子の種類」を表す抽象的な概念で、周期表に載っている「水素」「酸素」「炭素」などがこれにあたります。一方、単体は、その元素からできている具体的な物質そのものを指します。
たとえば「人体には酸素が含まれる」というときの「酸素」は、体内の水や有機物に含まれる酸素原子(元素としての酸素)を指しており、気体の $\ce{O2}$(単体としての酸素)そのものが体の中に存在しているわけではありません。文脈によって、元素の意味で使われているのか、単体の意味で使われているのかを見分ける必要があります。
同素体
同じ元素からできた単体でも、原子の配列や結びつき方が異なるために、性質がまったく異なるものが存在することがあります。このような、同じ元素からなる単体どうしの関係を同素体と呼びます。
代表的な同素体は、頭文字をとって**「SCOP(スコップ)」**と覚えられます。
| 元素 | 同素体の例 |
|---|---|
| S(硫黄) | 斜方硫黄、単斜硫黄、ゴム状硫黄 |
| C(炭素) | ダイヤモンド、黒鉛(グラファイト)、フラーレン |
| O(酸素) | 酸素 $\ce{O2}$、オゾン $\ce{O3}$ |
| P(リン) | 黄リン、赤リン |
同素体どうしは、元素の種類(構成する原子)は同じですが、原子の並び方が異なるために、色・硬さ・電気伝導性などの性質が大きく異なります。たとえば炭素の同素体であるダイヤモンドは無色透明できわめて硬く電気を通しませんが、同じ炭素からなる黒鉛は黒色で軟らかく、電気をよく通します。
例題
例題1(基本)
問題
次の物質を、(a)単体、(b)化合物、(c)混合物、に分類せよ。
$\ce{N2}$、食塩水、$\ce{NH3}$、ダイヤモンド、空気、$\ce{CaCO3}$
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それぞれの物質を、「何種類の物質からできているか」「純物質なら何種類の元素からできているか」で判定します。
- $\ce{N2}$:窒素原子のみからなる純物質 → 単体
- 食塩水:水と塩化ナトリウムが混ざったもの → 混合物
- $\ce{NH3}$(アンモニア):窒素と水素の2種類の元素からなる純物質 → 化合物
- ダイヤモンド:炭素原子のみからなる純物質 → 単体
- 空気:窒素・酸素・アルゴンなどが混ざったもの → 混合物
- $\ce{CaCO3}$(炭酸カルシウム):カルシウム・炭素・酸素の3種類の元素からなる純物質 → 化合物
答え:単体は $\ce{N2}$、ダイヤモンド。化合物は $\ce{NH3}$、$\ce{CaCO3}$。混合物は食塩水、空気。
例題2(標準)
問題
次の文のうち、下線部の「酸素」が元素の意味で使われているものと、単体の意味で使われているものを、それぞれすべて選べ。
(ア) 水は水素と__酸素__からできている。 (イ) 深海探査には、圧縮した__酸素__のボンベを積んでいく。 (ウ) 植物の葉緑体では、光合成によって__酸素__が発生する。 (エ) 岩石にはケイ素や__酸素__が多く含まれる。
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「元素」の意味で使われている場合は、その語が「原子の種類・成分」を表しており、実際に気体の $\ce{O2}$ を指しているわけではありません。「単体」の意味で使われている場合は、実際に $\ce{O2}$ という物質そのものを指しています。
- (ア)「水は水素と酸素からできている」は、水分子 $\ce{H2O}$ を構成する成分としての酸素を述べており、気体の $\ce{O2}$ そのものの話ではないので元素の意味。
- (イ)「圧縮した酸素のボンベ」は、実際に気体として存在する $\ce{O2}$ そのものを指しているので単体の意味。
- (ウ)「光合成によって酸素が発生する」は、実際に気体の $\ce{O2}$ が発生するので単体の意味。
- (エ)「岩石にケイ素や酸素が多く含まれる」は、岩石中の化合物(ケイ酸塩など)の構成成分としての酸素なので元素の意味。
答え:元素の意味は(ア)(エ)、単体の意味は(イ)(ウ)
例題3(応用)
問題
次の①〜④の現象・実験結果から、「同じ元素からなる単体が複数存在する(同素体の関係にある)」ことの根拠として最も適切なものを選び、その理由を説明せよ。また、この関係にある単体の組を、本文中の例からもう1組挙げよ。
① ダイヤモンドを完全に燃焼させると、二酸化炭素だけが発生した。 ② 黒鉛を完全に燃焼させても、二酸化炭素だけが発生した。 ③ ダイヤモンドは電気を通さないが、黒鉛は電気をよく通す。 ④ ダイヤモンドも黒鉛も、天然に産出する。
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同素体であることを示すには、「見た目や性質はちがうが、構成する元素は同じである」ことを示す必要があります。①と②の実験結果に注目すると、ダイヤモンドを燃やしても黒鉛を燃やしても、生成物は二酸化炭素 $\ce{CO2}$ だけです。これは、どちらの物質も炭素原子だけからできていることを示しています。
一方、③は両者の性質が異なることを示していますが、これだけでは「同じ元素からできている」ことまではわからず、④は同素体であることの根拠にはなりません。
したがって、①と②を根拠として、「ダイヤモンドと黒鉛はどちらも炭素原子だけからなる単体であり(①②)、しかし性質が大きく異なる(③)ので、同素体の関係にある」と説明できます。
同素体のもう1組の例としては、酸素の同素体である酸素 $\ce{O2}$ とオゾン $\ce{O3}$、または硫黄の同素体である斜方硫黄と単斜硫黄などが挙げられます。
答え:根拠は①②(燃焼生成物がどちらも $\ce{CO2}$ のみであることから、同じ炭素原子からなるとわかる)。もう1組の同素体の例:$\ce{O2}$ と $\ce{O3}$(または斜方硫黄と単斜硫黄)。
練習問題
問題
次の物質を、単体・化合物・混合物に分類せよ。
エタノール($\ce{C2H5OH}$)、ブロンズ(銅とスズの合金)、オゾン($\ce{O3}$)、塩酸(塩化水素の水溶液)
答え
単体:オゾン。化合物:エタノール。混合物:ブロンズ、塩酸。