化学 / 化学結合と結晶

イオン結合と結晶格子

要点整理

イオン結合とイオン結晶

陽イオンと陰イオンは、電荷が反対符号なので静電気的な引力(クーロン力)で引き合います。この引力による結合をイオン結合といいます。イオン結合でできた物質は、陽イオンと陰イオンが空間的に規則正しく交互に並んだイオン結晶という固体をつくります。

イオン結晶には、次のような共通した性質があります。

  • 融点・沸点が高い(イオン結合が強いため、ばらばらにするのに大きなエネルギーが必要)
  • 硬いが、力を加えると割れやすい(へき開性。イオンの配列がずれると同符号のイオン同士が向かい合い、反発して結晶が割れる)
  • 固体の状態では電気を通さないが、融解液(融解して液体にしたもの)や水溶液にすると電気を通す(イオンが自由に動けるようになるため)

NaCl型結晶格子の構造

塩化ナトリウム $\ce{NaCl}$ の結晶は、イオン結晶の中でも最も代表的な構造をとり、NaCl型結晶格子と呼ばれます。この構造は次のように理解できます。

  • $\ce{Na+}$ どうしは、互いに立方体の頂点と各面の中心に位置するように配列する(面心立方格子と同じ配列)
  • $\ce{Cl-}$ どうしも、同じように面心立方格子の配列をとる
  • この2つの面心立方格子を、単位格子の一辺の $\dfrac{1}{2}$ だけずらして重ね合わせたものが、NaCl型結晶格子である

結果として、単位格子は次のような形になります。

  • $\ce{Cl-}$:立方体の8個の頂点と、6個の面の中心に位置する
  • $\ce{Na+}$:立方体の12本の辺の中点と、立方体の中心に位置する

(どちらのイオンを頂点に置いて考えても、得られる構造は同じです。)

単位格子に含まれるイオンの数

単位格子の頂点・辺・面・内部にあるイオンは、隣り合う単位格子と共有されているため、1個の単位格子に「まるごと」属しているわけではありません。位置によって、次のような割合でカウントします。

位置 単位格子いくつで共有されるか 1個あたりのカウント
頂点(角) 8個 $\dfrac{1}{8}$
辺の中点 4個 $\dfrac{1}{4}$
面の中心 2個 $\dfrac{1}{2}$
内部(中心) 1個(共有されない) $1$

この数え方を使って、NaCl型結晶格子の単位格子に含まれる $\ce{Cl-}$ と $\ce{Na+}$ の数を数えてみましょう。

$\ce{Cl-}$ の数(頂点8個+面の中心6個)

$8\times\frac{1}{8} + 6\times\frac{1}{2} = 1+3 = 4$

$\ce{Na+}$ の数(辺の中点12個+中心1個)

$12\times\frac{1}{4} + 1\times 1 = 3+1 = 4$

つまり、1つの単位格子の中には $\ce{Na+}$ が4個、$\ce{Cl-}$ が4個含まれており、これは組成式 $\ce{NaCl}$ が4組分($Z=4$)含まれていることに対応します。電気的に中性であることとも矛盾しません。

配位数

NaCl型結晶格子では、1個の $\ce{Na+}$ に最も近い $\ce{Cl-}$ は、上下・前後・左右の6方向に1個ずつ、合計6個あります(正八面体状に取り囲む配置)。同様に、1個の $\ce{Cl-}$ に最も近い $\ce{Na+}$ も6個です。このように、NaCl型結晶の配位数は $\ce{Na+}$ 側も $\ce{Cl-}$ 側も6であり、「6:6配位」と表現します。

配位数は、陽イオンと陰イオンの半径の比によって変化します。イオン半径の比が近いほど配位数は大きくなる傾向があり、NaCl型(6:6配位)のほかにも、CsCl型(8:8配位、体心立方格子に似た配置)などの構造が知られています。

例題

例題1(基本)

問題

イオン結晶の性質として正しいものを、次の①~④からすべて選べ。

① 固体の状態でよく電気を通す ② 融解すると電気を通すようになる ③ 融点は一般に低い ④ 外力を加えると、特定の面に沿って割れやすい

解答・解説を見る

イオン結晶は、固体中ではイオンが結晶格子の決まった位置に固定されているため、電気を通しません(①は誤り)。融解したり水に溶かしたりすると、イオンが自由に動けるようになるため電気を通すようになります(②は正しい)。イオン結合は強い結合なので、融点は一般に高くなります(③は誤り)。力を加えて配列がわずかにずれると、同符号のイオンどうしが向かい合って反発するため、特定の面に沿って割れやすい性質(へき開性)を示します(④は正しい)。

答え:②、④

例題2(標準)

問題

NaCl型結晶格子について、次の問いに答えよ。

(1) 単位格子1個に含まれる $\ce{Na+}$ と $\ce{Cl-}$ の数をそれぞれ求めよ。ただし、$\ce{Cl-}$ は単位格子の頂点と各面の中心に、$\ce{Na+}$ は各辺の中点と単位格子の中心に位置するものとする。

(2) $\ce{Na+}$ の配位数を求めよ。

解答・解説を見る

(1)

頂点にあるイオンは8個の単位格子に共有されるので $\dfrac{1}{8}$ 個分、面の中心にあるイオンは2個の単位格子に共有されるので $\dfrac{1}{2}$ 個分、辺の中点にあるイオンは4個の単位格子に共有されるので $\dfrac{1}{4}$ 個分、単位格子の中心にあるイオンは他の単位格子と共有されないので1個分としてカウントします。

$\ce{Cl-}$ の数(頂点8個 + 面の中心6個):

$8\times\frac{1}{8}+6\times\frac{1}{2}=1+3=4\ \text{個}$

$\ce{Na+}$ の数(辺の中点12個 + 中心1個):

$12\times\frac{1}{4}+1=3+1=4\ \text{個}$

(2)

単位格子の中心にある $\ce{Na+}$ に注目すると、最も近い $\ce{Cl-}$ は、中心から見て上下・前後・左右の6方向にある面心の $\ce{Cl-}$ です。したがって配位数は6です。

答え:(1) $\ce{Na+}$:4個、$\ce{Cl-}$:4個 (2) 配位数:6

例題3(応用)

問題

イオン結晶A、B、Cの融点を測定したところ、$\ce{MgO}$ > $\ce{NaCl}$ > $\ce{NaF}$ のような大小関係にはならず、実際には $\ce{MgO}$(融点約2800℃)が $\ce{NaF}$(融点約993℃)や $\ce{NaCl}$(融点約801℃)よりも著しく高い融点を示す。この理由を、クーロン力の式 $F=k\dfrac{q_1q_2}{r^2}$($q_1,q_2$:電荷の大きさ、$r$:イオン間距離、$k$:比例定数)を踏まえて説明せよ。

解答・解説を見る

イオン結晶の融点の高さは、イオン結合の強さ(格子エネルギーの大きさ)によって決まり、イオン結合の強さはクーロン力の式 $F=k\dfrac{q_1q_2}{r^2}$ に従います。

電荷の影響

$\ce{NaF}$ や $\ce{NaCl}$ は $\ce{Na+}$(+1)と陰イオン(-1)からなる1価どうしのイオン結晶ですが、$\ce{MgO}$ は $\ce{Mg^2+}$(+2)と $\ce{O^2-}$(-2)からなる2価どうしのイオン結晶です。クーロン力は電荷の積 $q_1q_2$ に比例するため、電荷が2倍になる組み合わせでは、単純に考えても引力は大きくなります($(+2)\times(-2)=-4$ は $(+1)\times(-1)=-1$ の4倍の大きさ)。

イオン間距離の影響

また、クーロン力はイオン間距離 $r$ の2乗に反比例するため、イオン半径が小さく、イオン間距離が短いほど引力は強くなります。$\ce{F-}$ は $\ce{Cl-}$ よりイオン半径が小さいため、$\ce{NaF}$ は $\ce{NaCl}$ よりイオン間距離が短く、融点がやや高くなります。

結論

$\ce{MgO}$ は、イオンの電荷がどちらも2価で大きいうえに、$\ce{Mg^2+}$ と $\ce{O^2-}$ のイオン半径も比較的小さいため、クーロン力(イオン結合力)が著しく強くなり、他の1価どうしのイオン結晶よりもはるかに高い融点を示します。

答え:イオンの電荷の積が大きいほど、また、イオン間距離が短いほどクーロン力(イオン結合力)は強くなる。$\ce{MgO}$ は2価の $\ce{Mg^2+}$ と $\ce{O^2-}$ からなり電荷の積が1価どうしの結晶より大きいため、格子エネルギーが著しく大きくなり、融点が非常に高くなる。

練習問題

問題

イオン結晶において、単位格子の頂点、辺の中点、面の中心、内部(中心)に位置するイオンは、それぞれ1個あたり何個分としてカウントするか。4つの位置についてすべて答えよ。

答え

頂点:$\dfrac{1}{8}$ 個、辺の中点:$\dfrac{1}{4}$ 個、面の中心:$\dfrac{1}{2}$ 個、内部(中心):1個