無機化学 / 非金属元素

酸素・硫黄とその化合物

要点整理

酸素 O2 とオゾン O3

酸素の単体には、ふだん目にする酸素分子 $\mathrm{O_2}$ のほかに、$\mathrm{O_3}$(オゾン)という同素体が存在します。オゾンは淡青色で特有のにおいを持つ気体で、$\mathrm{O_2}$ よりもさらに強い酸化力を持ちます。

$\ce{3O2 -> 2O3}$

酸素中で放電したり、酸素に紫外線を当てたりすると生成し、成層圏のオゾン層は太陽からの有害な紫外線を吸収する役割を果たしています。オゾンの強い酸化力は、ヨウ化カリウムデンプン紙を用いた検出反応でも確認できます。オゾンがヨウ化物イオンを酸化してヨウ素の単体を生じ、これがデンプンと反応して青紫色を呈します。

$\ce{O3 + 2KI + H2O -> I2 + 2KOH + O2}$

酸素は実験室では過酸化水素水に酸化マンガン(IV)を触媒として加えることで得られます。

$\ce{2H2O2 ->[MnO2] 2H2O + O2 ^}$

このとき $\mathrm{MnO_2}$ はそれ自身は変化せず反応の前後で量が変わらない触媒としてはたらいており、反応式の係数には登場しない点に注意しましょう。

硫黄の同素体

硫黄にも複数の同素体が存在し、いずれも $\mathrm{S_8}$(環状分子、ゴム状硫黄のみ鎖状構造)を基本単位としています。

同素体 結晶形・構造 特徴
斜方硫黄 $\mathrm{S_8}$ 分子からなる結晶 常温で最も安定。黄色の塊状結晶
単斜硫黄 $\mathrm{S_8}$ 分子からなる結晶 針状の結晶。高温(約95.5℃以上)で安定
ゴム状硫黄 $\mathrm{S}$ 原子が鎖状に連なった構造 溶融した硫黄を急冷すると得られる、弾力のある無定形固体

二酸化硫黄 SO2 の製法と性質

二酸化硫黄は、銅に熱濃硫酸を作用させたり、亜硫酸塩に強い酸を加えたりすることで得られます。

$\ce{Cu + 2H2SO4 -> CuSO4 + SO2 ^ + 2H2O}$

$\ce{Na2SO3 + H2SO4 -> Na2SO4 + H2O + SO2 ^}$

2つ目の式は、弱酸の塩(亜硫酸ナトリウム)に強酸(硫酸)を加えることで、弱酸である亜硫酸が遊離し、不安定なため水と二酸化硫黄に分解するという「強酸が弱酸を追い出す」酸・塩基の基本パターンです。

二酸化硫黄は無色で刺激臭のある有毒な気体で、水に溶けて弱酸性の亜硫酸 $\mathrm{H_2SO_3}$ になります。また、漂白作用を持ちますが、これは酸化力によって色素を分解する塩素系漂白剤とは逆に、還元作用によって色素を無色化する仕組みです(還元漂白)。

$\mathrm{SO_2}$ 中の硫黄原子の酸化数は $+4$ で、硫黄がとりうる酸化数($-2$〜$+6$)の中間にあたります。このため二酸化硫黄は、相手によって還元剤にも酸化剤にもなるという珍しい性質を示します。

$\ce{SO2 + Br2 + 2H2O -> H2SO4 + 2HBr}$

(通常は還元剤としてはたらき、$\mathrm{S}$ は $+4 \to +6$ に酸化される)

$\ce{SO2 + 2H2S -> 3S + 2H2O}$

(硫化水素という、$\mathrm{SO_2}$ よりもさらに還元力の強い相手に対しては酸化剤としてはたらき、$\mathrm{S}$ は $+4 \to 0$ に還元される)

このように「その物質が酸化剤か還元剤か」は、相手が何かによって変わりうるということを、$\mathrm{SO_2}$ は好例として示しています。

硫酸の性質

希硫酸は電離度の大きい強酸で、イオン化傾向が水素より大きい金属を溶かして水素を発生させる、一般的な強酸としての性質を示します。

濃硫酸は希硫酸とは異なる、次のような特有の性質を持ちます。

  • 不揮発性:濃硫酸は蒸発しにくいため、加熱することで塩化ナトリウムなどの塩から揮発性の酸を追い出すことができます。$\ce{NaCl + H2SO4 -> NaHSO4 + HCl ^}$(加熱)
  • 吸湿性:水を強く吸収する性質があり、気体の乾燥剤として使われます(ただしアンモニアのような塩基性の気体を乾燥させることはできません)。
  • 脱水作用:有機化合物から水素と酸素を水の形で奪う強い脱水力があり、ショ糖に濃硫酸を加えると黒く炭化する実験はこの性質の例です。
  • 酸化力:熱濃硫酸は酸化力の強い酸として振る舞い、イオン化傾向が水素より小さい銅とも反応し、水素ではなく二酸化硫黄を発生します(前述の $\ce{Cu + 2H2SO4 -> CuSO4 + SO2 + 2H2O}$)。希硫酸にはこの酸化力はありません。

接触法による硫酸の工業的製法

硫酸は工業的に接触法と呼ばれる方法で大量生産されます。段階的に酸化数を上げていく3つの反応から成り立っています。

  1. 硫黄(または硫化鉄鉱)を燃焼させて二酸化硫黄をつくる。

$\ce{S + O2 -> SO2}$

  1. 酸化バナジウム(V) $\mathrm{V_2O_5}$ を触媒として、二酸化硫黄を空気中の酸素でさらに酸化し、三酸化硫黄にする。

$\ce{2SO2 + O2 ->[V2O5] 2SO3}$

  1. 三酸化硫黄を濃硫酸に吸収させて発煙硫酸とし、これを希硫酸で薄めて濃度を調整する(水に直接吸収させると激しく発熱してミスト状になり効率が悪いため)。

$\ce{SO3 + H2O -> H2SO4}$

この一連の流れの中で、硫黄の酸化数は単体の $0$ から、$\mathrm{SO_2}$ の $+4$、$\mathrm{SO_3}$・$\mathrm{H_2SO_4}$ の $+6$ へと、段階的に酸化されていく様子がわかります。

例題

例題1(基本)

問題

銅に熱濃硫酸を加えると気体が発生した。(1) 化学反応式を書け。(2) 発生した気体の名称を答え、この反応で銅と硫黄の酸化数がそれぞれどう変化したか述べよ。

解答・解説を見る

(1)

$\ce{Cu + 2H2SO4 -> CuSO4 + SO2 + 2H2O}$

(2)

発生した気体は二酸化硫黄です。銅の酸化数は $0 \to +2$ に増加(酸化)し、濃硫酸中の硫黄原子(の一部)の酸化数は $+6 \to +4$ に減少(還元)しています。希硫酸にはない、熱濃硫酸特有の酸化力によって銅が溶かされる反応です。

答え:(1) $\ce{Cu + 2H2SO4 -> CuSO4 + SO2 + 2H2O}$ (2) 二酸化硫黄。Cuは0→+2に酸化、Sは+6→+4に還元される。

例題2(標準)

問題

二酸化硫黄は、相手によって還元剤にも酸化剤にもなることが知られている。硫化水素と反応する場合、二酸化硫黄はどちらとしてはたらくか。反応式とともに、硫黄原子の酸化数の変化を示して説明せよ。

解答・解説を見る

$\ce{SO2 + 2H2S -> 3S + 2H2O}$

$\mathrm{SO_2}$ 中の硫黄原子の酸化数は $+4$ ですが、反応後は単体の硫黄(酸化数 $0$)になっており、酸化数が減少しています。つまりこの反応で $\mathrm{SO_2}$ は還元されており、酸化剤としてはたらいています。一方、$\mathrm{H_2S}$ 中の硫黄原子の酸化数は $-2$ から $0$ へ増加しており、酸化されています。硫化水素は $\mathrm{SO_2}$ よりもさらに還元力が強いため、通常は還元剤である $\mathrm{SO_2}$ がこの反応に限っては酸化剤として振る舞います。

答え:SO2は酸化剤としてはたらく。SO2中のSの酸化数は+4→0に減少(還元)し、H2S中のSの酸化数は-2→0に増加(酸化)する。

例題3(応用)

問題

接触法による硫酸の工業的製法について、3段階の反応式を書き、それぞれの反応で硫黄原子の酸化数がどのように変化するかをまとめよ。

解答・解説を見る

$\ce{S + O2 -> SO2}$

$\ce{2SO2 + O2 -> 2SO3}$

$\ce{SO3 + H2O -> H2SO4}$

硫黄原子の酸化数は、単体 $\mathrm{S}$ の $0$ から、$\mathrm{SO_2}$ で $+4$、$\mathrm{SO_3}$ および $\mathrm{H_2SO_4}$ で $+6$ へと、2段階の酸化反応を経て段階的に上昇していきます。最後の $\mathrm{SO_3}$ を水(濃硫酸)に溶かす反応そのものには酸化数の変化はありません。

答え:S(0) → SO2(+4) → SO3・H2SO4(+6)と、2回の酸化反応を経て段階的に酸化数が上昇する。最後の吸収反応自体は酸化還元ではない。

練習問題

問題

次の(1)〜(3)に答えよ。

(1) 濃硫酸の3つの特有の性質(不揮発性・吸湿性・脱水作用・酸化力から3つ)を挙げよ。

(2) 二酸化硫黄が漂白作用を示す仕組みは、塩素系漂白剤の漂白の仕組みと何が違うか、簡潔に述べよ。

(3) オゾンの検出に用いられるヨウ化カリウムデンプン紙が青紫色に変化する理由を答えよ。

答え

(1) 不揮発性、吸湿性、脱水作用、酸化力(のうち3つ)

(2) 二酸化硫黄は還元作用によって色素を無色化する(還元漂白)のに対し、塩素は酸化作用によって色素を分解する(酸化漂白)。

(3) オゾンの強い酸化力によってヨウ化物イオンが酸化されてヨウ素が生じ、これがデンプンと反応して青紫色を呈するため。