無機化学 / 典型金属元素
頻出解法パターン
パターン1: 金属の反応性をイオン化エネルギー・イオン化傾向から予測する
こんな問題で使う
複数の典型金属の反応性(水との反応の激しさ、酸への溶けやすさなど)を比較・予測する問題。
解法の手順
- 比較する金属が同族元素かどうかを確認する。
- 同族元素であれば、原子番号が大きいほど原子半径が大きくイオン化エネルギーが小さい、という周期的傾向を思い出す。
- イオン化エネルギーが小さい(電子を放出しやすい)金属ほど反応性が高いと判断する。
- 異なる族の金属を比較する場合は、化学基礎で学んだイオン化傾向の順列($\mathrm{K > Ca > Na > \cdots > Cu > Hg > Ag > Pt > Au}$ など)を参照する。
具体例
同じアルカリ金属のリチウムとカリウムでは、原子番号の大きいカリウムの方がイオン化エネルギーが小さく、水との反応がより激しい。
パターン2: 両性金属の4種類の反応式をセットで書けるようにする
こんな問題で使う
Al、Zn、Sn、Pbなどの両性金属や、その酸化物・水酸化物が酸・強塩基と反応する化学反応式を書く問題。
解法の手順
- 対象が金属単体か、酸化物か、水酸化物かを確認する。
- 酸(塩酸など)との反応では、対応する塩化物と水(または水素)ができる。
- 強塩基(NaOH水溶液)との反応では、テトラヒドロキシド錯イオンを含む錯塩(Na[Al(OH)4]やNa2[Zn(OH)4]など)ができる。
- 金属単体が反応する場合のみ水素が発生し、酸化物・水酸化物の反応では水素は発生しない(酸化数がすでに変化した状態から始まるため)ことを確認する。
具体例
アルミニウム単体は $\ce{2Al + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2}$ のように水素を発生するが、酸化アルミニウムは $\ce{Al2O3 + 6HCl -> 2AlCl3 + 3H2O}$ のように水を生じるだけで水素は発生しない。
パターン3: 化合物名から化学式・色・溶解性をセットで思い出す
こんな問題で使う
石灰石・生石灰・消石灰や、鉛の各種沈殿など、名前と化学式・色・性質を結びつけて答える問題。
解法の手順
- 問題文に出てくる化合物の名前(石灰石、消石灰、クロム酸鉛など)を確認する。
- その名前が指す化学式を正確に思い出す。
- その物質の色・状態・水への溶解性を、関連する反応(生成・分解の反応式)とあわせて思い出す。
- 問題が求めている答え(化学式・色・反応式のいずれか、または複数)に対応させて解答する。
具体例
「クロム酸鉛」と言われたら、化学式は $\mathrm{PbCrO_4}$、色は黄色の沈殿であり、鉛(II)イオンを含む水溶液にクロム酸イオンを加えることで生じる、という一連の情報をセットで思い出す。
パターン4: 酸化数の変化から酸化剤・還元剤を特定する
こんな問題で使う
テルミット反応やめっきの防食など、2種類の金属(または金属イオン)が関わる酸化還元反応で、どちらが酸化されどちらが還元されるかを問う問題。
解法の手順
- 反応前後で、注目する2つの金属それぞれの酸化数を求める。
- 酸化数が増加した方が酸化された(=還元剤としてはたらいた)、減少した方が還元された(=酸化剤としてはたらいた、あるいは酸化された側から見ればもう一方が還元剤)と判定する。
- どちらの金属がより酸化されやすい(イオン化傾向が大きい)かを確認し、反応の向きが妥当かを検証する。
- 反応式全体で電子の授受のつじつまが合っているか確認する。
具体例
テルミット反応 $\ce{2Al + Fe2O3 -> Al2O3 + 2Fe}$ では、Alの酸化数が $0 \to +3$(酸化)、Feの酸化数が $+3 \to 0$(還元)と変化しており、鉄よりイオン化傾向の大きいアルミニウムが還元剤としてはたらいている。
パターン5: めっきの防食効果を、めっき金属と地金のイオン化傾向の大小で判定する
こんな問題で使う
トタン・ブリキのように、金属をめっきして別の金属(主に鉄)を保護する仕組みについて、傷がついた場合の挙動を問う問題。
解法の手順
- めっきに使われている金属と、保護したい地金(通常は鉄)のイオン化傾向を比較する。
- めっき金属の方がイオン化傾向が大きい場合、傷がついてもめっき金属が先に酸化されるため、地金は保護され続ける(犠牲防食)と判断する。
- めっき金属の方がイオン化傾向が小さい場合、傷がつくと地金の方が先に酸化されてしまい、防食効果がなくなる(むしろ腐食が進みやすくなる)と判断する。
- 無傷の状態では、めっき金属のイオン化傾向に関わらず、単純に地金を空気や水から遮断することで保護されている点も確認する。
具体例
トタン(亜鉛めっき、亜鉛は鉄よりイオン化傾向が大きい)は傷がついても鉄を保護し続けるが、ブリキ(スズめっき、スズは鉄よりイオン化傾向が小さい)は傷がつくと鉄の腐食がかえって進みやすくなる。