有機化学 / 高分子化合物
合成高分子(ナイロン・ポリエチレン等)
要点整理
付加重合:モノマーの二重結合が次々とつながる
付加重合は、炭素間に二重結合($\ce{C=C}$)をもつ単量体(モノマー)が、この二重結合を使って次々と付加反応を繰り返し、鎖状の高分子(ポリマー)になる重合です。付加重合では、水のような小さな分子が副生しないのが特徴です。
最も代表的な例が、エチレン($\ce{CH2=CH2}$)からポリエチレンができる反応です。
$n\ce{CH2=CH2} \longrightarrow \ce{-(CH2-CH2)_n-}$
二重結合が開いて単結合になり、隣のモノマーと次々に結合していくことで、長い鎖状の分子ができます。
| モノマー | 構造式 | できるポリマー |
|---|---|---|
| エチレン | $\ce{CH2=CH2}$ | ポリエチレン |
| 塩化ビニル | $\ce{CH2=CHCl}$ | ポリ塩化ビニル |
| スチレン | $\ce{C6H5-CH=CH2}$ | ポリスチレン |
| プロピレン | $\ce{CH2=CH-CH3}$ | ポリプロピレン |
縮合重合:2つの官能基が水を放出しながらつながる
縮合重合は、分子内に2つの官能基をもつ単量体どうしが、縮合反応(多くの場合、水1分子がとれる反応)を繰り返しながら次々とつながり、高分子になる重合です。付加重合とは異なり、結合ができるたびに水などの小さな分子が副生する点が特徴です。
ナイロン66は、2つのアミノ基をもつヘキサメチレンジアミン($\ce{H2N-(CH2)6-NH2}$)と、2つのカルボキシ基をもつアジピン酸($\ce{HOOC-(CH2)4-COOH}$)が、アミド結合($\ce{-CO-NH-}$)を形成しながら縮合重合してできる合成繊維です。
$n\ce{H2N-(CH2)6-NH2} + n\ce{HOOC-(CH2)4-COOH} \longrightarrow \ce{-[NH-(CH2)6-NH-CO-(CH2)4-CO]_n-} + 2n\ce{H2O}$
「66」という名前は、ヘキサメチレンジアミンの炭素数(6)とアジピン酸の炭素数(6、両端のカルボキシ基の炭素も含めて数える)に由来しています。
**ポリエチレンテレフタラート(PET)**は、2つのヒドロキシ基をもつエチレングリコール($\ce{HO-CH2CH2-OH}$)と、2つのカルボキシ基をもつテレフタル酸($\ce{HOOC-C6H4-COOH}$)が、エステル結合を形成しながら縮合重合してできるポリエステルです。
$n\ce{HO-CH2CH2-OH} + n\ce{HOOC-C6H4-COOH} \longrightarrow \ce{-[O-CH2CH2-O-CO-C6H4-CO]_n-} + 2n\ce{H2O}$
PETは、合成繊維としてだけでなく、ペットボトルの材料としても広く使われています。
| ポリマー | モノマー(2種) | できる結合 | 用途 |
|---|---|---|---|
| ナイロン66 | ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸 | アミド結合 | 合成繊維 |
| PET(ポリエチレンテレフタラート) | エチレングリコール、テレフタル酸 | エステル結合 | 合成繊維、ペットボトル |
付加重合と縮合重合の見分け方
モノマーの構造式を見たとき、次のように考えれば、付加重合と縮合重合のどちらが起こるかを判断できます。
- モノマーが炭素間二重結合を1つもつ(それ以外の反応性の高い官能基をもたない)場合 → 付加重合(小さな分子は副生しない)
- モノマーが2つの官能基(2個のアミノ基とカルボキシ基、または2個のヒドロキシ基とカルボキシ基など)をもつ場合 → 縮合重合(水などの小さな分子が副生する)
考え方のポイント:モノマーの構造を丸暗記するのではなく、「二重結合が1つだけ開いてつながっていくのか」「2つの官能基が、それぞれ縮合反応を起こしてつながっていくのか」という、反応のしくみそのものに注目しましょう。縮合重合でできる高分子は、繰り返し単位の中に必ずアミド結合やエステル結合のような、水がとれてできる結合が含まれています。
例題
例題1(基本)
問題
塩化ビニル $\ce{CH2=CHCl}$ が付加重合してポリ塩化ビニルになる反応を、繰り返し単位を使って表せ。また、この重合が付加重合である理由を説明せよ。
解答・解説を見る
塩化ビニルの炭素間二重結合が次々と開いて単結合になり、鎖状につながっていく。
$n\ce{CH2=CHCl} \longrightarrow \ce{-(CH2-CHCl)_n-}$
この重合では、モノマーがもつ炭素間二重結合が反応点となって次々に付加反応を起こしているだけであり、水などの小さな分子が副生しない。このことから、縮合重合ではなく付加重合であるとわかる。
答え:$n\ce{CH2=CHCl} \to \ce{-(CH2-CHCl)-_n}$。炭素間二重結合が次々に付加反応を起こしてつながり、小さな分子が副生しないため付加重合である。
例題2(標準)
問題
ナイロン66の縮合重合の反応式を書き、この重合で1molのナイロン66の繰り返し単位ができるとき、何molの水が生成するかを答えよ。
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ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸が、アミド結合を形成しながら縮合重合する。
$n\ce{H2N-(CH2)6-NH2} + n\ce{HOOC-(CH2)4-COOH} \longrightarrow \ce{-[NH-(CH2)6-NH-CO-(CH2)4-CO]_n-} + 2n\ce{H2O}$
繰り返し単位1個をつくるには、ジアミンとジカルボン酸のそれぞれの分子の両端で、合計2か所の縮合(アミド結合の形成)が起こる。1か所の縮合につき水1分子が生成するので、繰り返し単位1個あたり水2分子が生成する。
答え:反応式は本文の通り。繰り返し単位1molあたり、水2molが生成する。
例題3(応用)
問題
次の(a)、(b)のモノマーの組み合わせについて、それぞれ付加重合と縮合重合のどちらが起こるかを判断し、理由を述べよ。 (a) スチレン $\ce{C6H5-CH=CH2}$ のみ (b) エチレングリコール $\ce{HO-CH2CH2-OH}$ とテレフタル酸 $\ce{HOOC-C6H4-COOH}$
解答・解説を見る
(a) スチレンは炭素間二重結合を1つもつだけの単一のモノマーである。この二重結合が次々に付加反応を起こしてポリスチレンになるので、付加重合である。
(b) エチレングリコールは2つのヒドロキシ基、テレフタル酸は2つのカルボキシ基をもつ。この2種類のモノマーが、エステル結合を形成する縮合反応を繰り返しながら交互につながっていくので、縮合重合である(生成物はポリエチレンテレフタラート、水が副生する)。
答え:(a) 付加重合(二重結合が次々に付加反応を起こす、小さな分子は副生しない)。(b) 縮合重合(2つの官能基どうしがエステル結合をつくる縮合を繰り返す、水が副生する)。
練習問題
問題
次のモノマーのうち、付加重合するものと縮合重合するものをそれぞれすべて選べ。 $\ce{CH2=CH2}$(エチレン)、$\ce{H2N-(CH2)6-NH2}$ と $\ce{HOOC-(CH2)4-COOH}$ の組、$\ce{CH2=CHCl}$(塩化ビニル)
答え
付加重合するもの:エチレン、塩化ビニル(どちらも炭素間二重結合を1つもつのみ)。 縮合重合するもの:ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の組(2つの官能基どうしがアミド結合を形成し、水が副生する)。