公式の証明・導出

モル濃度と質量パーセント濃度の変換式の導出

関連単元: 化学基礎 物質量と化学反応式

証明する内容

溶液の濃度の表し方には、質量パーセント濃度 $w$ %と、モル濃度 $c$ mol/Lの2種類があり、しばしば片方から片方へ変換する必要があります。溶液の密度を $d$ [g/mL]、溶質のモル質量を $M$ [g/mol] とするとき、次の変換式が成り立ちます。

$c = \frac{1000\,d\,w}{100\,M}\ \ [\text{mol/L}]$

この式は覚えるものではなく、「具体的な体積(たとえば1L)を決めて、そこに何gの溶質が溶けているかを追いかける」という手順を踏めば、そのつど導けます。ここでは、その手順を丁寧にたどり、最後に98%濃硫酸(密度1.84 g/mL)の例で数値を検算します。

証明

ステップ1:考える溶液の体積を1Lに固定する

モル濃度は「溶液1Lあたり何molの溶質が溶けているか」という量なので、まず溶液をちょうど $1\ \text{L} = 1000\ \text{mL}$ だけ取り出して考えます。この $1000$ mL の溶液に含まれる溶質の物質量が分かれば、それがそのままモル濃度 $c$ [mol/L] の数値になります。

ステップ2:溶液1Lの質量を密度から求める

密度 $d$ は「溶液1mLあたりの質量」[g/mL] を表す量なので、体積 $1000$ mL の溶液の質量は、

$(\text{溶液1000 mLの質量}) = d\ [\text{g/mL}]\times1000\ [\text{mL}] = 1000d\ [\text{g}]$

と表せます。

ステップ3:溶液の質量から溶質の質量を取り出す

質量パーセント濃度 $w$ [%] は、「溶液の質量のうち、溶質が占める割合」を百分率で表した量です。割合(分数)に直すには $100$ で割る必要があるので、溶質の質量は、

$(\text{溶質の質量}) = (\text{溶液の質量})\times\frac{w}{100}$

と表せます。ステップ2の結果 $(\text{溶液の質量})=1000d$ [g] をここに代入すると、

$(\text{溶質の質量}) = 1000d\times\frac{w}{100} = \frac{1000dw}{100}\ [\text{g}]$

となります。これが、溶液1L(=1000 mL)の中に溶けている溶質の質量です。

ステップ4:質量を物質量(mol)に変換する

物質量は、質量をモル質量で割ることで求められます($n=\dfrac{m}{M}$)。ステップ3で求めた溶質の質量をモル質量 $M$ [g/mol] で割ると、

$(\text{溶質の物質量}) = \frac{1}{M}\times\frac{1000dw}{100} = \frac{1000dw}{100M}\ [\text{mol}]$

が得られます。

ステップ5:モル濃度の式にまとめる

ステップ1で「溶液1Lに含まれる溶質の物質量」を考えることにしたので、ステップ4で求めた値が、そのままモル濃度 $c$ [mol/L] の数値になります。

$c = \frac{1000\,d\,w}{100\,M}\ \ [\text{mol/L}]$

これが目標の変換式です。単位の内訳を確認すると、$d$[g/mL]$\times1000$[mL/L]で「溶液1Lあたりの質量[g/L]」になり、そこに $w/100$(無次元の割合)をかけて「溶質の質量[g/L]」にし、最後に $M$[g/mol]で割ることで「溶質の物質量[mol/L]」、すなわちモル濃度が出てくる、という流れになっています。

ステップ6:98%濃硫酸で数値を検算する

市販の濃硫酸は、質量パーセント濃度 $w=98$ %、密度 $d=1.84$ g/mL です。硫酸 $\ce{H2SO4}$ のモル質量は、$H:1\times2$、$S:32\times1$、$O:16\times4$ より、

$M(\ce{H2SO4}) = 1\times2 + 32 + 16\times4 = 2+32+64 = 98\ \text{g/mol}$

これらをステップ5の式に代入します。

$c = \frac{1000\times1.84\times98}{100\times98}$

分子・分母に共通する $98$ を約分すると、

$c = \frac{1000\times1.84}{100} = \frac{1840}{100} = 18.4\ \text{mol/L}$

したがって、98%濃硫酸のモル濃度はおよそ $18.4$ mol/L となり、これは実際に市販の濃硫酸の濃度としてよく知られている値と一致します。

この証明のポイント

この証明のポイントは、公式 $c=\dfrac{1000dw}{100M}$ を丸暗記するのではなく、「溶液をちょうど1Lだけ取り出す」という具体的な操作をイメージし、密度→質量→溶質の質量→物質量、という順に単位を1つずつ変換していく手順そのものを身につけることです。この「基準量(ここでは1L)を決めて、そこから芋づる式に必要な量を求めていく」という考え方は、モル濃度と質量パーセント濃度の変換に限らず、濃度や密度が絡む多くの化学計算に共通して使えます。